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宮仕えと農村孤児

おらは王都近郊の小さな村の出身だ。実際に村の名前も覚えているし孤児院に来たのも数年前だ。


父ちゃんも母ちゃんもその村の地主領主の元で小作人をしてた。

村全部が親戚みたいなもので地主様も良い人だった。

村中が豊かとは言えねえがそれなりに暮らしていた。


父ちゃんは金を貯めて何時か自分の土地を持つんだと言ってた。

家族皆もそれは良い事だと一生懸命働いていた。


汗だくになって働いて、夜に一杯の酒と家族の食卓。これがあるべき姿だと思ってた。そして、こんな生活が何時までも続いていくのだと。


そんなある時、村に流行病と洪水が起こった。

順番で言えば洪水があってその片づけをしているうちに弔いの済んでいない村の皆とか打ち上げられた魚やら獣が腐って疫痢が流行ったんだ。


小さいのから先に倒れて、村の人達もバタバタ・・・・・・ガックリ

おらは何故か丈夫だったのか罹っても軽く済んでいた。

村に駆けつけていた医者の話では稀に病気に強いものがいてその者は罹っても直ぐに治ってしまうのだと言ってた。

その医者も疫痢を恐れて直ぐに町に戻ったんだが。


地主さんも私財を投じて何とかしようとしていたんだが、上手くいかなくて村は廃村となり地主さんも町に出る事となった。


村の皆は散り散りになり、おらは孤児院に預けられることとなった。

地主さんはおらを孤児院に送るとき、申し訳ないと謝ってくれていた。

地主さんはどうするのかと聞いたら、爵位を返して町で商人をしている次男さんの所に身を寄せるのだという。本当はおらやら他の子供達も何とか出来たら良かったんだがと頭を掻いていたが、地主さんが半数くらいの子供の引き取り手を捜すだけで精一杯だったらしい・・・・・・・・・


その時おらは泣いていたんだと思う。地主さんも奥さんもおら達子供衆を抱きしめてごめんねごめんねと謝っていた。


孤児院の生活は・・・・・・・・・王室顧問様が手出しするまでは大変だった。

村から来た子供衆はおらの他にも何人かいたんだが、最初の一年で半分が病気やら何やらで死んで、次の年には栄養失調になったりして更に半分が死んで・・・・・

結局のこったんがおらと後二人ほどだった。


あの当時は本当に大変だった。お腹がすいているのが辛いんだが、それでも食べ物を得ようと野菜屑を植えて育てたり・・・・・・・・摘める野草を用意したり・・・・・・・・・

このときほど父ちゃんが仕込んでくれた技に感謝した。そして、思い出と技しかつながりがないのに悔しさを感じた。

院長先生も金策に走っていて、だんだん痩せていった。

それでも孤児院で耕してもおら達全部食わせるには狭いし・・・・・・・弱い子達からくたばっていく。悲しかった。悔しかった。何も出来ない事と誰も助けてくれない事を・・・・・・・


そうやって何年か過ごす、孤児弟の馬鹿が貴族様の財布を狙って捕まったと聞いたとき・・・・・・・・・血の気が引く思いがした。

貴族ってもんはおら達のことをゴミか何かと勘違いしているから皆殺しとかひどい事をするんじゃないかと覚悟を決めた。いや、覚悟を決めるしかなかった。

せめてチビ共はおらが盾となって逃がす時間くらいは・・・・・・・・・・・なんて柄にもない事を考えてしまったのは内緒だ。


王室顧問様、その時は法務官様と言うべきだろうか?

あのお方が来たとき。孤児姉さんも弟も綺麗な服を着て法務官様の後から付いてくる。太ったおばちゃんがおら達に菓子を沢山振舞ってくれる。


甘いなぁ・・・・美味しいなぁ・・・・・ 腹いっぱいだなぁ・・・・

甘い菓子なんて初めて食った。寝床で動けないでいる子にも食わせてやりてぇ、と一掴みとって動けないチビに食わせてやった。

美味しいね、幸せだねといって喜んでいた。


次の日、力尽きていたが・・・・・・・・・・・・


その日から飢えていたり病気で死んだ子供はいない・・・・・・・・・・人攫いにあってなぶり物にされた子はいたんだが・・・・・・・・・


その日からもおらは変わらずに孤児院を耕して、野菜を作る。

そんなことをしなくても飢える事はないんだよと院長先生は言うし、子供達も食べ物一杯あるのにと言ってくる。それでもおらは畑を作る。


確かに法務官様はいい人だ。

おら達一人ひとりに気をかけてくれる。そして読み書き計算も教えてくれる。

何時だったか公爵様の配下にいた作付頭のおじさんがおらに畑仕事を教えてくれた。そして、良かったら公爵様の小作として働かないかと誘ってくれた。おらの他にも色々あって孤児院で保護されている女性とか働き口を用意するからと親身になってくれた。公爵様の奥方と言うふくよかなおばちゃんがくれた野菜は本当に旨かった。おらが育てていたモノは雑草だったんか・・・・・・・・・

