夜会と茶菓子
あらすじ 公爵達は市場で酒盛り。その後彼らは市場巡りにはまるのであった。
官僚共の手伝いをしている最中、いきなり庭園公に呼び出される。
私は菓子を土産代わりにむかうのであった。
「王室顧問、我らの食料を・・・・・・・・・・・」
「普通に食堂に行け!」
「ご主人様、私はどうしますか?」
「孤児姉、今日は大丈夫だから孤児娘達を手伝ってあげてくれ。」
「かしこまりました。」
王宮のはずれ、庭園公の領地である小さな庭園で彼女と鉄杖の従者と向き合う。
「王室顧問、あの灰髪の兄妹を貸してくださらない?」
庭園公の一言は唐突だった?
「貸し出すのは問題ないですが何かあったんですか?」
「いえね、庭園で夜会を行うことになってちょっとした趣向を凝らしたいのよ。金をかけないで意表をつかせるには給仕を皆目隠し状態にしてみたらどうかと思ってね。」
「ふむ、となると目隠し布の魔方陣も必要になりますな。」
「そうね、それは手はずは整えているのだけど人手がねぇ・・・・・給仕をしてくれる雇い人がいないから何処からか用意しなくてはいけないのだけど適当な人材が・・・・・・・・・・・・・」
従者の用意してくれた茶を喫しながら庭園公はのたまう。
庭園公は貧乏だからなぁ・・・・・・
「貧乏言わないで!慎ましく暮らすには十分な蓄えはありますし、贅沢は趣味じゃありませんから!」
どうして庭園公関係者は貧乏なんだろうか?
確か王国からもそこそこの年金は支払われているはずなんだが・・・・・・・・・・・・・・・・・
このお人よしのことだから右から左へと自称困っている人に貸しているのだろう。無利子無期限で・・・・・・・・・・・・・
私も茶を喫しながら、考えてみる。美味い茶だ、従者は良い嫁になれるな。
ぽっ!
顔赤くするな!恥らうな!お前男だろう!しかも妻子もち!
「って、王室顧問卿。照れても恥らってもいないでしょうが!」
「うむ、そんなことしていたら従者の間合いには近づかないさ。むしろ逃げる。まぁ、この生活無能力者の面倒見ているうちについた技能ということは理解できるが・・・・・・・・・・・・」
「ちょ!生活無能力者って・・・・・・・・・・・・・」
「家事全て従者一家に任せていて、従者の息子に『あのおねーちゃんはどうして家のことをしないの?』と従者の奥方に質問していたのは聞いたことがあるぞ。」
「公の部屋は家内が入ったとき、あまりの惨状に戸を閉めたくなったとぼやいてましたなぁ・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・そういう王室顧問はどうなのよ?」
「私?野戦食位ならば作れるし、従者はつい最近までいないからある程度のことは自分でこなしますが何か? ああ、従者。これは私が作った焼き菓子だが皆で食べてくれ。」
「王室顧問卿ありがたく頂戴しよう。子供達も卿の菓子を気に入っていてな・・・・・・・・・・・・顔を真っ赤にして欲しがるのだよ。」
「それは酒精が強すぎたから酔ってしまったのでは?」
ぷわぁん
酒精の香りがあたりに漂う。
庭園の花の香りと交じり合いなんともいえない雰囲気になる。
じぃぃっと私等男衆のやり取りを見ていた庭園公は徐に焼き菓子の入った籠を奪い取り菓子を齧る。
「どうせ私は料理ひとつできない女ですわよ!っていうか孤児姉あたりが作ったんじゃないの?」
「残念ながら私が作ったものだよ。最近、孤児姉と孤児娘達が菓子作りにはまってね、つき合わされるのだよ。彼女達に任せると甘いものばかりになるから私は酒精と苦味をきかせて自分好みに作ったのだが中々面白くてな・・・・・・・・・仕事の合間に官僚共にも食わせているんだが奴等だと酒のつまみとか酒の代用品くらいしか思ってないから持ってきたのだが・・・・・・・・・・・・」
「悔しい・・・・・・・・・・・・・でもおいしい・・・・・・・・・・!」
霊薬とか薬品関係は作っているから、練習すればすぐできるようになるのだろうけどね庭園公の場合、教えるつもりはないが。
従者も一つ手に取り、ぱりっ!と齧る。
「少々、酒精を強調している節もあるが悪くない。息子には酒精の入っていないのを用意してくれないか?小さいうちから酒精にさらすのはよろしくない。」
「そう言いながら、息子と酒を酌み交わすのを楽しみにしているくせに。」
「それとこれとは別の話だ!」
お人よしで生活能力ゼロ、よく生きてこれたなぁ・・・・・この一族。
「一族というよりも当代の庭園公が駄目なだけであって・・・・・・・・・・・・先代様の料理はそれはそれは・・・・・・美味でした。今思い出しても・・・・・・・・・・・・」
遠い目をする従者。
菓子を食べて落ち着いたのか、酒精で開き直ったのか庭園公は本題に戻す。
「貴方達のやり取りがひどすぎるのはあきらめたけど、灰髪の兄妹を一度寄越してくれます?私の分の目隠し布も用意したいですから。」
