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二連の宝珠  作者: れんじょう
冬柊の終焉
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暗闇の森 【3】

 「ひめさま?! そのお姿は……!」


 あの綺麗な綺麗な淡黄色(たんこういろ)の御髪と、藍白よりも白藍に近い瞳のやさしい色が、漆黒の髪と黒曜石の瞳に変わっていた。


 「これでどこにでもいる町人の娘に見えるでしょう?」


 「それ……鬘、ではないですよね?」


 お茶屋さんにいた時は、確かに鬘をかぶっていたはず。 けれど瞳の色は変わることなく白藍で。だから瞳を誰にも見られない様に気をつけていたのに。


 「そうね。鬘ではないわよ? ひちりきに頼んで、染粉を作ってもらったから。 瞳の色も点眼で染められるの。 これでわたしだってわからないわよね?」


 確かにその姿ではわからない人のほうが多いと思う。 特別な色がひめさまを区別させているのであって、絵姿が出回っているわけでもないので、髪や瞳の色が黒だったらそれは冬柊の人の平凡な色合いだし。

 ただ、ひめさまは、存在感というものがすごくて。 たとえ色が違っていても、普通の人とは違う何かがあるので、人目は引くと思う。 ……肌もまっ白でとてもきめが細かいから、それだけでも庶民ではないってばれますよ?


 「じゃあこれで全ての準備が整ったから、今日はひちりきにお世話になることにしたわ。明日の朝一番にここを出て東の森に向かうから、二人ともそのつもりで」


 「それはいったいどういうことですか?」

 「え?ひめさま。 闇があるほうが光を探しやすいって……」


 闇の中で光の主人を探したほうがいいって、ひめさまはそういったはず。それなのになぜその言葉と全く正反対のことをしようとしているの?

 それだったら、王さまの命通りに明朝会見の間に集まって、ほかの2組の捜索隊と一緒に出立してもよかったんじゃ……。


 「申し訳ございませんが、ご説明いただけますか? 当初の、右大臣からいただいた命tとはずいぶんとかけ離れ、これからどういう行程で旅をするのか、私にはわかりかねます。 このままではひめさまをお守りするのに支障が出てしまいます」


 「そうですよ、ひめさま! ただでさえ、見つかるかどうかわからない光の主人を探すのにあちこち行かないといけないだろうし、ひめさまにはほかの捜索隊と違うお役目があるのに、ひめさまがそのようにされていると、わたしや日向がどうしていいかわかりません!」


 「……ふたりとも、忠義ですわね」


 「「当たり前です!」」


 「じゃあ、単にわたしが羽を伸ばしたいだけだ、といえば納得するのかしら?」


  ぎしっ


 腰から下げていた刀の握りを、怒りで震える手で握りなおした日向がいた。


 うん。仕方がない。だってひめさまのおふざけに全く慣れていない日向だもの。そういう反応をするのは当たり前なんだけど。

 はーっ。

 わたしってばかなりひめさま慣れしたというかなんていうか?

 これが冗談だってわかってしまう。

 こういうことをしてるから、ひめさま付きの女官がつぎつぎに辞めていったんだけどなあ。

 

 「どういうことですか、ひめさま! 王さまの命をお受けになられたではありませんか!」


 「……冗談よ?」


 あー、やっぱり。

 思わず頭を上に向けてしまった。


 「ひめさま、その冗談とも取れない冗談をやめてもらえませんか? これからしばらくずっと三人で行動するのに、味方に敵を作ってどうするんですか?」


 「あっ、そうね。 でもこのくらいの冗談、ついてきて?」


 日向はひめさまの性格に毒気を抜かれたようで、固まってしまった。

 そしてゆっくりと頭を私のほうに寄せ、


 「お前、よくついていけるな?」


 がっくりと肩を落とした日向なのでした。




 大丈夫なんだろうか、この先。


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