酒盛市場と目隠公爵
あらすじ 前話の最後美食巡りだと申し上げたことには目的が逸れている事に突込みがありませんでした。
どうして路上で食べる軽食は美味しいのだろうなぁ・・・・・
酒も進む進む・・・・・・・・大して上等なものをおいていないし、まがい物が多いのに・・・・・・
灰髪少女による市場美食めぐり・・・・・・・・・これはこれで魅力的だが、まずは目隠し布の話を進めましょうよ・・・・・・・・・・
「うむ、わかっているぞ王室顧問。早く済ませて孤児姉といちゃラブしたいということを・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・///」
「いえ、そんなことではなくて・・・・・・・灰髪少女を足止めするということは彼女の商売を邪魔していることですから・・・・・・」
「案ずるな。そこの目隠し少女、お前の商品を全部追いいておけ!」
「はいっ!ありがとうございます・・・・・・・・・・って、食べきれるのですか?」
「気にするな。食べ切れなさそうならば、そこに放牧している孤児達がいるだろう。彼らの助力を頼む。」
「ついでだからそこのデカイのあそこの三人を呼んでくれないか?」
強力兄弟を使い走りにしてチビどもを放牧している公爵私兵の三人組を呼びつける。彼らのその後を見たものは・・・・・・・・・・・
書類の山を崩す所しか思い浮かばない・・・・・・・・・・・
別によいけど・・・・・・・・・
「もぐもぐ・・・・・・・これは旨いな。我が農園でも作ってみるか。棒手振りの娘さんや作り方を教えてくれんかね?」
「え、えっと・・・・・・・固焼きの麺麭の上に適当にうちで作った乳酪とか塩蔵肉とか野菜とか乗せただけですけど・・・・・・・・・・・」
「それだけではこれほどの味は出ないだろう・・・・・・・」
「隠し味に柑橘の皮を摩り下ろしたのを・・・・・・・・・・農園公様の親類筋に当たる甘蕗男爵の宴席で出された物を真似ただけですが・・・・・・・・」
「おやおや、わしの正体を見抜いたとは・・・・・・・・・」
「農園公様は何度か甘蕗男爵様のところでお見かけしてますから・・・・・・・・・」
「ふむ、そんなことがあったかねぇ?」
「下働きとして遠めでお見掛けしただけですし・・・・・・・・」
「男爵のところには良い領民が育っているんだな。羨ましいものだ。」
「いえいえ、それほどでは・・・・・・・・・・・」
「うちに来ないかね?待遇は相談にのるぞ。」
農園公が棒手振りの娘さんを口説いている。奥方に通達しないと・・・・・・・・・
「それには及ばぬだろう・・・・・・・・・・・もぐもぐ」
意味深なことを言う商会公と
「実際、これは美味ですわね。」
そっと、手を伸ばす鉄杖の従者の手を叩きながら庭園公はもぐもぐやっている。
灰髪の少女のつまみも
「王都では珍しいな、ヤギの乳酪だよ。」
「癖がありますな。ちと匂いが・・・・・・・・・・・」
「少々素材のままだから単調な気がするが物が良いから助けられている気がするのか・・・・・・・・」
「って、石蕗男爵のところの限定、塩蔵燻製肉ではないか!無駄に良品を・・・・・・」
こちらもこちらでもぎゅもぎゅやっている。
その横では孤児院に入り浸って仕事していなかった私兵団の三人組は冷や汗を流しながら主達の反応をうかがっている・・・・・・・・・・
灰髪少女も酌婦として皆の周りをめぐろうとしているのだが、庭園公に呼び止められて目隠し布の説明をさせられる。
女公爵と相対しておっかなびっくりな灰髪少女、孤児弟が助け舟を出す。
「灰髪少女、こちらは庭園公。女の子は取って食わないから心配しなくていい。君の目隠し布の恩恵を一番受けたい人だから使い勝手とかを説明してあげて・・・・・・・」
「孤児弟、なんか私が男の子は取って食うみたいな言い方じゃない!」
「実際、おいらと補佐見習が受けた仕打ちを見れば・・・・・・・・・・・」
私が鉄杖の従者を見ると彼は肩を竦めただけだった。主人を諌めなくてどうする!
