強力兄弟と旅の空
あらすじ 孤児弟は査察を完了した。
旅路に出ている我等一同は順調すぎる旅路を楽しんでいる。
強力兄弟の御母堂は何処からこんなごついのが生まれたのかと疑問に思えるくらい小柄な老婆だったのだが、息子達を身の丈よりも大きな棍棒で叩きながら我等の旅路を快適に安全にあるように取り計らってくれる。
私一人ならば別に多少の不便があっても良いのだが、女性陣がいる旅路においてその女性特有の不便さを案じて快適にしてくれる彼女の存在は特に有用である。
寧ろ強力兄弟が・・・・・・・・
「王室顧問の旦那・・・・・・・・婆の添え物なんて言わないでくだせぇ・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・旦那、俺達お払い箱ですか?」
別にお払い箱にするつもりはないけど、性愛神殿の女性たちに対して前歴から差別する事もなく紳士的に扱う男性というのはそれだけで十分・・・・・・・・・
それ以前に
「強力のおじちゃん抱っこ!」
「強力兄貴、先日の手の傷は申し訳ありませんでした・・・・・・・・・」
幼女兄妹が懐いているのに無碍には出来まい。
ちゃんと君達がいるお陰で要らぬ騒動が防げている部分があるから気にすることはない・・・・・・・・・・
「すまないねぇ・・・・・・・・・・王室顧問の旦那、うちの馬鹿息子共が無駄飯食いで・・・・・・・力仕事でも何でもこき使ってやんな!」
婆様は最強であった・・・・・・・・・・って、強力兄弟を片手でのしている姿を見たら我が目を疑うぞ。
強力兄弟が手が出せないというのも在るだろうが、膂力だけで言えばこの一行の中で三番目くらいだろう・・・・・・・・・・
それ以前に重宝なのが私の肩の怪我の手当てとか世話に関する部分である。
孤児姉が自力で全てこなそうとするのだが、一人では手に余る部分とかもあるとしっても自分を損なってまでも私の世話をしようとする。それは愛しいと思うのだが私の本意ではない。
そこを婆様は酌んでくれて孤児姉に体を休める時間を用意してくれるわけだ。
特に手間のかかる世話という部分はないのだが、従者というか女として世話したい・・・・・・・・・他の誰にも取られたくないという嫉妬心があるのだろう。
其処が孤児姉らしく愛いなと思うのだが、無理をして貰っても困るし私一人に囚われて先を狭めてもらうのは不本意だ。
かといって、孤児娘や性愛神殿の面々だと嫉妬を煽るらしく問題だから婆様が適任だったりする。
流石に私も婆相手に欲情したりしないから。
「そういえば旦那がだれそれ構わずという噂を・・・・・・・・・」
「孤児弟、立ったらお前が無事な理由を・・・・・・・・・・・」
「だんなの趣味に合わなかったとか、育てて・・・・・・・・・・・」
世間はひどいことを言う・・・・・・・・・・
「王室顧問、私は判っていますから・・・・・・・・」
女神官・・・・・・・・・
「むぅ・・・・・・・・」
孤児姉が膨れている。小さくとも女ということか、嫉妬に胸を焦がすということは・・・・・・・
「孤児姉、お前は飛び立つ身。私如きにつかまる事もあるまい。」
「いえ、私は臨んで御主人様の元にあります。」
いつもの如く他愛もないやり取り・・・・・・・・・・・
これを楽しみにしている私も居るということは悟られてはならない。
「この旦那は孤児姉に捕まりそうだねぇ・・・・・」
「かーちゃん、いくらなんでも小さい子に捕まるほど旦那は生易しくないだろう・・・・・・」
「俺もそう思う。この娘たちを大事にしているからこそ、世界相手に喧嘩を売る悪辣な御仁なのに・・・・・・」
「いいや、これはあたしの女の感だよ。って、言うかお前等も嫁子こさえて孫の顔を見せておくれ!」
強力兄弟も大変だ・・・・・・・・
「だんな、誰か紹介してくださいよ。」
「好みで言えば・・・・・・・・・・」
いい年した男が口説けなくてどうする!
