表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/55

【番外編】魔導具研究所・発明日誌

 ユウイチの発明には研究開発段階でお蔵入りとなった物が多い。


 いくら前世の知識と創造と付与のスキルがあると言っても、発明品は簡単には生まれないのである。


 今日は、そんな没ネタになった二つの魔導具のお話しである。


 但し、没ネタになってしまったのは話のオチを考えつかなかった作者のせいではない。



【ファイル①:魔導ボードゲーム】


「うーん、こちらの世界には庶民の子供達が楽しめるような娯楽が足りないよな」


 キューブ型のパズルゲームをクルクルと回しながらユウイチは独り言ちている。


 だが、下手に娯楽を提供してしまうと、社会に悪い影響を与えてしまうかもしれない。


 前世ではテービゲームが発売されてから子供達が外で遊ばなくなった。


 それから携帯型のゲームの時代になると、禁止されているにも関わらずに学校に持っていく子供もいたぐらいだ。


 だから、発明品がこちらの世界に与える影響を十分に考慮しなければならない。


 だが、簡単な割に考える力が付きそうな娯楽なら試してみても良いかもしれないとユウイチは紙にペンでマス目を引いてみた。


 縦横に三列づつのマス目に"○と×"を書いて遊ぶ例のアレである。


「うーん、もう少し複雑な遊びにしたいな」


 ユウイチはマス目を縦横八列づつにして、厚紙で白と黒が裏表になった円盤を作る。


「うーん、リバーシーは異世界転生物ではド定番だからな」


 簡単な物ほど他と被ることはありがちな話である。


 ユウイチはマス目の数を縦横九列づつにして、駒型に紙を切って各々に名前を書いてみる。


「やっぱり文字だけの駒だと味気ないな」


 前世の日本人にはお馴染みだが、全体的に西洋チックな王都には少しそぐわないかもしれない。


「あっ、そうだ!」


 ユウイチは角材と小刀を引っ張り出して何やら彫り始めた。


「これで、駒の役割が分かり易くなったぞ」


 素人が彫った荒削りな物だが、一先ず駒毎の違いが分かる。


 前世の将棋の親戚と言ってもいいチェスをヒントにユウイチは立体的な駒を作ってみたのである。


 前世のチェスのルールなどユウイチは知らないので、独自に考えた駒にしてみた。


 先ずは「団長」と「参謀」が一駒づつ。


 それから「隊長」と「騎馬」を二駒づつ。


 最後に「弓隊」と「魔法隊」と「歩兵」が各三駒づつで合計で十五の駒を用意した。


 色はオーソドックスに黒と白にして、特に理由はないがマス目は将棋盤より一列多い百マスにしてみた。


「さて、将棋を参考に駒の動き方にルールを設けよう」


 団長は全方位に一マスづつ。

 参謀は縦横斜めに一マスづつ。

 隊長は前後と横に二マスづつ。

 歩兵は前と横に一マスづつ。

 騎馬は前に三マス分を自由に動ける。

 弓隊と魔法隊は前後と横に一マスだが、二マス先までの駒を取ることできる。


 基本は二人一組での対戦だが、盤を繋ぎ合わせれば四人まで対戦可能にしてみたが、如何せん対戦相手がいない。


「うーん、一人で練習できるようにしてみるか……」


 ユウイチは魔法陣を付与した駒が戦況を見て自動で動く機能を付けてみた。


 取り敢えず"イージー""ノーマル""ハード"の三段階のレベルを設定しておく。


「魔法で駒が動くなら、盤にも魔法陣を付与して地形効果を付けてみるか……」


 マス目に川や丘などの地形を設定して、各々の駒が地形から有利不利を受ける様にしてみた。


「それと、魔法隊を火・水・風・土の属性から選択できる様にしてみよう」


 各々に前世の"じゃんけん"のように得手不得手の駒がある設定にしておく。


 これで対戦者毎に戦力差がで、戦略性が増すはずである。


「そうだ、取った駒は捕虜にして相手が応じれば交換できるようにしよう」


 将棋の様に取った駒をそのまま使えるのではなく、独自性を出して捕虜同士を交換した後に再び使える様にする。


 この様にユウイチは次々に思い付きを実行してみた。


「待てよ、ルールが複雑になり過ぎたな。

 ビギナーにも分りやすいように操作ナビ的な機能を付けておくか」


 これは駒を盤上から離すと進めるマス目などを音声で教えてくれる有難い機能である。


 それから手でマス目に触れると地形効果を教えてくれる様にもしておいた。 


「将棋の棋譜の様に指し手を記憶させる機能を付ければ後で対戦を反省できるようになるな」


 そう、何事も反省は必要である。


 だから、分りやすい様に音声に合わせて駒が動きマス目が光る様にしてみた。


「よし、一度やってみよう」


 ユウイチは自動対戦モードの"イージー"でプレイしてみる。


「うーん、余り面白くないな」


 将棋の様に重なり合ったら駒を取るルールでは機動力のある騎馬が圧倒的に有利であった。


「よし、駒にパラメーターを割り振れる様にしよう」


 各陣営の総ポイントは同じにして各々の駒に攻撃力と守備力を任意で割り振れば駒毎に差が出る。


 攻めた側の駒の攻撃力と攻められた側の駒の守備力の大きさで勝敗を決める前世のカードバトルの様なシステムである。


 バトルの勝ち負けの判定は魔法陣を付与して自動で行える様にした。


