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かの地に二人が種をまく理由

——ここは辺境の開拓地“かの地”。


ザッ、ザッ、ザッ……

一心不乱に畑を耕す1人の青年。そこへ大量の水を運んで来る1人の少女。


「——おぉ~い、アディ~。お水汲んできたわよ~♪」

少女の後ろを巨大な水の球がぷかぷかと浮かんでついてくる。


「サンキュー、フロウ。んじゃあ、一通り耕し終わったことだし。種まき、行っちゃいますか~」

そう言って青年が小型の機械を操作すると……。

——キュン、キュン、キュン……ズ、ズ、ズ……ズダダダダダダダッー!

その小型の機械が勢いよく畑を駆け出す。


そしてキレイな直線を描きながら、等間隔に種を蒔いていく。

ズダダダダダダッー!

「よしよし、スーパー種まき君も絶好調。……んじゃあフロウ、種を蒔いたトコから水をヨロシク~♪」


「ちょっと、そのクソダサネーミングはどうにかなんないのぉ~。まぁ、チャチャッと水をまいちゃいますか!……水よ、散って」

バシャシャシャシャシャー

少女がそう言うと、まるで両手で水を操っているかのように、手の動きに合わせて空中の水が細かく散って、畑にまかれて行く。


「よしよし、これで上手く育ってくれよ~。それっ!」

バシャーンッ!

