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二連の宝珠  作者: れんじょう
冬柊の終焉
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番外編 日向となゆた 【1】

番外編です。

日向となゆたの初めての出会いです。

 おとなりのおやしきに、おとこの子がやってきた。

 「やってきた」っていういいかたは、おかしいのかな? 

 おとなりのおやしきのひとは、みやこのきぞくさま。なつのとーってもあついときとか、ふゆのとーってもさむいときにしかやってこないひとたちで。

 だからおやしきにだれかがずっといることがなかったんだけどな。

 

 そのおやしきのしつじさんとおとこの子があいさつにやってきた。

 わたしよりもいっことしうえだって。……そんなかんじにみえなかったけど。

 なんか、すごくよわいかんじなんだけど、だいじょうぶなのかな?

 

 「これからしばらくとなりのやしきにすむことになった。せわにもなるだろうから、よろしくたのむ。」


 すごくちゃんとはなせるんだなぁ。

 なゆたといっこしかちがわないんだけどな。

 

 「なゆた、ちゃんとごあいさつなさい。 これから一緒にお勉強をしていく、飫肥さまのご次男の日向さまですよ。

 日向さま、娘のなゆたでございます。 日向さまとはちょうどひとつ違いとなりますので、お遊び相手とはなりませんが、ご一緒にお勉強をさせていただきたいと思っております。 よろしくお願いいたします」


 ははうえさまは、まるでおとなのひととはなすようにひゅうがさまにいった。

 やっぱりきぞくさまだから、きちんとしなくちゃいけないんだ。


 「なゆたです。よろしくおねがいいたします」


 ちゃんといえたかな?

 ははうえさまをちらっとみると、めずらしくにこにことわらっていた!

 よかった!

 

 「ではこれからのことをあそうぎ殿と話しますゆえ、日向さまにはなゆた殿と外で遊んでいてもらえませぬか?」


 びっくりしてははうえさまにおはなししようとすると


 「かまいませんよ。」


 でも、だって!

 ふつうはおとこのこといっしょにあそんじゃいけないって!


 「これからお勉強を一緒にすることになるのです。今から二人、仲良くなっていてもらわないと、ね?」


 うーっ。そういうことかあ。

 おべんきょう、すきじゃないんだけどなあ。


 「なゆたどの。どちらにまいろうか?」


 おおきなめ。

 くるくるさせたひゅがさまは、さっきとはちがったかんじがした。


 「そとにいきましょう!」


 そういってひゅうがさまのてをにぎってそとにかけだした。

 ひゅうがさまは、ちょっときょとんとしたかおをしたけれど、わたしがにぎったてぎゅっとにぎりかえしてきていっしょにそとにでた。



   *********

 


 「なゆたどのは、こうやっていつもてをつなぐのか?」


 まわりにだれもいなくなったときに、ひゅうがさまはきいてきた。


 「そうだよ? それにその「なゆたどの」ってへん。」


 「へん…か? れいぎだろう」


 「ちがうよ。なゆたはなゆた。「どの」なんていらないもん。ひゅうがさまはきぞくだから「さま」がつくんでしょう? なゆたはなゆただから、なーんにもつかないの」

 だってそんないわれかた、したことないもん。

 いつだってなゆたはなゆただし。

 ひゅうがさまは、きぞくさまだからそうやって「さま」がつくけど、なゆたはなゆた。

 「どの」なんていらないもん


 「そうか。じゃあ、わたしのことはひゅうがとよんでくれ」


 「え?だめだよ? だってひゅうがさまはきぞくさまだから、ちゃんとよばないといけないってははうえさまがいってたもん」


 「そんなことはない。これからまいにちいっしょにいるのだから、わたしのことはひゅうが、とよんでくれ」


 「うーん……。わかった!」


 そういってちからいっぱいひゅうがはわたしのてをにぎってきた。

 おかおがあったかくなってきたのは、どうしてかな?

 でも、ひゅうがといっしょなら、おべんきょうもすきになるかも!




 このときからなゆたは貴族の次男である日向を呼び捨てに呼ぶことにした。

 ただ本人はいつから日向を呼び捨てで呼んでいるかなんて、覚えてもいなかったが。




 雪見障子ごしに外を見ていたあそうぎと飫肥家執事は、ほっと息をついた。

 本来は、男子と女子、それも貴族と平民が一緒に勉強をすることはないのだが、このあたりには日向と近い年齢の貴族の子供はだれもおらず、また平民でも国王から直々に名字をいただいたなゆたの家六徳(りっとく)ならばと、隣のよしみもあり情操教育もかねていっしょに学ばせようと考えたのだ。

 それに六徳家は冬柊の国のなかでもかなりの富裕。長男でなく家督もつがない日向の将来の相手にふさわしいと考えての今回の行動であった。

 あそうぎにしても、なゆたを将来的に城に上がらせ自分のそばで女官として育てようと思っていたので、貴族のことがすこしでも学べればと飫肥家の要請を受けいれた。

 こうして大人の思惑どおりに事は運んで行くが、当の本人たちはそんなこともしるよしもない。




 この日より、日向が都の屋敷に呼び戻される十歳の春までの数年間を、二人は一緒に過ごした。


ありきたりですいません(爆)

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