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【番外編】アルマの旅行日記

 今日から五人で素材採集の旅に出る。


 予定は一週間だけど、絶対に予定通りには行かないと思う。


 何故なら、それが魔導具研究所だから。



 【一日目】


 ユウイチ所長が用意した移動手段で、出発前から大騒ぎになった。


 一筋縄ではいかない旅だと覚悟はしていたけど、まさか出発前からだとは思わなかった。


 私達はユウイチ所長が雰囲気で名付けたトラック風馬車を見て驚き、そのトラック風馬車を魔導具である乗馬シミュレータが引くと聞いて再び驚いた。


 そして、旅に同行するお礼だとユウイチ所長から武器をもらった。


 リリア様は片側だけに刃が付いた珍しい見た目の剣。


 ミレイ様は見た目が変わっているクロスボウと言う名の弓。


 私には見た目が子供用の槍。


 そして、リーネ様には見た目が普通の双剣。


 でも、見た目に関わらずどの武器にも魔法が付与されていた。


 私の子供用の槍には伸縮性が付与されていて、魔力を流すと伸び縮みするようになっていた。


 私は槍に思い入れがある。


 それは、未だ小さかった私にお父様が丁寧に槍の基本を教えてくれたから。


 それが、私が覚えているお父様とのたった一つの思い出。


 普通の槍では魔獣との戦闘に自信が持てないけど、この槍を使いこなせれば魔獣とも戦えるかもしれないと思った。


 馬車の座席の配置が普通でないのは「リクライニングシートを採用したためだ」とユウイチ所長が言っていた。


 ただ、眠りを誘うリクライニングシートは危険だと知った。


 リリア様に起こされた時に私達は寝ていないと言い張ったが、訓練場で確認したら二人とも熟睡していたと白状した。


 勿論、私も熟睡していた。


 一日目の目的地であるホークワイド邸には、ARゲームのアップデートのために立ち寄った。


 ユウイチ所長とリリア様がアップデートをしている間に訓練場を借りて槍の使い方を考えてみた。


 リーネさんとミレイ様も色々と考えているみたいで私も負けていられない。


 いつもより長い間合いを取っても、槍を伸ばせば届く。


 でも、伸ばし過ぎると身体から重心が離れて重くなる。


 適切な距離を掴むために木に向かって何度も槍を伸ばしてみた。


 槍が深く刺さると抜けなくるので、穂先まで歩いて行くのが面倒だった。


 その時に縮まっていく槍に掴まって一緒に移動する方法を思い付いた。


 リーネさん達に見られたら恥ずかしので影になる場所でこっそりと練習した。


 コツは槍を木に強く押し当てから縮めることだと分かった。


 そうすれば槍は木から抜けずに、私は槍と一緒に移動できる。


 今は何の役に立つかは分からないけど、きっと役に立つ時がくるはず。


 私達が訓練場でいる間にアップデートしていたはずのユウイチさん達が賊を撃退して戻ってきた。


 グルグル巻きにされた三人組が荷台に転がっているのを見て驚いた。


 やはり、この旅は一筋縄ではいかないようだ。



 【二日目】


 今日は、魔物の森に詳しそうだと言う理由で私が助手席に座った。


 ユウイチ所長が言うには"ナビ役"だそうです。


 森林道に入ると偵察用ドローンを飛ばして魔獣の襲撃を警戒した。


 ユウイチ所長からは気楽にと言われたが自然と力が入る。


 私がモニター画面で見つけた人影らしきものはゴブリンだった。


 ミレイ様の言葉を聞いたユウイチ所長がゴブリンの数は「三十匹なのか、三十一匹なのか?」と悩んでいたけど、今はそんな場合じゃないと思った。


 私達はゴブリンとの戦闘を決めた。


 そして、背後からの急襲に備えて馬車を背にして戦った。


 でも、ゴブリンの仕掛けた分断作戦で、ミレイ様が孤立して大ピンチになってしまった。


 その時に、私の身体が無意識に動いて気が付いたらミレイ様を囲むゴブリンの中に飛び込んでいた。


 昨日、練習していた槍での移動が思わぬ形で役に立った。


 後でユウイチ所長から「アルマワープだ」と言われたけど"ワープ"の意味がよく分からなかった。


 でも、ミレイ様のピンチを救った私を皆が誉めてくれた。


 これで、魔獣との戦闘に少しは自信が持てる様になった。


