孤児院と軍部探訪
あらすじ 魔術師達は変人だった。
てくてくてく
我等主従は魔術師詰め所を後にする。
ところで何故魔術師殿とか付いてくるのかね?
「王室顧問様の後を付いていけば面白い事がありそうなんで。」
「弟妹分が苦労する部分を取り除きたいんで・・・・・・・・・・・」
「二方が動くならば私も出番がないので・・・・・・・・・・」
「で、賢者様。どこに向かうので?」
「次は軍部でも覗いてみるかね。」
「そう言えば王都では近衛兵しか見たことないのですが?」
「確かに・・・・・・・」
「それについては私から説明しましょうか。この王国は幾つかの軍管区に分かれて其々の地方軍が防備を受け持っているのですよ。この近辺は王都軍管区とでも言うのでしょうか、【王都】は近衛兵団軍管区と軍事上分類されているのですよ。他の軍管区はその地方の貴族の私兵団を中心に王都から派遣された軍監が纏め上げているんですが、王都の場合王家直属の近衛兵団が守備についているのです。数自体は少ないのですが、王都の城壁内だけを守備範囲としているので寧ろ人員は過剰といえるでしょう。実際、他の軍管区では村の青年団も兵役の一環として徴兵して訓練しているのですよ。ここ数十年国境付近での不法越境者と犯罪組織くらいしか見張る対象がないので問題がないといえばそれまでなのですが・・・・・・・・・寧ろ王国から他国に行くときが大変ですね。」
「それって、うちのだんなが他国に行こうとするときに問題になるようにかい?」
「それは違うと思う。王室顧問様の場合は単純に他国に対して脅威となる人物だからだろう。」
酷い言われようだ。そうしているうちに軍部の詰所につく。
王城の城壁全部が軍部の建物となるのだが、今回は軍部の管理棟に向かうのである。
「賢者様どうして城壁が軍部の建物なんですか?」
「孤児娘、それは城壁自体が元々王城につめる兵舎を壁代わりにしていたのが始まりだ。外側の壁を厚めにして、それを支えるようにと言うか囲んでいたんだな。どうしてかと言われれば、人族連合からも魔王国からも敵対しされていたから周りすべてが敵の国という時代があったからどの方角からでも対応できるように兵舎を分散させていたんだな。そのうちに外に王都の城壁が出来て地方軍が生まれて近衛の役割が王都内の治安維持くらいになっていったんだ。とはいっても王国の最後の守護壁だったりするから、色々入隊には基準があるのだがね。」
私の説明に子供達は判った様な判っていないような・・・・・・・・・・顔をしている。
まぁ、城壁が近衛の管轄で近衛入隊には資格がいるとだけわかればよかろう。
どうせこの子達に近衛に入る気がないのだろうから・・・・・・・・・・・・
城壁傍で訓練をする近衛達、どっかで見た女性がいるのだが・・・・・・・・・・
「その程度では私に剣は届きませんわよ。」
「この腐れアマ、強すぎる。」
まぁ、腐っているのはご明察だが彼女におくれをとるのはどうかと思うぞ近衛兵その一。
我々に気がついた腐った女・・・・・もとい公爵令嬢が駆け寄ってくる。アレだけ動いて軽やかにこっちに来るとは彼女の体力は化け物か?
「あら、王室顧問に孤児弟じゃないの。」
「御姉様久方ぶりです。」
「本当、所詮は義理だから忘れてしまったの?」
「いえ、そんなわけでは・・・・・・・・・・ここのところ目隠し布の改良に掛かりきりで魔術師団の詰所に篭っていたんですよ。」
「そう、居場所がわかれば後で遊びに行けるわね。暫くいるのでしょう?」
「多分暫くいると思いますよ。商会公とか庭園公に捕まらなければ。」
「本当に忙しいのね。」
「ふむ、公爵令嬢が御執心なのは黒髪の少年なのですか・・・・・・・・・・」
「奇才殿、他にも末王女とかも狙っているな。」
「少年も大変な女性に目をつけられたもんだ。」
「変な虫が付かないのは良いのだが、彼女等に付きまとわれるのと変な虫の心配するのとどっちが良いのか疑問に思えてくる。」
「それは難問だな。世界に喧嘩売れても女性関係は涙するなどといった賢者がいたけど・・・・・・・・」
「その辺は同意だな。」
「しかし珍しいですねぇ・・・・・王室顧問様がこちらまで来るなんて。」
「近衛兵その1君、そりゃ、孤児院の子供達を王宮で働かせるに当たって問題部分を調べているところなのだが。」
「訓練中の我々に近づくのはよろしくないでしょうな。流れ弾とかとは言わないけど抜け飛んだ武具とかはあたると痛いから。あとは、王都西部地域軍団長の所とか・・・・・・・・・・・・・あの方は鍛え甲斐のありそうな若者とかを攫って仕込むのが好きですから。」
「攫ってとか・・・・・・・・・・・穏やかでないな。」
「最近では補佐見習準爵が根性ありそうだとうずうずしていたけど、傷跡娘嬢の付き添いで旅路に出ているから彼にとっては難を逃れたようですけど・・・・・・・・・・」
補佐見習は誰か一人のためだけに世界に戦いを挑む馬鹿者だから、熱血系の将軍だと気に入るんだろうな。
「さっき来ていた近衛文官の孤児院からの人材獲得作戦に乗り気だったのが西部地域軍団長だったりするんですけど。近衛軍団長とかが抑えるのに苦労していたようですね。ほら、管理等の窓が一部壊れているでしょう・・・・・・・・・」
「会議と喧嘩は同一語なんだろうか?」
奇才殿、貴方の作品もガラクタと伝説の紙一重なんですけど・・・・・・・・・
それは兎も角、軍部の修繕費が特に高い理由が理解できた・・・・・・・・・・今回の窓は自前でな。次回から会議で壊したものに関してはきっちり自前で直して貰うか。
「窓とか机とかだから軍団長級だったらはした金だろう。」
「軍部削る前に官僚の酒手だろう!」
「あれ?実は自前だぞ。」
「「「「な、なんだって!!」」」」
その場にいた近衛兵、公爵令嬢が一様に驚いている。そんなに不思議なのだろうか?
失礼な輩だ。
そんな雑談をしている間に意気が整ったのか近衛兵達は訓練に戻っていった。
響く剣戟の音。子供たちが見たら喜びそうだな。
「はははははっ!軍部は優秀な子供達を歓迎するぞ。」
どさくさにまぎれて勧誘か・・・・・・・・抜け目ないな。
でも、あそこで小隊規模を率いている士官は?
「あれは、王都東部地域軍団長・・・・・・・・・市場に酒盛でも行くのかな?」
酒盛か・・・・・・・・・・・・・呑みたいなぁ。
「ご主人様は呑みすぎですから控えてください。」
「健康なのにか?」
「はい、酒に御主人様を取られるのが口惜しいですから・・・・・・・・・」
愛い奴だ。酒に嫉妬してもしかたあるまい。
孤児姉を近くに抱き寄せて頭をなでる。孤児姉は眼を細めて気持ちよさげにしている。
しかしこの髪の毛の感触は癖になるな。
「王室顧問、主従の仲がよいのは構わないのですが、管理等に向かいませんか?」
「うむ、奇才魔術師。ついでだから中に入ってみるか。」
私は孤児姉の頭から手を離し管理等へと進む。
名残惜しそうな孤児姉に苦笑しつつ、着いてくる一同。
しかし大人数だな。
酒が切れたのでこれまで。さてと、明日で今の現場は最後だ。