悔しい! 何時かアレよりうまい野菜を育ててやる。


そして、お金を貯めて生まれた村に父ちゃんや母ちゃんが眠る地に自分の畑を持って父ちゃん達の夢をかなえるんだ!

結果だけ言えば、杞憂だった。

多少の騒動や問題はあったが、子供達は元気に暴れまわっている。


「多少で済ますのか王室顧問?」

「財務官、国政が回って子供達は健やかに仕事をしている何か問題でも?」

「問題大有りだろう!財務官ではないが、帳簿の違いを洗いなおしてくれるのは良いのだが過去100年間の帳簿を全て洗いなおして貴族緒家の横領を金貨一万枚単位で見つけ出すとか、それに付随する領民に対する不当な扱いとか・・・・・・・・・・お陰で、宰相府は対応でてんてこ舞いだぞ。」

「宰相府付の事務官。実際それが狙いだったんだろう?」

「それはそうなんだが・・・・・・・・・・桁が多すぎて処理能力が足りない。」


見つけた帳簿のアラ・・・・・・・・約金貨一万二千枚。

犠牲になった臣民の保護・・・・・・近接数年分しか出来ないが・・・・・・・・国軍だの近衛だのがてんてこ舞いだ。

名誉回復の必要があるもの数百人・・・・・・・・これでも最少数での数値である。


貴族緒家は先代、先々代それ以前の問題点に泣きを見て、孤児達を害そうとするのだが・・・・・・・・・


よくよく考えたら、奴隷商人を単独で拘束する程度の暗黒神術だの戦闘能力持っていたっけ・・・・・・・・・・

しかも、孤児院に入り浸っている神々(ひまじん)共が加護与えまくっているから・・・・・・・・・


うん、返り討ち決定と言うか・・・・・・・・・・・・・子供だから加減知らないし・・・・・・・・・


大人しくごめんなさいした方が楽という結果に・・・・・・・・


はい、後処理とかで仕事量増加するのは子供達が有能ですから・・・・・・・・・・・


「王室顧問、子供達に自重という言葉は?」

「手加減する気はないのか?」

「だから、子供たちを送るの躊躇っていたんですよ。王命だの貴族緒家の要求だの自分で首を絞めているんだから私に何も出来ないですよ。しかも、子供達を害そうとするなんて当家の面子を潰す行為ですから私個人としても本気で対策取らせてもらいますよ。」

「って、言うか襲撃者が性的不能(インポテンツ)になったり、延々と王妹殿下の著作を聞かされるなんて人道的じゃないだろう。」

「いい見せしめですね。」


ふむ、子供たちに自重か・・・・・・・・・・

って、言うか官僚達が子供達の結果を面白がって追求した結果なんだが・・・・・・・・・

寧ろ官僚共一緒になって暴走するな!


「いやぁ、あの家は当家の隣の領土で境界線争いが・・・・・・・・・・」「以前土地無しと嫌味言われたから。」

「我が妻に懸想して鬱陶しかったから。」「あの体臭が気に食わない。」「俺の彼女を取った。」


等など・・・・・・・・・・・・・


お前等私怨だったんかい!

思わず神秘緋金属張扇(オリハリセン)でとつきまわしたが私は悪くない。うん、私憤で国政を混乱させた官僚共(ばか)に対する正当な制裁(しゅくせい)だ。


なんか敵ばかり増えている気が・・・・・・・・・・

「御主人様、この案件が終わったら子供達を引き上げて引き篭もりますか?」

「それも良いかもな・・・・・・・・・・・」

庭園で茶を喫しながらゆるりと時を過ごす。


そのうちに休憩時間を迎えたらしい子供達がわらわらと寄ってくる。

可愛い子達よ・・・・・・・・・

ドンだけ暴れたんだね?


