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二連の宝珠  作者: れんじょう
冬柊の終焉
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旅立ち 【7】

 そういえば、わたしを連れ戻しに来たといっておいて、でも、急にせかされるように先に帰ったような……。

 

 「あのとき、ひめさまが急に帰られたのは、なぜですか?」


 「なんとなく?」


 しれっと答えたひめさまに、唖然としてしまった。

 いやそこは絶対なんとなくではないでしょう!

 だいたいあの後すぐに私もお店をでたのに、ひめさまのほうがかなり早く城に戻っていたし、それに着替えてもいたなんて、どうやったらあんな早業ができるのか教えてもらいたいものですが!

 私の心の葛藤がひめさまに伝わったようで、さもおかしそうに笑っていた。

 袂で口元を抑えて、くすくすと笑うひめさまは、本当におきれいだなあ。 なんて、関心している場合じゃないんだけど。


 「まあそれはいいとして。 やはりお父様は予想を違わずに行動されたので、わたしとしては準備しておいた通りになっただけのこと。 だから、予想通りだということで知っていたけれど、本当のところは知らなかった、というわけ。」


 「なるほど。 しかしひめさまに書状をお持ちした時には、わたしや六徳どのにはまだ何も知らせてはくださいませんでしたが」


 「予想を違えることがあるやもしれぬのに、どうしてお父様にお話をいただく前にあなたたちに話すことができて? それは思慮が浅いというものよ。

 それに、こうしている間にも時間がすぎていくわ。 最低限必要な物は先ほどの会見の間続きの控えの間に揃えておいてあるのだから、あとは各々の着替えや必要な物をそろえればいいだけでしょう? やはり一刻あればまたこの部屋に日向は来れるわね?」


 今度は日向が呆然と立ちすくんでいた。

 それはそうなのかも。

 ひめさまに直接会って話すことなんて、男の人にはできないこと。 けれど近衛という立場上、城の警備を担当しているのでひめさまを遠くから垣間見ることはできても、話したことはさきほどの書状を持ってきたとき以外ないはずで。

 殿方からは、ひめさまはおしとやかでたおやかという印象が先行していて、今日のひめさまはその印象と、普段のわたしたちに見せる印象とも全く違うものだから、驚いて口がふさがらなくても仕方がない……かな。

 本当に今日のひめさまは、いつもに比べものすごく……きついような?

 普段はもっとこう、我儘なんだけれどそれが嫌味なくて天然で。確かに才女ではいらっしゃるけど、そんな風に表には全く出ないのに。


 「わかりました。 では一刻後にこちらにまた参ります」


 そういって、何か考え込むように顔をしぶめた日向が部屋から下がった途端、


 「人選、間違えたかしら?」


 ひめさまーっ!

 なんですかそれは!


 「だって。日向はひなたの幼馴染だから、もっとこう…快活だと思っていたのよ。 けれど…堅苦しそうじゃない?」


 「それは、ひめさまが一の姫だからです!」


 「それはそうなんだけど、それじゃあ旅に出るのに困るでしょう、なゆたが」


 「わ……わたしは別に困りません。 それに飫肥さまはひめさまの警護のための同行ですから、快活である必要がないのでは? それにわたしの幼馴染だからといってどうして快活になるんですか!」


 何も分かっていないのね?という憐れむような目でわたしを見ないでください!


 「じゃあ旅の支度を始めましょうか?」


 そういってひめさまに渡された紙には、旅に必要な物が書かれていた。

 姫という立場上、自分から旅じたくをしたことがないひめさまだから、どんなものが書いてあるのかと興味津々だったけど、鍋とかお玉とか、食事に最低限必要な道具などが書かれていてかなり驚いた。料理の仕方、知っている人が書いたみたい。

 それに、着物。

 ひめさまが普段着ている物とは雲泥の差の、安っぽいどこにでもある着物が書かれていた。

 そういえばひめさま、お茶屋さんにいるときにきていた着物も、よく考えたら商人の階級が着るような着物だったなあ。 どこからそんな着物を手に入れられたんだろう。

 本当によく、下調べをしてある。



 その時は単純に感心してそう思っていた。


ひめさま、だんだんときつい性格が表にでてきました(爆)

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