 それから、リーネさんのお嬢様パワーを皆で実感した後に直ぐに夜営地を決めた。


 ユウイチ所長が「テントを用意していない」と言って、私達から集中砲火を浴びた。


 でも、馬車のリクライニングシートがあっと言う間にベッドになった。


 夜営とは思えない豪華な食事とスイーツで満腹になった。


 見張りはドローンがしてくれるらしいので、女性陣だけで馬車の中で雑魚寝をした。


 ユウイチ所長の「リリア君は何処でも直ぐに寝られるよな?」と言う言葉通りに、リリア様だけがスヤスヤと眠っていた。


 私とリーネさんとミレイ様はゴブリン戦の余韻もあって寝付けずに遅くまでお喋りをしていた。


 何を話したかは日記には書かないでおく。


 それと、リリア様のリュックにドラゴンの縫いぐるみが入っているのが見えた。


 これは、いつかリリア様と交渉することになったときの切り札に使えると思った。



 【三日目】


 私とリーネさんとミレイ様は、再びリリア様に起こされた。


 眠い目を擦って馬車から降りると、ユウイチ所長が朝食の準備を終わらせていた。


 他の三人は黙って身体を解していたけど、今朝は正直に朝寝坊を自己申告した。


 ユウイチ所長が「今日は魔の三日目だな」と言っていたけど何の事なのか分からなかった。


 そもそも、ここは魔物の森なのです。


 私が運転席に座ると志願したら、何故かリーネさんが助手席に座ることになった。


 ユウイチ所長が「リーネ君は路上教習の教官役だ」と言った意味がよく分からなかった。


 この旅でのユウイチ所長の言葉は、意味が分からないことが多い気がする。


 魔物の森に入って、薬草を見に行ったユウイチさん達が洞窟を発見して戻ってきた。


 もし、スイーツが無ければ、探索したい派と探索しない派で議論は紛糾していたはずだ。


 中の様子が分からない洞窟の探索ほど危険なものはないと私達は反対した。


 でも、あれやこれやと話しているうちに、何故か私は探索する派になっていた。


 これはスイーツの魔力に負けたわけではない。


 そして、あのパワードスーツを着用することになった。


 色違いで四着用意されていたけど、サイズ的にみると色は予め決められていたようだ。


 リーネさんとミレイ様が「何で私達のサイズを知っているの?」と訝しんでいたけど、「大まかなサイズで用意しただけだと」とユウイチ所長は釈明していた。


 吸湿性発熱シャツと同じ様に伸縮性のある素材を使ったようだけど、真相は闇の中です。


 ここはユウイチ所長の釈明を信じておきましょう。


 でも、私達がパワードスーツを着て馬車から降りると、ユウイチ所長がガッカリとした顔をしていました。


 私達に着心地を褒めてもらえると期待していたのかもしれません。


 洞窟に入るとドローンを従えた私が先頭で進みました。


 危険を察知できるように気を張っていたら、後ろでリリア様がピョンピョンと飛び跳ねていました。


 リリア様はブーツに付与した風魔法の魔力操作が上手くいかなかったようでしたが、リーネさんとミレイ様は上手く使えていました。


 斯く言う私も魔力操作は不慣れですが、いざとなれば私には"アルマワープ"があります。


 暫く進むと猛毒を発するウムドレビの果実を発見しました。


 幸い、パワードスーツのヘルメットには防毒の魔法陣が付与されているので皆で採集しました。


「決してご都合主義者ではない」とユウイチ所長が言っていましたが、誰に向けた発言なのか分かりかねます。


 例え安全だと分かっていても、持って歩きたくない私達はユウイチ所長のリュックに全て詰めておきました。


 ユウイチ所長もパワードスーツを着用しているので重くはないはずです。


 そして、この旅で最大のアクシデントが発生しました。


 なんと、洞窟の奥にはアースドラゴンが潜んでいたのです。


 皆、ドラゴンを見るのは初めてで暫く沈黙していました。


 これは、ゴブリン三十一匹など比較にならない特A級を超える危険度です。


 私は即時撤退派でしたが、いつの間にかアースドラゴンを討伐することに決定していました。


 ブーツの風魔法で入口に戻り、トラック風馬車で逆戻りしました。


 そして、ホールに着いて作戦会議を開いて役割分担を決めてから戦闘を開始しました。