もっとも強力兄弟は性愛神殿の女性達に飼いならされているのだが・・・・・・・・・
力仕事を厭わないし、彼女達の名誉に関わる事には本気で立ち向かう。
あるときなんか街道沿いに出た盗賊が
「使用済みの古道具なんて・・・・・・・・」
といった途端に盗賊達の中に飛び込んでいって女性に失礼な発言をした盗賊の顎を砕いていたのは笑い話である。
気は優しくて力持ち・・・・・・・・・・・後は稼ぐ甲斐性か・・・・・・・・・
「だんな、それは言わないで・・・・・・」
強力弟、泣くな・・・・・・・・・・・ちゃんと金になる仕事紹介してやるから。
「本当ですかい!ちゃんとした仕事があれば晴れて彼女を口説いて・・・・・・・・・・・」
取らぬ狸の何とやら
異界のことわざにあったなぁ・・・・・・
まぁ、婆様の気遣いとか見ればその息子達というのもちゃんとしているのが分かる。
稼げるならば優良物件だろうな。
見た目は悪いが一本気の通った堅い男だ。
でなければ、幼女兄の苦難を知って、味方を叩きのめすことなんてしないだろう。
「このなよなよした子供のことを知って放置したらその根性を叩きのめしたさ。」
婆様は最強である。
一行の女衆は婆様婆様と慕っている。
苦界に落ちた女衆を娘のように慈しんでくれる婆様は得がたい人材だ。
孤児娘達も孤児弟も見たこともない祖母という者を彼女に重ね合わせているのだろう・・・・・・・・・
「おやおや、まいったね。いきなりたくさんの娘や孫に囲まれた気分だよ。」
からからと笑い飛ばす彼女には白旗を揚げるしかない。
気風がよく豪快な婆様に私も白旗を揚げるのであった。
旅路でのある宿、私達一行は宿で食事をとっていたのだが
そこは幼女兄が一夜の安息を願う代わりに男達の欲望のはけ口になった場所でもあった。
「はははははっ!あん時のガキが今度は貴族様に尻向けて、楽しませてくださいといってやがるぜ!」
「よぅよぅ、貴族様よぅ、そんなに囲って大丈夫なんかい?腎虚になる前に俺達に少し回してくれないか?」
「どうせ貴族様は椎の実だろう。俺達のところに来いよ!」
男たちはあくまでも下品であった。
私は下品を否定するつもりはない、私自身下品だと自覚しているからだ・・・・・・・・・・
しかし、これは酷い・・・・・・・・・・
下品さというのは誰もが楽しめる気安さと自らに対する諧謔があってこその嗜みと・・・・・・・・・・・
そんな中下品な男達に殴りつけたのが婆様である。
殴られた男は壁にたたきつけられて気絶している。
仲間らしい男達は
「この婆!」だの「後悔させてやる!」
等と定型文を発しながら襲い掛かってくる。
そこに立ちはだかる強力兄弟!
下品な事を発した男達をちぎっては投げ!投げてはちぎって・・・・・・・・
宿に穴を開ける。
「ぼ、僕に逆らったら・・・・・・・・・僕の父は・・・・・・・・・」
等とほざいている馬鹿には丁寧に応対してくれた。
丁寧にとは両手両足の骨を細かく砕いているのである・・・・・・・・・・
婆様は止めて諌める振りをして的確に再起不能になる場所の指示を出す・・・・・・・・・・
えげつねぇ・・・・・
そうして、馬鹿な男達を全て叩きのめした強力兄弟は、幼女兄の頭をなでて大丈夫だという。
婆様も幼女兄を抱きしめて大変だったねぇ・・・・・・・馬鹿なことを言う男達は全てこの婆が砕いてやるよ!
と落ち着かせる・・・・・・・・・
実際砕いたのは強力兄弟だろ!
しかし、婆様は丁寧にも下品な男達から骨の一つを土産代わりに潰すのであった・・・・・・・・・・・
その後、宿の主人から出て行けと追い出されたりしたのだが、皆して出て行ったら宿の主人があわてて追いかけてきたが・・・・・・・・
勿論迷惑料として金を払った後である。
皆して進む夜道はとても楽しいものであった。
幼女たちも眠たいのを我慢して
「おじちゃんすごい!」と騒いでいるし、
強力兄弟の活躍ぶりに性愛神殿の女たちはきゅんと来た、みたいだし
強力兄弟も女達がなにかあれば言って来いと本気で誓いを立てる・・・・・・・・・・
実はこの兄弟脳みそまで筋肉か?
「もう少し考えるように育てたほうが良かったか?」
婆様の後悔する声は笑い話である。
そうして次の街に突いた頃には夜が明けていて、その日一日は休養に当てられるのであった。
「腹減ったぞ!」
「このままだと空腹で眠れない!」
強力兄弟は気が優しくて力持ちです。
女子供には紳士的であれと実践しています。
ちなみにこの宿は王室顧問経由で干されてしまうのです。