入隊試験
葵がウイングを離れて翌日、ホテルで前泊をすました葵はヴァンダルの入隊試験に来ていた。試験内容は実技試験。カナリアによれば事前に筆記試験があったらしいがそれはウイングのほうで上手く胡麻化したらしかった。
「これより第八回ヴァンダル入隊試験実技編を開始します。試験者は順番に並んでください」
案内役の人の指示に従ってぞろぞろと人が移動する。ざっと見ただけで100人程度だろうか。カナリア曰く試験の突破率はおよそ三割。この中でも30人程度しか受からない地獄の試験だが、それでも突出した一芸さえあれば受かることも可能な完全に実力の身を評価する場でもある。
「これより実技編一次試験について説明します」
そうして一次試験の説明が始まった。
ルールは単純。フルマラソンと同等程度の距離で行われるレースで、参加者120名のうち半数の60名が踏破した時点で終了。持久力はもちろんのこと、上位の人間たちからすれば瞬発力も試されるものだ。
「純粋な身体能力なら負けないもんね」
葵はスタートラインに立つと、到底長距離走とは思えない構えをした。
「おいおい、あんた一体何のつもりだ?」
葵の隣に立っていた男がそう聞いた。それもそのはず、今から走るのがフルマラソン級だというのに葵は姿勢を低くしていたからだ。
「ゴール地点までは大体45km。メロフォージの力があればきっと……」
「メロフォー……?いったいなんだそりゃ??」
葵はそこまできてハッとした。ヴァンダルはアイギスの存在について十分に認知している。おそらくだがメロフォージの存在も把握しているだろう。つまりはメロフォージの存在を知られること自体がリスクなのである。
「まあ気にしないで大丈夫だから!!」
そう言いうと葵はスタートの音とともに全速力で駆け出した。周りに人の姿は見えない。それもそのはず、120人を12グループに分けて一斉にスタートしている。葵のいるグループでは葵がぶっちぎりだった。
「この調子だったら余裕でいける!!」
余裕が生まれた葵は少しでもバレるリスクを減らすために、スピードを落とす。一次試験の合格条件は上位50%。全員がエリートのこの試験といえども素の人間に負ける道理などありはしなかった。
「受験番号91番ゴールッ!!合格です!!」
ゴールテープを切るのと同時に、葵の受験番号を呼ぶ声が響く。葵は一切息を切らさずにその結果を残していた。
審判の元に行くと、そこには衝撃の内容が書かれていた。
「第…2位……?」
紙には濃く、はっきりと、第二位と書かれていた。そしてそのすぐ横には一位のタイムが記されていた。多少手を抜いていたとはいえ、20分近くも差が出たことに葵は驚きを隠せないでいた。
だがそれと同時に、少しだけ葵は心躍るような感覚を抱くのだった……。




