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二連の宝珠  作者: れんじょう
冬柊の終焉
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暗黒の森 【4】

 結局ひめさまは、どうして衣裳を着替えて、瞳や髪の色を変えたのかを教えてくれなった。

 ひめさまのことだから何か考えがあるのだろうとは思うけれど、最悪、気まぐれかも?という思いがよぎる。


 自分の一人娘であるひめさまを、囮のために捜索隊に出した王さまの気持ちを考えると、ひめさまの行動は間違っていると思う。 けれど、もし自分なら親から囮として扱われたらどう行動にでるのだろう? そう考えると無限の思考に入ってしまう。

 

 同じ立場に立っていないからわからない。


 わたしは姫君ではなし、苦渋の決断としてとでも、親から見世物、もしくは囮になれと言われたわけでもないから、本当のところのひめさまの想いはわからないけれど。もし私なら逃げだしたくなる。 それをしないひめさまを誇りに思っている。けれど……。

 ああ、もう朝がくる。

 小屋から少し離れた樹にもたれかかり、寒さから逃れるように体に手をまわしていたなゆたは、白々と明ける空を見ていた。


 ふわっ


 温かい空気を着たような思ったら、日向が自分が着ていただろう羽織を肩にかけてくれた。


 「おはよう、なゆた。あまりよく眠れなかったようだな」


 「……おはよう。 羽織、ありがとう」


 「まだ寒い。 しばらくそれをはおっていればいい」


 「……うん」


 昔からこういった気遣いをしてくれる、やさしい日向。 近衛の衣裳もよく似合っていて、女官の間では人気があるんだよ? おかげでかなり女官からやっかまれていたけれど、幼馴染だというとみな、わたしに取り入ろうとしてたっけ。

 思い出し笑いしていたら、


 「どうした? 何がおかしい?」


 ふふふ、内緒ね、内緒。 日向の鼻が高くなるから教えない。

 笑い顔を見られたくなくて下を向いたら、……うわっ、日向に抱きしめられた!


 「この方が、二人とも温かいだろう?」


 ええええっと!

 それはそうなんですけれども!

 どうしていきなり抱きしめられるんでしょうか、私!


 かーっと赤くなる頬がわかる。耳の奥が自分の鼓動でじんじんする。それよりもなにより、耳に当たる日向の心臓のどくどくという激しい音が、わたしの思考を奪っていく。うわーっ。


 「ほら、温かいだろう?」


 「そろそろひめさまが、おきなさるよ」


 え?!

 ちょっとこわごわ、声のする方向をみると、そこにはひちりきさんが訳知り顔で立っていた。


 きゃああああ! 恥ずかしい!

 思わず日向の胸を力いっぱい両手で押したら、その手を日向がつかんでまた抱かれた。

 やめてーっ!

 そう思ってあがいてみても、日向の腕の力が強くてほどけない。 日向は恥ずかしくないの?!

 

 「ふおっ。 若いもんは、元気でいいのお」


 そういって小屋にゆっくりと戻っていくひちりきさんをみていたら、日向の腕がさらにぎゅってなった。

 痛いです。もうちょっと、力を緩めてほしいです。

 上目遣いで日向をみても、頭をわたしの額につけてさらに密着度、上がりました……。


 「俺の……。」


 はいっ?! 今、何をいいました?

 聞き間違え、だよね? だいたいわたしは日向のものではないし。


 「ひっひゅうが! ほら、ひめさまが起きるって! お支度てつだわなきゃ!」


 じたばたと慌てるわたしがおもしろかったのか、くすと笑って日向が腕をほどいてくれた。 

 あれ? なんだろう。 さみしいな。


 「羽織、ありがとう」 


 「これくらいなんともない。 ……まあ役得だったし」


 「ん?」


 最後のほうは聞こえなかったけれど、とりあえずひめさまが起きだす前に御前にいかなくちゃ!

 

 小屋に駆けだす私を、日向がじっとみていた。



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