 アースドラゴンがサンドブレスを放った時は生きた心地がしませんでしたが、アースドラゴンはウムドレビの果実でかなり弱っているようでした。


 私達は左脚に集中砲火を浴びせ、リリア様の疾風迅雷でトドメを刺しました。


 私の槍もトドメの一撃に一役買いました。


 でも、こんな「避雷針作戦」を思い付くユウイチ所長の思考は謎です。


 この日は、戦闘の疲労を考慮して洞窟の中で一夜を明かすことになりました。


 アースドラゴンが息を吹き返す可能性もありましたが、何かあれば偵察用ドローンが知らせてくる安心感で四人ともぐっすりと眠れました。


 

 【四日目】


 朝、起きてからアースドラゴンをどうやって荷台に積み込むか頭を悩ませました。


 荷台の幌を外して乗馬シミュレータと私達で頑張って引っ張り上げました。


 再び幌を付けたのですが、荷台に収まりきらなかった頭が剥き出しの状態で座席の屋根の上にあります。


 この見た目の違和感は、とても拭えません。


 でも、「取り敢えずこれで」とユウイチ所長は出発を決定しました。


 アースドラゴンが傷まない様に空調服を括り付ける提案をしたら「アルマ様は所長さんに毒されているかも?」とミレイ様に心配されました。


 洞窟の中程でユウイチ所長が、「洞窟の中とリニアのトンネルは同じだな」と呟いていました。


 "リニアノトンネル"とは、恐らく私が知らない魔獣か魔木のことなのでしょう。


 洞窟を出てからホークワイド領までの道中に何台かの馬車とすれ違いましたが、どの馬車も端に寄って止まっていました。


 馬車の窓のカーテンが引かれていたのは、恐らく見なかったことにしたかったのでしょう。


 さすがにホークワイド領の門番は見て見ぬふりはできず、納得できるまで何度もドローンの映像を観ていました。


 門番から通行の許可をもらってホークワイド邸に着いたのは夜遅くでした。


 夜遅くにも関わらず出迎えてくれたホークワイド卿は映像を観て直ぐに察してくれたものの、屋根の上のドラゴンの頭には笑いが止まらないようでした。


 でも、ドローンの映像を観たいと集まってきた従者の皆さんからサインと握手を求められるとは思いませんでした。



 【五日目】


 今朝もホークワイド卿は笑いを堪えきれずにいます。


 ユウイチ所長とホークワイド卿の会話から、次回のARゲームのアップデートではアースドラゴンが追加されることは間違いないようです。


 もしかしたら、パワードスーツや私達の武器も追加されることになるかもしれません。


 出来ることなら、緑色だけは止めておいて欲しいものです。


 私は王都に帰って起こりうる事態の対策を頭の中で考えていました。


 でも、心の声はしっかり漏れていたようです。


「封印は仕方がないとして、滅却は勘弁して欲しいな」とユウイチ所長がぼやいていました。


 王都の北門に人集りができていたので、国外の要人の訪問でもあったのだろうと思っていたら、私達見たさの野次馬だと判明しました。


 ホークワイド卿は夜中のうちに騎士団を使い早馬を飛ばして王城にアースドラゴン討伐の一報を入れたようです。


 どうやら、ホークワイド卿は笑ってばかりいたのではなかったようです。


 王城の計らいで北門は素通りできましたが、その先で王城騎士団が待ち構えていました。


 この、王城騎士団は恐らく王城への先導役です。


 パワードスーツ姿で王城へは行きたくないと私達が騒いでいると、ユウイチ所長がウムドレビの果実を積んでいるからと王城行きを断ってくれました。


 これは、この旅でユウイチ所長が行った一番の働きだと皆で褒め称えました。


 それから、私達は群衆の見守る中を王族のパレードさながらに研究所へ迎いました。


 王族は、毎年のようにこのような恥ずかしい思いをしてるのだと感心しました。


 そして、私達は何とか研究所に到着しました。


 リリア様以外はどっと疲れが出たようで、その場で解散となりました。


 素材採集の旅は暫く遠慮したいですが、五人で話しているうちにまた行くことになるかもしれません。


 何故なら、それが魔導具研究所だから。


 最後に、忘れないうちな地下室の"封印の箱"にパワードスーツを入れておかなければなりません!


 

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