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宮仕えと補佐見習

湯煙の地 温泉町伯爵領

硫黄の臭いが立ちこめ、流れる水は赤褐色やら白黄色に染まる土地。

実はこの町で一番金がかかるのが水代だったなんていう笑い話があるのだがそれはさて置き・・・・・・・・・・


この地に逗留していた補佐見習にとって待ちに待った日が来たのである。

彼が大事に思う傷跡娘がその顔の傷跡を消す施術が卿で最後だと言う事。

そして、彼女の本当の素顔が拝めるかと思うと興奮してくるのである。


彼は傷跡娘にほれているのは事実なのであるが決して傷跡に惚れていたのではない。

ここは重要である。


傷跡娘は最後の施術のため前々日から療養神殿につめていて、補佐見習には彼女の施術が成功しているのか判らない。

施術が始まってからも、途中の姿を見せたくないと目隠し布を応用した面覆いで顔を隠している。何でも顔を切り開いて皮を張り替えるとか再生させるとか・・・・・・・聞いているだけで気分が悪くなる話なのだが、それで本当に傷跡が消せるのかどうか彼にはわからない。

ただ彼が確実に理解できるのは彼女がどんな顔であっても愛しいと思うことだけである。本当に馬鹿な男である。



運命の時を迎えるに当たって、彼は心配していた。

本当に傷跡娘の顔が綺麗になっているのだろうか?

いや、傷跡があっても彼女は綺麗だと妄信しているのだが・・・・・・・

うろうろと心配している彼の様子は捉えられたばかりの獣のようであり、補佐見習を受け入れている温泉伯屋敷の面々は生暖かい目で見守っている。


そして、療養神殿が開く時間帯・・・・・・・・


彼は大分前から落ち着きなく待ちわびている。

流石にその様子を不憫に思ったのか泊り込みの手伝い女は彼を中に入れて内々の食堂に導いて落ち着けとばかりに薬湯を渡すのであった。



時間となり、愛しの傷跡娘と面会する。

彼女もまた不安に怯えている。

本当に傷跡が消えているのだろうか?傷跡の消えた顔が補佐見習に受け入れられるのだろうか?


だけど、不安がっている補佐見習の顔を見て・・・・・ 彼もまた私の事を案じているのだと安心する。


補佐見習も不安がっている傷跡娘を見てそっと抱き寄せて頭をなでてやるのである。

「大丈夫だ、お前だからこそ俺は幸せになって欲しいと思ってここの門を叩いたんだ!顔の形くらいでがたがた言うならば俺はそいつをぶちのめす!」

「・・・・・・・・・・・ばか。」


癒し手(独身)や施療士達(奥方の尻に敷かれている)のバカップル消えろやとか言う無言の訴えをよそに二人の思いはすれ違いながらも互いに向き合っている。


甘ったるい雰囲気を消すように咳払いをした癒し手に慌てて離れた二人はいよいよ大事な一瞬を迎えるのである。


施療士が傷跡娘の顔をあらわにする。

一月にも及ぶ施術の結果・・・・・・・・・・・つややかな肌を外気にさらす傷跡娘の顔がそこにあった。

再生したばかりなのかやや赤みががった色合いは陶器の様でもあり乳粥の様でもある。


顔の造形は傷跡がなければ餌食にされたと彼女の亡き親が案じていたように魅力的モノであった。


補佐見習は傷跡一つない彼女を見て口を開けて呆けている。

そんな姿を見て不安となった傷跡娘は

「私の顔、そんなに変?」

と泣きそうな顔をして問う。


その一言で慌てて

「そんなことはない、ただ見とれてしまっただけだ。」

等と普段なら言わないようなことを口走ってしまう・・・・・・・・・・・


彼女の顔にしわがより涙が流れる・・・・・・・・・

傷跡娘の涙を見て、彼女を傷つけたかと思った補佐見習は・・・・・・・・・

「えっと、だから・・・・・・・お前の顔は綺麗だよ・・・・・・・・・お前の親が案じて傷をつけるくらいに・・・・・・・・・今本当に理解した・・・・・・・・・見た目だけでしか判断しない男が寄ってきそうなのが疎ましいと思うくらいに・・・・・・・・・・・あれ、俺何言いたいんだろう? だから、お前は綺麗だ。傷跡があっても魅力的だったが・・・・・・・・せめて泣かないでくれよ・・・・・・・・・如何して良いかわからないから・・・・・・・・・・」


不器用な、あくまでも不器用な補佐見習の言葉に泣きながら笑い、

「・・・・・・・・・・・ありがと」

と呟く、そして補佐見習の顔を見てその瞳に写った自分の顔を見て

「こんな顔をしていたんだね。」

「馬鹿だな、鏡を見れば良いじゃないか・・・・・・・・」

「ううん、補佐見習の瞳に映る姿が一番大事。貴方の目に好ましく映るのが一番心配だったから・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・恥ずかしい事言うなよ・・・・・・・・」


照れて真っ赤な顔をする補佐見習。

涙の残る顔で笑みを浮かべる傷跡娘。







そんな二人の姿を見て療養神殿の者は思った。

むずがゆくなるくらい甘ったるい!

