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二連の宝珠  作者: れんじょう
冬柊の終焉
22/38

儚き夢 【晃陽】

 そこはどこまでも白に光り輝く世界

 

 白以外のすべての色は存在さえしない世界



 ――――その中にぽつんと私は立っていた



 随分と幼いその姿に驚いたものの、すぐ自分の歳では当たり前なのだと気づく。



 まっ白な世界



 その中で薄く色づく私はいったい誰なんだろう。





 『○○!』


 いきなり名前を呼ばれて、振り向いてみればそこには私の大切な妹が困った顔で私を見ていた。

 私とは対照的な濡羽色の長い髪に漆黒の瞳を持つ、わたしの大切な大切な妹。

 そして彼女の後ろには、床につきそうなほどの闇色の髪を眼隠しにして、いつも控え目に彼女に寄り添っている闇そのものの男の子がいた。



 『○○! どこにいっていたの? すごくすごーくさがしたのに』


 「□□こそどこにいたの? すごくすごーくさがしたわよ?」


 そういっていつものように抱きついてきた彼女に、かすかな違和感を覚えてた。

 

 私の大切な妹は、三歳のときに亡くなったのではなかったのか?

 彼女によりそう彼は、その時に消滅したのではなかったのか?


 そんな疑念も、抱きついてきた彼女の温もりで、一瞬にしてなぎ払われた。 ……けれど。


 「あら? こんなに□□は身丈が低かったかしら?」


 抱きつく彼女を支えている自分の手が視界に入ったとき、さきほどまでの幼児独特の丸みを帯びた手ではなく、白魚のようにすらっと伸びたそれに変わっていた。


 「え? どうして……? 」


 『○○。 どうして髪の色を染めたの?』


 不意に大人びた声で私に訪ねてきた彼女。

 そう言われて髪を見てみると、さきほどまでの私本来の、色がほとんどない髪から、旅が楽になるようにと染めた黒い髪に戻っていた。


 『どうして瞳の色も染めたの?』


 「それは……、主人だと知られたくないからよ。 どうしてかは□□が一番よく知っているのではなくて?」


 くすくすくす


 その答えがさも可笑しそうに、彼女は笑う。


 一声笑うたびに、一つ歳を重ねていくように幼子から少女、少女から大人の女へと変化していく。 そして後ろに控えていた小さかった男の子も彼女と共に大きくなっていった。


 「○○。 私たちは同じ時と腹を使って育った姉妹なのに、随分とかけ離れてしまったわね?」



 ぐわっ



 彼女の顔が私を覆い尽くすほど大きくなり、その手は私の首を締めあげる。


 「……っくっ。 ……□□……、どうし……て…」


 苦しいながらもなんとか彼女の腕を掴み、ぎりっと握りしめると――――ぽたっぽたっと、その突き立てた指がめり込んだ腕から、どす黒い液体が流れおちた。


 『□□……』


 そんな状態になっても痛みを知ることがないように私の首を絞め続ける彼女を、闇そのものになった男は沈痛な瞳をもって彼女を抱きしめる。

 

 びくっ


 驚いて彼女は彼を見返すと、何かを諦めたように私の首を絞めていた手を離し、彼の胸に凭れかかった。 その瞬間、東の空でみたあの毒々しい雲が二人を包み込み、どこかへ運んで行ってしまった。



 それは一瞬の出来事。

 

 






 そしてまた真っ白い、なにも現ことのない空間に、私は一人佇んでいる。





 


前提として、3歳のころの晃陽の護人は力が弱いために姿が見えません。

なのでそのころを夢見た場合はまだ朝陽がでてきません。

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