「諌めてどうにかなる主人でしたら従者さんもどうにかしてますよ。」
「この公爵様達はわが道を行く方々ですから。」
孤児姉弟は思うところがあるのか口々にいってくる。私は彼等のように酷い主人ではないからやりやすかろう・・・・・・・
「13の子供に爵位を得る程度の教育とか経験をつませて仕事漬けにするのが優しい主人かよ。」
「ふむ、よくよく考えてみたら王室顧問ほど無茶はしていないな。」
「彼女達があまりに優秀だから忘れていたが子供だったんだよなぁ・・・・」
「遊びたい盛りではあるけど、町方でもまだ見習とか下働きをしている年頃ですものねぇ・・・・・」
「十分遊ばしているじゃないか甘やかしているし!」
「女の子限定でな。」
「勿論、孤児弟にしろ補佐見習にしろ自分で決めて歩き始めたんだ。必要以上の手助けは彼等に対する侮辱だ。」
「厳しいのぅ。孤児弟、疲れた我が家の門をたたきなさい。受け入れてあげるから。」
「こらこら人外の孤児弟はわしの商売相手だ。横取りしないで貰いたい。」
「商会公、我が一族の子をもっていくな。」
「公爵様方持ってかないでもらえます?私が育てたんですよ。」
「でも歩む道を選ばして見守ることを選択したのは王室顧問だろう。彼がどの道を歩むにしても彼の選択として尊重せねばなるまい。」
うわぁ、開放公。 人の揚げ足とっているよ。もってかれたら母上に何を言われるか・・・・・・・・・・
「賢者様、大丈夫。私たちがいるから。」
「孤児弟だって、辺境伯屋敷に遊びに行くくらいはするでしょう。」
「そうそう、今のうちに人脈増やして地力増やしておかないと。」
つまみをもぐもぐやりながら・・・・・・・・・・孤児娘たちが私に抱きついてくる。
「王室顧問はモテモテじゃな。わしも若い子にもててみたい物だよ。」
農園公、それは死亡フラグ(異世界語)
先の棒手振り娘と言い、死に急いでどうするのだろう?
「あら、あなた・・・・・・・・・・楽しそうですわねぇ・・・・・」
農園公夫人が現れた。
「え、えっと・・・・・・・・・どうしてここに?」
「いえねぇ、市場に美味しいものを集めた軽食広場ができたと聞きましてね、女衆と見物に来たんですよ。うちで取れた作物の売れ行きとかも見るのも必要でしょう・・・・・・・・・・・」
「建前は市場調査で本音は遊びに来たと・・・・・・・・」
「あら、王室顧問に公爵の皆様方いつも主人が世話になっております。」
「いえいえ、婦人。こっちもいつも美味な野菜で世話になってますよ。」
「久方ぶりであるな夫人。」「たまには遊びに来ないのか?」
挨拶を交わす夫人と一同。貴族様とため口をきく農家のおばちゃん。いろいろすごい光景だな。
後ろには農家の女達が市場をめぐっていろいろ楽しんでいる。
一応農園公も仕事で来ているのだから、軽口くらい見逃してあげようよ・・・・・・・・・
「あなた、今日はどうしてここに?」
「うむ、商会公の誘いで市場にそこの灰髪少女の目隠し布を検分しにきたのだよ。」
「あらあら、かわいらしいお嬢さんね。はじめまして、私はそこのスケベ親父の妻をしている農園公夫人ですわ。」
「・・・・・・・・・・・す、スケベ親父・・・・・・・・・・(がくっ」
「は、はじめまして。灰髪少女と申します奥方様・・・・・・・・・(びくびく」
「怯えなくても大丈夫ですわよ。元をたどれば農家のおばちゃんなんだから・・・・・・・・・・気楽に接して頂戴。」
「は、はい・・・・・・・・・・・」
「それにしてもよく出来ているわねぇ・・・・」
「結構、可愛らしい刺繍が入っているんですね。」
「髪留めに欲しいかな・・・・・・・・」
農園公のところの女衆は髪留めか何かと勘違いしているのだろう。
それでも良いか・・・・・・・・・
そして、女衆と目隠し布談義に混じる庭園公。灰髪少女から目隠し布を借りて自分でも使ってみる。
「これって初代が使ったものかしら?」
「そうですよ庭園公。一応、布の部分を替えて清潔に使えるようにしてますからその日の気分で布を変えても面白いですよ。」
「どんな布があるのかしら?」
食いついてくる庭園公。そりゃ伝統的衣装として目隠しが半ば義務づけられているからな。
あれでも女性だし、お洒落位したいだろう・・・・・・・・・・
それについて説明をする孤児弟。目隠し布の着せ替え人形と化した灰髪少女。
女衆も自ら目隠し布をつけてみて、きゃっきゃっ言いながら選んでいる。
「女衆達、目隠し布を主人が買ってくれるってよ。あなた良いでしょ?」
「言い出してから了解を得るのはやめてくれ。」
懐から硬貨袋を取り出す農園公。えっと、ドサクサ紛れに自分の分を払わせようとするな庭園公!