「えー、帳簿のアラを倉庫一杯を皆で見つけただけだよ。」「あしたはもういちどかくにんするんだぁ」

「如何して貴族って計算できないの?」「一応過去10年分の物価表も作ってあります。」

「時々じゃれ付いてくる兵隊さんいたけどアレは遊んでいいんだよねぇ?」

「貴族様が泣いていたけど・・・・・・・・・・・・」「僕にはうちにおいでと御菓子くれた。」



・・・・・・・・・・・貴族緒家なんかごめん・・・・・・・・・・・


そんな中でも項垂れているのもいる。

灰髪兄妹どうした?

「姫大使様のお世話役を拝命してしまいまして・・・・・・・・・・・ああ、あの酔っ払いが・・・・・・・・・ここまで来るとは・・・・・・・・」

「奇才魔術資産の試作品で・・・・・・・・・・・肌色ばっかり、椎の実怖いマツタケ怖い・・・・・・・そして壊したのどうしよう・・・・・・・・・・」


なんか、この兄妹連れてくるの間違いだったかな・・・・・・・・・・・

って、言うか・・・・・・・・・・・壊した?


「ああ、だんな。奇才魔術師さんが作った眼鏡型視力付与魔具に怪光線機能をつけていたらしくって・・・・・・・・・・」

「灰髪少女、大丈夫だ。それは魔術師団で何とかさせるから・・・・・・・・・って椎の実とかは?」

「それは・・・・・・・・・・・・あの肌色型透視布(のぞきぬの)でモロニ・・・・・・・・・見てしまったらしく・・・・・・・・・・・」

「ああ、それは災難だったな・・・・・・・・・」


潰れている灰髪少女を撫でて慰めるのであった。

「王室顧問様私のほうは?」

「流石にお前を逃がしたら国交問題だ。一月は我慢しろ。」

「ううっ・・・・・・・・・・・・・」

「あとで、それとなく話し通しておくから。」

「お願いします・・・・・・・・・・」


しかし姫大使の世話役なんて何が会ったのだろう?

「御主人様、灰髪の少年は姫大使様の脱ぐところを外套でうまく隠して同席していた大使達や貴族の若い者から恨みを買ったそうで・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・うん、それは恨みを買うな。」

「御主人様!」

「むくれるな!男ならば綺麗な女性の裸を見たいと思うものだぞ。」

「・・・・・・・・・・・・むぅ!」


膨れている孤児姉を撫でて宥める・・・・・・・・・・・可愛い嫉妬心だ。

機嫌は治りそうにないな。


他の子供達は大丈夫かね?


口々に はーい だの だいじょうぶ だの もんだいない と答えが返ってくる。

頼もしい事だ。


何故か王宮で働いている。

おらは農園で働きたかったのに・・・・・・・・・・


王室顧問様が教えてくださった帳簿術・・・・・・・

それを使えば簡単だが単調で・・・・・・眠くなる。


小遣い稼ぎと思ってやればいいといっていたが働くからにはちゃんとしないと・・・・・・・・


なんか働いているうちに官僚さんたちに気に入られて専属でこないとか誘われているんだがおらは畑仕事がしたいと断る。


官僚さんたちは引き下がってくれたが貴族さんたちがしつこかった。

おらが断っているんだが、貴族さんたちは畑仕事より金になるとか君の力が必要だとか言ってくる。


挙句の果てに

「畑仕事なんてものは・・・・・・」


ぷちっ!


思わず殴りそうになってしまった。

おらの体は同年代の子供達に比べて大きく畑仕事で鍛えられているのか力も強い。


そんなおらの殴りを片手で止めたのがたまたま通りすがりの護衛官様だ。

「卿らは少し落ち着け。少年よ君の痛みはわからないがだからといって人を殴っていいもんではない。君が人を殴るということは孤児院の皆や王室顧問に累が及ぶ事もあるのだぞ。」

おらは現実を築かされて驚いた。


「両者共に頭を冷やしておけ。この場は某が預かる。」

とおらの首根っこを掴んで引きずっていく。


おらが仲裁の礼を言うと・・・・・・・

「君はこの場所に向いていないな。王室顧問に声をかけておこう。」

と言ってずりずりとおらを引きずっていく。

片手でおらを持っていくとはどんな膂力だ?


おら王室顧問様に怒られるんだろうな・・・・・・・・

ちょいと怖くなっている。仕方ない正直に言って怒られよう。

悪いようにはしてくれないだろう。

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