「わかった、灰髪少年には目隠し布を何種か用意しておくよう伝えておこう。で、いつ行われるのかな?」
「まぁ、半月後だから数日中に一度来て貰いたいですわ。衣装との兼ね合いもありますし。」
私は諾と答えて、庭園を後にするのだった。
二日後、私は灰髪の兄妹と強力兄妹を伴い庭園公の下に向かう。
「あら、灰髪兄妹も王宮にお披露目?」
「なんか目隠し布の商売だそうで・・・・・・・・・・・」
「気をつけたほうがいいよ、兄のほうは貴腐人受けしそうだから・・・・・・・・」
「きふじんってなんです?普通に貴婦人の方でしたら問題ないと思いますが?」
「いや、知らないほうが良い。それがお前のためだ。」
「だんなの言うとおりだよ!今日はだんながいるから大丈夫だと思うが一人で行っちゃ駄目だよ!」
「黒髪孤児の若様・・・・・・・・・そんな怖いところで?」
「ああ、あそこは魔窟だ・・・・・・・・・・・・・・」
孤児弟、よほど怖い目にあったんだなぁ・・・・・
「怖いというよりもひどい目だけど・・・・・・・・・・・・・だんな、駆除できないの?」
「無理だ。」
白浜の砂の真砂が尽きるとも世に腐れ女の種は尽きまじ・・・・・・・・・・・・(by文芸神)
関係なくしゃしゃり出てくるなぁぁぁぁぁぁ!!(どばこーん
キラッ!
邪神は遠く空の彼方に消え去っていった・・・・・・・・・・・・・
ふぅ、いい仕事をした。
「あの、王室顧問様?あれって・・・・・・・・・・」
「ただの邪神だ!」
「えっと・・・・・・・・・・・・神様ですよねぇ・・・・・・」
「邪神だ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
押しが弱いなぁ・・・・・灰髪少年は。これでは世の中無事に渡っていけるか心配だ。
「ご主人様、さすがに神をたたき飛ばすのを日常にするのは少年に酷だと思いますが?」
「そうか?孤児院で神々と触れ合っているから慣れているのかと思っていたが・・・・・・・・・」
「あそこにいる神々はまともですから普通に敬われていますけど。」
「そうだな!」
どつきまわすのは王室顧問とか黒髪孤児とか補佐見習位だものねぇ・・・・・・(by暗黒神)
神々に対する礼儀とか敬意とか考えて欲しいものだ。(by光明神)
そんなこんなで庭園公の下につく
すでに打ち合わせの準備ができているのか、従者とその奥方、針子達が待ち構えていた。
まぁ、着せ替え人形にさせられるのは今日の仕事だ。
たまには違う世界を見てみるのも悪くなかろう・・・・・・・・・・・・・
「あら、この色だとちょっと合わないわね。」「だったらこっちのはどうかしら?」
「やはり兄弟だから色とか作りとか合わせて一対にしてみるのは面白いんじゃない?」
「いいね、それ!まずは採寸ね!」
「うわぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・くすぐったいですよ!ってなにしているんですか?」
「体の寸法を隅々まで計るのよ!仕立てるんだから!」
「服をわざわざ仕立てるって・・・・・・・・・・そんなもったいない!」
「何いっているの!貴族の夜会なんだからそれくらい当たり前でしょう!」
「あのぅ、目隠し布がないと見えないのですけど・・・・・・・・・」
「あらあら、ごめんなさいね。うーん、庭園公様がこの色だからそれの影となるようにやや地味目に・・・・・・・・・この目隠し布の刺繍は面白いわね。地味に見えて手が込んでいるわ。この柄を主題にしてみようかしら?」「だったら、少年のは対にした主題で目隠し布を作ってみようかしら?」
「いいねぇ・・・・・・・」
「庭園公様はよろしいですか?」
「いいですわよ。そこのでかいのも戦士装束でそろえてさらに後ろではべらせるのも面白そうね。」
「ちょ!な、何を・・・・・・・・・俺等は付き添いだし・・・・・・・・・・・・」
「夜会なんて出れるほど・・・・・・・・・」
「いいのよ、飾りだからいかめしそうに控えていればいいわ!」
「ま、まて!脱がせようとするな!」
「良いカラダネェ・・・・・」「指を滑らせるな!」
なんかやり取りを聞いていると強力兄弟も巻き込まれているようだな。
まぁいいか!
「待って、旦那!俺たち夜会なんか出るほどの身分じゃないでしょう!」
「給仕か傍仕えのつもりでいればよいさ。それとも固まっていれば問題なかろう。」
こうして、針子達の餌食となった二組の兄弟であった。
「ところで庭園公の衣装の主題は?」
「えっと、癒しの聖女とその御付といったところでしょうか?」
「ところで従者は?」
「前に作った衣装で十分です。目隠し布を選ぶくらいで終わりますが。」
変装酒宴かよ!
「目隠し布は正装よ!」
ごもっとも・・・・・・・・・・・・・・・
適当に適当に・・・・・・・・・・・酒を買いに行かないと。