「いいじゃない!農園公のおじ様☆」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はいはい、自分の分は自分で買おうな庭園公。」
「けちっ!」
「まぁまぁ、庭園公にはわしから贈るとしよう。これなんかどうだ?」
「あら嬉しいわね商会公、何か裏があるの?」
「裏というほどものものではないさ、君がそれを身につけてくれたところを見たいだけだよ。」
「商会公は太っ腹ですわね。どこぞの農家の親父と違って・・・・・・・・・・」
ぽんっ!
たぶん下心満載だぞ商会公は・・・・・・・・・・・
この場合、庭園公も使用したという実績を利用して大々的に宣伝するつもりだと思うが・・・・・・・・・・
問題ないか・・・・・・・・・・実害ないし。
「なるほど、庭園公を使うのか・・・・・・・・・・・・さすが商会公。おいらの斜め上を行く!」
「はははっ!孤児弟、君とは年季が違うのだよ。年季が!」
農園公の女衆が目隠し布を買って、庭園公まで使用しているとなれば・・・・・・・・・・・周りの市民もありがたいものなんだなとか思ってくれている。
大々的な宣伝とは恐れ入った・・・・・・・・・・・
「でも、この柄とか良いわね・・・・・・・・・・」
次々に目隠し布を合わせてみる庭園公。鉄杖の従者は意見を求められるが似合ってますよくらいしか言えない。そりゃそうだろう・・・・・・・・・・
無骨な彼に求めるのは酷というものだ。
見かねた孤児姉とか孤児娘達がわいわいやりながらあーでもないこーでもないといいあっている。
珍しい庭園公が着せ替え人形状態だよ。いつもと逆だし・・・・・・・・・・
「珍しい光景だな。」「うむ。」
「いつもは庭園公のほうがいじるよな。」「王妃のほうが主にいじっているけど・・・・・・・・・もぐもぐ」
「あの方も女性を飾らせるのが好きだからなぁ・・・・・」
「そして、その後は殿方がはがすのだな・・・・・・・・・・」
「下品なことを言わないの!」
「おっと、失礼・・・・・・・・・・・」
酒はともかくつまみは・・・・・・・・・・・・・
食われるよな、うちの欠食児童どもと戦闘系の公爵達の手にかかれば・・・・・・・・
「欠食児童ってひどい!」「私たち育ち盛りなの!」
「いやぁ、市場のってなんか旨いんだよなぁ・・・・・」
「うむ、露天で食べる飯というものは気持ちが良い。」
農園公夫人と女衆の卓を見てみると・・・・・・・・・・
山盛りの食べ物と五月蝿い位にお喋りしながら消費する女衆の姿があった。
その傍らには空になった硬貨袋を手にうなだれる農園公と食べ物を山盛りに盛られて四苦八苦している灰髪兄妹の姿があった。
「ほらっ!もっとお食べ!そんな細っこい体じゃ、世の中渡っていけないわよ!」
「がりがりじゃないのさ!男の子は食べないと!」
あのぅ、肉体労働者と一緒にされても困るのですが・・・・・・・・・・
肥育鵞鳥肝作っているのと違うのだし。
なんかまぎれて孤児達もいるし・・・・・・・・・
「あらっ!良いのよ。この子達は私が呼んだのだから。おちびちゃん達、もっと食べな!」
「ありがとう!おばちゃん。」「いただきまーす!」
こっちは気持ちが良いほどの食欲である。夕飯が入らなくなるぞ(苦笑
そう言えば、私兵三人組は?
「ああ、彼等ならば一足先に帰ったよ。」
「しばらく孤児院には来れないだろうがよろしく言っといてくれ。」
「孤児達は我等が送り届けるから安心するが良い。」
その後彼らの姿は久しく見ることが無かった・・・・・・・・・
ああ、書いていて酒がのみたくなった。そろそろ秋鮭の腹にも筋子が入っているから自家製のいくらでもいくらか作ってみるかな。