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二連の宝珠  作者: れんじょう
冬柊の終焉
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暗闇の森 【1】

 「都を離れたはいいんですけど、どちらに向かっています?」


 城の外にでたことのない、と言われているひめさまなのに、日が落ちて暗くなった道をすたすたと向かうべき場所に向かって迷うことなく歩いていく。

 

 「ふふ。ついてからのお楽しみ?」


 そういって両手を広げて深呼吸したひめさまは、城の中にいるときのひめさまとは全く別人。 なんていうか、硬苦しさがなくなったような? すごく砕けた感じがした。

 使命、ありますよ?

 そんなノリでいいんでしょうか?

 むむっと考え込んでいたら、日向が近寄ってきて、声を潜めていってきた。


 「なゆた。ひめさまはいつもあのような感じなのか?」


 「んーっ。いつも、とはちょっと違うような……。」


 言い淀んでいると、日向は日向で勝手に納得してるようで、


 「やはり、今回の命がひめさまの精神的負担になっているからではないだろうか」


 ああ、なるほど。

 そう考えるなら、ひめさまの態度がずっとおかしいのが理解できるような気がする。

 王さまや王妃さまにすごく他人行儀だったとか、ひめさまは市井に出られたことがあまりないはずなのに言葉遣いが市井なみに砕けてきていることとか?


 「全然、大丈夫よ?」


 こっそり話していたはずなのに、先を歩くひめさまには聞こえていたみたい。

 ……もしかして、ひめさまって地獄耳?


 「お父様にも話したけれど、ほら、わたしっ正に「光の主人」色でしょう? だから幼いころから色々とよけいなことを教えてくれる人たちがいるわけ。『光の主人が産まれたら、時期を同じくして闇の主人が産まれるけれど、光の主人の色を纏っておきながら護人がいないひめさまのおかげで闇の護人もいなくて助かりますわ。けれど光の護人がいないこの世には暗雲がかかったままですわね。 ひめさまがちゃんとその色の通りに光の護人とともに産まれてくださればこの世に光も射すものを。』とか『できそこないの色なしひめ』とか? それはそれは親切心満載でわざわざ進言いただくわけ。」


 うっわー……。

 城の人間の裏を今見たような気がします。

 ひめさまは現国王の一の姫だけれど皇太子ではないから、そういった揶揄なんてないと思っていたけれど、やはり女の園。 いたぶる対象があればそれが一の姫でもいたぶるんだ……。恐ろしい。

 

 「自分の立場なんて子供のころから分かっていたし、だから準備は怠らなかったからある意味ありがたかったわよ?」


 ありがたいというか、迷惑だというか。 どちらかといえば悲しいお話なんですけど。


 「いちいちその迷惑に反応していると疲れるでしょ? だからさも無害ですという顔をして自分に有益なことをより分けて聞いていたわけ。 わたしが城と今と違うというのであれば、今は無害な顔をつくる必要がないから。 それにこれからどのくらいかかるか分からない旅を共にするなゆたや日向には、このわたしに慣れてもらわないと困るし? まあ、こんなことを事細かにいうのは面倒くさいから今だけ、ね」


 ひめさま、凄すぎです。

 さらっと言っている言葉だけど、それって小さなころから自分を殺して周りから「無害な姫」として立場をつくって、そして情報を集めていたってことですよね?

 わたしがひめさま付きの女官になるまで、なかなか女官が続かなかったと母上さまから聞いていたけれど、……もしかしてひめさま?

 

 「なゆたは、本当に慧いわね。 今までの女官はみな、辞めるように仕向けたの。 もし今回の命が下った場合に、役に立ちそうにない娘ばかりで。 ほんと、貴族の娘って噂話しかしらないんだから!」


 その時のことを思い出したようで、ひめさまの声にいらぬ熱が! そして握られている手がふるふると震えだしている!

 前の女官が辞める時に引き継ぎでひと月ほど一緒に行動させてもらったけれど、たしかにものすごく噂好きで閉口しまくりで。早くひと月たたないかと指折り数えてしまったくらいだったし。 「平民の分際で一の姫付きの女官だなんて!」と散々言われたけれど、平民のわたしに一分一秒でも早く職を譲りたいと顔に書いていたのを見逃しはしませんでしたけど。

 ひめさまも早く辞めさせたかったらしいけれど、前の女官のほうもそうとう早く辞めたったみたい。

 一体彼女に何をしたんですか?!

 ……なんて聞かないほうがいいこともあるよね!


 「あら残念。 もう着いてしまったわ?」


 そういってひめさまの指した先には、 煌々と明かりがついた一軒の古びた小屋があった。


日向さんったらほぼ影の存在状態になっていますね。

彼の活躍する場はあるのか??

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