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二連の宝珠  作者: れんじょう
冬柊の終焉
5/38

旅立ち 【5】

 「人選をそなたに任せよ、と?」


 王さまの疲弊された顔がさらに深まり、納得がいかない様にひめさまに問われた。


 「誰か、心あるものを同行させたほうがよいであろうが、そなたが考える人選をまずは聞こう」


 「ありがとうございます」


 ひめさまは王さまに一礼をし、そして控えの間にいる私のほうを見て


 「まずはわたくしの女官である、なゆた」


 ええっ! わたし?

 どうして私が選ばれるの?

 あまりの衝撃でくらっとしてしまい、隣にいたほかの女官に支えてもらってしまった。申し訳ないです。


 「そして近衛、飫肥(おび) 日向。この二名で結構でございます」


 「姫、それではあまりに少なすぎる、護衛になるものが一人しかいないではないか」


 「いえ、王さま。この人数がよいのです。あまりに大勢だと身動きがとれません。それになゆたはわたくしの身の回りの世話や食事の世話ができますし、飫肥も護るものが二名のほうが動きやすいのではないでしょうか」


 その人選を受け入れるかどうかを大臣たちと吟味している王さまが、もうよいとばかり大臣たちを手で払い、ひめさまを見据えて


 「ではそなたの思うように。ただ、そなたの一行だけではなく、ほかにこちらが人選した一行を別に立て、光の主人探しに行かせる」


 そうして王さまは今度こそ会場にいる者に向かい、名乗り出るものを待った。

 国王の姫が光の主人探しに傀儡としてでるというのに、臣下である自分が出ないとなればそれこそ名がすたるとばかり、数十名のものが名乗りを上げた。

 けれど、その中から選ばれたのはほんの数名。もちろん女性は一人としていずで。

 そこから考えるとひめさまの一行(この場合わたしと日向だけど)は異色をはなっていた。


 「選ばれた者は前にでよ」


 右大臣の命令で呼ばれた、わたし、日向、そして数名の選ばれた者。

 ひめさまも王の前に座りなおし、頭を下げた。


 「王命である。 直ちに光の主人と護人をみつけだし、闇の支配者を退治せよ。」


 「はっ」


 ふかぶかと頭をさげて、王命を頂く。

 って、なんか違うってずっと思っているけれど。

 すっと顔をあげると、王さまがひめさまをじっと見ていた。


 「今から伝えることは、家に持ち帰り実行せよ。そして近隣のものに知らせ、実行させよ

 まずは、火を絶やすな。光が常に身近にあるようにせよ。

 つぎに、色が薄く生まれ出た子がいる家はすぐに役所に知らせよ。直ちに術者をむかわせるゆえ。

 さらには、闇をむやみに恐れるな。恐れることこそが闇の思うつぼである。

 以上、直ちに実行せよ。解散」


 そう右大臣がいい終えた途端、会見の間の空気がぶわっと膨らんだように見えた。

 王さまの退出を待つことなく、我先に部屋から立ち去ろうとする者たち。

 その中で、王さまはひめさまの手をしっかりととられて


 「すまぬ、晃陽」


 そうつぶやかれた。


 「いいえ、お父様。こうなるだろうとは思っておりました。ただその時期が早かっただけです」


 不思議そうにひめさまを覗く王さま。


 「だって、この色に生まれましたから。お父様やお母様が必死に隠されているのはわかってはおりましたが、やはり人の口に戸はたてられぬものです。色付きで生まれるということがどういうことかはいつか知っておりました」


 「そうか。知っておったのか」


 「だからいいのです、お父様。それになゆたと藤枝が一緒にいてくれます。わたくしに人選を任せていただけたこと、本当にありがたいとおもっております」


 とん、と私の肩に触れる手があった。

 この感触は覚えている。

 振り向いてみてみるとやはり、母上さまが瞳を潤ませながらそこにいた。


 「なゆた、しっかりとひめさまをお世話するのですよ」


 母上さま……。


 うん、わかってる。母上さまが王さまの前で私を思って泣き崩れることはない。王さまも王妃さまも一人娘であるひめさまを旅にでさせるのだから、わたしを一行に加えたくないとは言えない。

 だから母上さま、わかっているから、泣かないで。


 「はい、母上さま。精一杯お世話いたします」


 「飫肥さまも、気をつけて。 そしてひめさまをお守りください」


 「はい、使命を全うして、必ずやひめさまとなゆた殿と一緒に帰還いたしますゆえ、ご安心ください」


 日向に向かい何度も頷く母をみていると、私や日向、そしてひめさまが立ち向かうことの大変さを改めて実感してしまう。 それほど先が見えなくて、途方もない話なんだろう。

 でもどうして私が?

 まさかひめさま、お茶屋さんと同じで全部わたしに丸投げする気なんじゃ……。


 「では、各々方。 旅に必要な物は控えの間に揃えてございますので、あちらのほうに移動願います」

 

 右大臣が事務的に伝えると、10名ほどが控えの間に移動した。

 この人数で、冬柊の国全土をまわって光の主人を見つけ出して、そして闇の支配者を倒せるのだろうか?

 たおす?

 ひめさまの一行は、ひめさまとわたし、そして近衛である日向。

 たった3人で光の主人を見つけれる?そして古事記では強大な力をもって冬柊の国を焦土と化した闇の支配者を倒すことができるのだろうか?

 それとも、ひめさまは初めから傀儡として旅をすることしか考えていらっしゃらないのか?

 どうなるんだろう、わたしたちは一体。 

 さきほどから右大臣が今後の行程を話しているけれど、そのほとんどが頭に入らず呆然としていたら、

 

 「ひなた、大丈夫?」


 ひめさまにご心配をおかけしてしまった。

 女官として、仕える主人に心配をかけるとは、大失態だぁ


 「だ……大丈夫です、ひめさま。」


 よほど心ここにあらずだったらしい。日向までもが心配そうに私を覗いていた。


 「では、明朝から光の主人探しに出かけていただきます。今日はこのままいったん家にお帰りください。そして明日、日の出前にまた登城いただきます。

 他に何か分からないことがありましたら、今この場で申し出てください。

 なければ、解散といたします。

 ではまた明朝に。」


 明朝?

 ってか、もう話が終わってますけど!

 いやぁぁ! どうしよう!

 全然聞いてなかったよ…


 「ひなた、顔にでてますわよ? 聞いてない!って」


 ひ…ひめさま、何を言っているんですか!


 「ちゃんときいてま……せんでした、すいません」


 ここで「ちゃんと聞いている」なんて嘘をつこうものなら、あとからひめさまにどんなに言われるかと思うと、ここはちゃんと聞いてなかったことを言っておかないと怖い…怖すぎる。


 「お前、昔とぜんっぜん変わっていないな」


 呆れ気味に日向が突っ込んできた。 突っ込まなくてもいいし。


 「まあ、どちらにしても今の右大臣の話は聞いておかなくても大丈夫だから、ね。

 日向と…、あ、日向って呼んでもかまわないでしょう?これから一緒に旅をするんだし。

 日向も私のことを晃陽って呼んで頂戴ね? ひなたと日向は、わたしの部屋に来てもらえるかしら?」


 なにかとんでもないことになってしまっていますよね、今。

 無駄なことだわかっているけれど、逃げていいですか?



なかなか話が進みません。すいません。


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