青年が更に畑に緑色した何かの薬剤のような液体を蒔いていく。

「ちょっ、アディ、何よそれ!そんな変な液体まいて、作物は大丈夫なの!?」

「大丈夫、大丈夫。オレが独自に配合した成長促進薬。名付けて“スグに伸び~る君一号”だからさ♪」


——ここは“かの地”と呼ばれる辺境の開拓地。

畑を耕していたこの青年の名は、灰解の呼声・《アディクト・アッシュ》。

水を汲んできた少女の名は、儚隠の青滴・《ペトリコール・フロウ》

シェード・ガントフォースの八輝星である。


この二人がなぜこの辺境で開拓をしているのか。

それは一ヶ月ほど前に遡る。


*****


「おぉ~い、アッシュ居るか~」

その男、胸に太陽の文様を付けた真っ白い戦闘服に2本の赤いスカーフ。

ガントフォースの大隊長であり、オリジン四戒のリーダー。

暁の幻日、インサニティ・サニーである。


「はぁ~い、何か用っすか~」

気の抜けた返事を返すアッシュ。

「あぁ、オマエに特命がある。ちょっと作戦会議室に来い」

「えっ!?特命っすかぁ~?な~んか嫌な予感がするんですが……」

「つべこべ言ってねーで付いてこい!」

アッシュは、半ば無理やり連行されて行く。


付いた所は作戦会議室。そこには他のオリジン四戒、更に最高責任者のミテラケフィとローデリング、そしてサルモネラ博士と一緒に数名の八輝星がアッシュを待っていた。


「おいおいおい、勢揃いじゃね—かよ……。で、インサニティ隊長、俺なんかに何のようですか?」

ビクビクしながら要件を問うアッシュに向かい、ミテラケフィが一歩前に出て話し出す。

「あらあら、まぁまぁ、そんなに怖がらなくても良いのですよ。……コレッ、サニー!ちゃんと説明もせずに連れてきたのですか?」

「えっ、あぁ、なんつーか、来りゃ分かんだろってよ」


「まったくアナタは。そんなだから皆に怖がられるのですよ。それに何ですか、その言葉遣いは……」

「はいはい、おしまいおしまい。アッシュ君が混乱してるだろ。すまないね、アッシュ君」

サニーを叱責した人物こそ、オリジン四戒たちの実の母ミテラケフィ。

そしてサニーを庇った人物こそ、オリジン四戒たちの実の父ローデリングであった。


「あの~。ところで、なんで私は呼ばれたんでしょうか……」

「それは私から説明しましょう」

そう言って一歩前に出たのはオリジン四戒の参謀役、綻びの贖罪、マキナ・クラウベル。

「ちょっと、こんなひ弱そうな殿方で、本当に務まるのでしょうか。いささか心配でございましてよ」

そう言って横から悪態をつくのはオリジン四戒のトラブルメーカー、七色しちしょくの贄、ロッテン・みかん。

「ほらほら、みーちゃん。ダメよ、お話の邪魔をしたら。ごめんなさいね、アッシュさん。過酷なお仕事になると思いますが、陰ながら応援しております」

悪態をつくみかんの頭をポンと叩き、アッシュに微笑みかける人物。

それはオリジン四戒の良心であり、そしてガントフォースの最大戦力。皆から“姫”と呼ばれ慕われる、慈悲なる智慧、ソフィア・OP・スレイであった。


「でへへ~、姫にそう言われちゃ何だって聞いちゃいますよ~♪」

ソフィアの顔を見た途端、さっきまでのオドオドした態度から一変、デレデレしまくるアッシュ。


「……では、話は私からしますので。ソフィアはみかんを連れて行って下さい」

「あぁ~、姫~」

「では、ごきげん麗しゅう。ひ弱な殿方」

「ではアッシュさん、失礼しますね」

そう言ってみかんを小脇に抱え、退室するソフィア。


「では率直に言います。アッシュ、アナタには辺境の地へ赴き、そこを開拓して頂きます」

「はぁ~!?開拓ぅ~?……って事は、土地を切り開いたり、家を立てたり、そ~言うことっすか~?」

「あぁ、そう言うことになりますね。まぁ、1人で行けとは言いません。八輝星をもう1人付けます。なので、二人で開拓して頂きます」

「まっ、そー言うことだ。分かったか、アッシュ?頑張って、行ってこい!」

半ば無理やり押し付けられた感のある特命を言い渡され、唖然とするアッシュ。


「と、ところで、もう1人の八輝星とは……どちら様で?」

「あぁ、そうだったな。ペトリコール・フロウ、来ているな」

「はい、インサニティ隊長。隠密部隊、二番隊中隊長。ペトリコール・フロウ、招集に従い参じました」

サニーに呼ばれ前に出た少女こそ、フロウでした。

「おぉ、来たな。みかんから話は行ってると思うが……」

「はい、これからみかん達と一緒に辺境の湖畔へ水遊び……水質調査に行くって話ですよね?」

みかんから事前に話は聞いては居たようだが、どうやら何か勘違いして伝わっている様子のフロウ。


「……まったく、みかんのヤツは……。いや、フロウにはこれから辺境に向かい、そこを開拓してもらう」

「はぁ~!?開拓ですか~?みかんが言ってた事と全然違うじゃないですか。……まぁ、行けと言われたら行きますけど……」

大隊長の命令なので逆らえないからなのか、案外と聞き分けの良いフロウ。


「二人とも、聞いてちょうだい。この特命には写世の命運が掛かっているのです。龍への対抗手段が万全な今こそ、第二の安住の地が必要と判断したのです」

「なぁに、補給物資は定期的に運ばせるから、心配しないで欲しい。それに、何かあったらスグにオリジンを向かわせるから、安心してくれ」

ミテラケフィとローデリング、この二人からのお願いと有っては、断るどころか、任命され任されたことへの嬉しさのほうが勝るアッシュとフロウであった。


「はいっ!アッシュと共に必ずやり遂げてみせます!」

「あっ、ズルいぞフロウ。自分ばっか良いカッコして。まぁ、お二人からの頼みとあらば、良い結果を出してみせますよ!」


こうして二人は辺境の開拓地“かの地”へと赴く事となったのでした。


*****


「フロウ、荷物は大丈夫か?積み忘れとか無いか?」

「OK、大丈夫よアディ。しっかし、アンタとも腐れ縁よね~」

「あぁ、まぁ、相方がフロウで良かったよ。先生とかじゃなくってよ~」


準備をする二人にサルモネラ博士が選別を持ってやってきた。

「アッシュ、それにフロウ。コレを持って行け。それとコレも。あと第五世代ネクストも何人か連れて行け。承認コードの権限は二人に移しといたからの。きっと役に立つじゃろう」


「博士……ありがとうございます!」

「いっつもアリガトね、じーちゃん♪」

「これっアッシュ!じーちゃんは余計じゃ!」


移動用車両の方舟に乗り込み、お供を引き連れ、かの地へと旅立つアッシュとフロウ。

二人の開拓日誌が始まるのでした。


*****


「おぉ~い、フロウ。水撒き終わったか~?」

「ちゃ~んと終わったよ~。……わぁ~、アディ、見て見て~。キレイな虹~♪」


—to the Next Story—

皆さん、コンニチワ。

ポーランド埼玉です。


本編「その名に宿るは移ろう陰か」の外伝作品、ついに脱稿しました~。

本編とはまた違って、ゆる~く、のんびりとした展開でやっていく予定です。

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