窓を開けてこの空気入れ替えろと・・・・・・・・・・・・・・

なんか前書きが甘ったるいのだが・・・・・・・・・・

「御主人様どうかしましたか?」

「いや、なんでもない。」




「そう言えばだんな、補佐見習達は何時帰ってくるかな?」

「時期的にはそろそろだと思うが・・・・・・・・・折角二人きりなんだからゆっくりさせてやれ。」

「二人がどこまで進んでいるのかが気になりますわね。」

「補佐見習のおばちゃんが折檻するくらいの事は出来ていないだろ。補佐見習だし・・・・・・・・・」

「そうなったらそうなったで祝福してやるさ。」

「しかし、傷跡娘がどんな顔して帰ってくるか楽しみですわ。」

「これから補佐見習は大変だ。悪い虫がたかってくるからな。」

「確かに・・・・・・・・・・」



そんな私達主従に手紙が届く・・・・・・・・

『そろそろ戻る。仕事の用意はいらない。 補佐見習』


「なんか向こうでも仕事漬けだったのが偲ばれる文面ですわね。」

「哀れな・・・・・・・・・・」

「どう考えても自分で首突っ込んでいるんじゃないかとおいらは思うんだ。」

「違いない・・・・・・・・・・」




「おーい、王室顧問仕事手伝ってくれ!」

遠くから官僚の声が聞こえる。私の仕事ではないだろうに・・・・・・・・・

「貴様の教え子達が作った仕事だろう!責任とって片付けろ!」

凄い言いがかりだな・・・・・・・・・・


補佐見習のことを伝えたいし付き合うとするか。

「そうやって付き合うから仕事してもらえると思われるんじゃ・・・・・・・」

「そうなんだがな、孤児達を少し抑えないといけないから出向くしかないよ・・・・・・・・・」


しぶしぶと重い腰を上げる私であった。

重い腰といっても溜まっているから重たいわけではないぞ。昨日は花街に言ってきたし・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・・・御主人様。」


孤児姉はどうも私がそのようなことをするのが不満らしい。

恋人でもなのに悋気とは・・・・・・・

仕方ない奴だ。私はどうしても酒と女が欠かせない男なのにそれが判らないと見える。


「だんな、行くならば匂わせないでいけばよいのに・・・・・・・・」

「そういう孤児弟だって一昨日花街に向かって走っていたのは知っているぞ。」

「だ、だんなそれをなぜ!」


昨日花街で噂になっていたし・・・・・・・危うく兄弟になるところだったじゃないか・・・・・・・


「御主人様!孤児弟も・・・・・・・・・不潔です!」


「ねーちゃんがお冠なんだけど、だんな宥めてくれよ。」

「はははっ、男衆の些細な楽しみじゃないか。孤児姉、別に私とはそんな仲じゃないだろう。気にすることはないじゃないか・・・・・・・・」


「知りません!」



この後孤児姉の機嫌は一日中直らなかった。






「そりゃ、王室顧問が悪いわ。」

「好いてくれる娘なんて貴重なのにその前でおおっぴらに話すなんて配慮が足りないですわね。」

「賢者様だから仕方ないよ・・・・・・・」「気にしていたら付き合ってられないし・・・・・・」

「寧ろ押し倒す?」

「ちょっと、年頃の娘が言うことじゃないですわ。もっと自分を大事にしなさい!」

「えー、でも、そのくらいしないと賢者様手に入れられないし・・・・・・・・」


「所で何で私の居る所で私に聞こえるように会話するのですか?ご丁寧に茶会の用意までして・・・・・・・・・王妃様?」


「それは私だってたまには孤児姉や孤児娘達とお茶位したいわ。本当は色々着せ替えたいんだけど、そこまでしたら仕事の邪魔になるの判っているから自重しているのに・・・・・・・・・・」


「えっと、理屈に合わないのは置いといて、如何して私をつるし上げているんです?」

「だって、孤児姉がかわいそうじゃない。」「もう少し、孤児姉のことも考えてあげないと・・・・・」

「裸だって見たんでしょ。」

「それは事故だ!」


「おや、そんな事をしていたのですか王室顧問。孤児娘達その話をしてくださいな。」

「あのねあのね・・・・・・・・・・・」




どうも私には女難の相があるらしい。この手の話だと女性に勝てる男なんて者は居るんだろうか?

居たとしたらその相手の事をなんとも思っていない者なんだろうな。


その後、孤児姉の機嫌を取ったり、王妃を黙らせるので大変だったとだけ記しておこう。

勿論仕事になんてなりはしない、私の仕事ではないのだが・・・・・・・

多分王妃経由とかで私の母に話が伝わったりするんだろうし、面倒なことだ。

「御主人様。傷跡娘に顔から傷跡がなくなったらどう呼べば・・・・・・・・・・」

「ふむ、作者が登場人物の名前を決めてないからなぁ・・・・」


うむ、この地方は名前で呼ぶ風習がないのだよ。名を記されるのは死者のみで生者は仮名(かりな)と呼ばれるもので呼び合う。まぁ、あだ名とか特長とか役職で呼び合う風習だと思えばよかろう。(by説明口調な王国地方担当地方神)


はい、名前考えてなかったです。この設定は後付の思い付きです。実際に正式に設定するかどうか判りませんby作者


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