 それから団長と隊長には統率力、参謀には知力のスキルを設定して、AからDの四段階を各駒に一つづつ割り振れる様にした。


 統率力をAにされそうな団長は後と横に一マスづつしか動けない様に制限をかけておく。


 自陣営のスキル持ちの駒が隣にいればパラメーターがアップする。


 一ターンで動かせる駒を二駒にする。


 ユウイチは思い付くままに更にルールを変更してみた。


「うわぁー、収集が付かなくなってきた……」


 前世の遊びが色々と混じり合ってしまったが、始めてしまったからには最後までやってみたい。


 やってみたいが今から対戦すると時間がかかってしまう。


「待てよ、盤を繋いで両陣営とも自動対戦モードにしたら勝手に対戦するはずだ」


 これで、ユウイチは駒の動きを見ているだけで済む。


 早速、繋いで自動対戦モードにして対戦開始である。


「あっ、こっちはハードでこっちはイージーになってしまった……」


 一からやり直すのも面倒なので、仕方なくそのまま続行する。


 始めは駒の動きにおかしなところはないかと真剣に見ていたが、だんだん睡魔が襲いかかってきた。


 暫くユウイチは"うとうと"していたが「ピッピッピー」と勝敗が決した音が鳴って目が覚めた。


「ん、どっちが勝ったんだ……」


 ユウイチは盤上に目をやるが、何故か両陣営の団長がいなくなっている。


 よくよく見てみるとイージーモードの団長が自軍で捕虜になってしまっている。


「ん、何かの誤作動か?」


 ユウイチは棋譜を見てみることにした。


「参謀と隊長で自軍の団長を討っただと……」


 知力スキルがAの参謀が、統率力がDの団長に対して、前世の戦国時代さながらの下克上を決めたようである。


 その後、参謀は敵陣に攻め込み相手の団長をも討っていた。


「色々と詰め込み過ぎてゲームバランスが崩壊しているな……」


 今からゲームバランスの調整をする時間も気力もないユウイチはチェス将棋擬きを諦めて、翌日にリバーシーを作ることにしたのであった。


 魔導ボードゲーム没理由:詰め込み過ぎて収集が付かなくなった。




【ファイル②:魔導体重計】


「それにしても貴族達は健康意識が低いよな」


 万歩計を"カチャカチャ"と振りながらユウイチが独り言ちている。


「万歩計も一時のブームで終わってしまったしなぁー」


 これは双六を付録で付けたおかげで、手で振ったりペットに付けたりして歩数を稼ぐこが目的になって失敗してしまったのである。


「もっと、簡単に健康を意識できるようにしたいな」


 ユウイチは前世の健康器具を頭の中に浮かべてみる。


「血圧計はできそうだけど、測ってどうするかが分からないよな」


 ユウイチには科学技術の知識はあるが、医学の知識は殆どない。


 血圧か高い低いぐらいは分かっても、それがどんな病気につながるのかまでは分からない。


「視力は健康とは言い難いよな」


 大小の"C"が並んだ視力検査票なら簡単に作れそうではあるが、1.0が何れぐらいの大きさにすれば良いかは分からない。


「うーん、何かないものか……」


 ユウイチは視力検査表から前世の保健室を思い出していた。


「あっ、アレがあるじゃないか!」


 ユウイチは"ピーン"と閃いた。


 まるで、体重計の針がピーンと数字を指す様に。


 ユウイチは転生者特典で自動変換されるため、前世の度量衡はこちらの世界でも同じ様に使える。


 先ず、10cm×10cm×10cm=1000㎤で1リットルの容器を作る。


 この容器に水を入れると1リットルで重さが1kgになる。


 この重さを基準にしてユウイチは、創造と付与のスキルを駆使して魔導体重計を作り上げた。


 測定限度は余裕を持って300kgとした。


「試しに計ってみるか?」


 ユウイチは魔導体重計に乗ってみた。


「ほう、65kgか」


 前世では運動不足と中年太りと暴飲暴食で75kgはあったのだが、転生の際に若返らせてもらったおかげで10kg分のダイエットができているようである。


 これで、身長が分かればBMI値が算出できる。


 ユウイチは身長計を作って計ってみた。


「172cmか」


 若い頃から身長は変わっていないので、ほぼほぼ正確である。


 体重÷身長÷身長×100でBMI値を算出すると21.9であった。


 確か、22前後が適正値なのでユウイチは適正体重ということになる。


「おぉー、良いじゃないか!」


 結果に満足したユウイチは、他の人にも試したくなった。


「おはようございます」


 そこへ、何も知らないリリアがグットタイミングで出勤してきた。


「リリアくん、自分のBMI値を知りたくないか?」


「ユウイチさん、そのBMI値って何ですか?」


 気が早ったユウイチの説明が全く足りていないため、リリアが怪訝そうに質問する。


「BMI値とは適正な体重かどうかを知る目安のようなものなんだよ」


「ユウイチさん、間に合ってます!!」


 眼光鋭く答えたリリアは、"プイッ"と横を向いて喋らなくなった。


「あははは……

 女性に魔導体重計を使ってもらうにはハードルが高い様な気がする」


 世界の壁を越えても女性に"体重"は禁句のようである。


 魔導体重計没理由:女性ウケが悪そうである。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