ヴァンダル壊滅計画
「私と一緒に、ヴァンダルを滅ぼさない?」
葵のその言葉に緊張が走る。三人の間に長い沈黙が流れる。時間にして数秒、だが葵には何分にも何時間にも感じた。
「はっははっ!お前おとなしそうなやつだと思っていたけど随分面白いこと言うじゃねぇか!!」
沈黙を破ったのはライアだった。もう少し驚いたり、反抗したりするものかと思っていたが、どうやら案外簡単そうだった。
「メフィーはどう?協力してくれる??」
その問いにメフィーはそっと瞳を閉じて手を空に向かって翳す。そしてしばらくたってから口を開いた。
「星の声は破壊者に抗えと言っている……だったら俺も協力させてもらおう」
「やった、ありがとう二人とも!!これからしばらくよろしくね!」
「あぁ、頼むぜ。だが足だけは引っ張るんじゃねぇぞ」
葵にとってはかなりの賭けな作戦だったが、無事に成功したことで心強い仲間を手にすることができた。この二人の実力が如何ほどかは不明瞭だが、少なくともあの入隊試験を突破した数少ないエリート。
変わり者で扱いづらい性格ではあるが、対等な仲間としてみている葵にとってそれはむしろ有利な点だった。
「あたしも前々から思ってはいたぜ?胡散臭すぎるってんだ。どうせここに来た理由も暇つぶしだしな。それならここを壊す方がおもしろそうだ」
「ライアちゃんって、なんだか変わってるけど芯がしっかりしてていいよね。私なんかいつになっても……」
「そうか?確かにあたしはそういうとこもあるかもしれないが……でも暇だからでこんなことするんだ。大概だよ」
「ライアちゃんって本当に面白いし可愛い!ここをでても出来たら一緒に遊んだりしよ!!」
「バッカお前、あんまそう言うこと言うんじゃねぇよ!それにあたしにそういうんは似合わねえ。ほかを当たんな。……あとちゃん付けだけはやめろ!!」
ライアは頬を赤らめてそういった。葵は理解する。ライアは勝気でズボラに見えるがその根底にはしっかりと女の子がいるのだ。それがいわゆる照れ隠しによるものなのか。はたまたそれ以外なのかは不明だ。だが一つだけ葵に言えることがあった。
「かわいっ」
久々にアイドルオタクとしての面がこぼれてしまい、思わず葵も自分で言っていて驚いていた。
「かわっ!?もういい!!あたしは部屋に帰らせてもらうぜ!!」
ライアはそう言って恥ずかしそうに自室に戻っていった。残されたメフィーと葵は眼福といった表情で互いに見つめ合っていた。
「メフィー、君とは仲良くやっていけそうだ」
「あぁ、多分星の呼び声もそう言うだろう」
何故か二人の間に謎の絆が生まれた。
「なあ雫?葵は何をやらかすと思う?」
ウイング本部。指令室ではカナリアと雫がくつろいでいた。
「そうだな……今はまだついているが小型盗聴器でも無くすと予想しておこう」
「あっははっ!!確かに葵だからどっかにおいてしまいそうだね。まあでもそうなったらヴァーグを倒しまくって成果をヴァンダルに送るとでもしようか」
カナリアは足をピンと伸ばしてソファに座る。葵がいないうちに指令室はすっかりと休憩室のようになってしまっていた。
「葵がいなくなって数日…何年もこれでやってたはずだが、やはり寂しく感じるものだな」
「神崎はウイングのムードメーカーだからな。ウイングにかけていたパーツだったのだろう」
雫はカフェオレを片手にそう呟いた。
指令室に暖かい空気が充満する。葵は居なくとも葵がウイングに与えた影響は大きかった。今までのウイングにあったぎこちなさは今や全員が小学校からの友達のように仲が良くなり、それでいて上下関係はしっかりとしている。葵こそがウイングの革命児だったと、カナリアは自信をもってそう言えるだろう。
「葵、いつ帰ってくるかな……」
「珍しいですね司令。随分乙女チックな顔になっていますよ」
指令室の扉が開くと入ってきたのは八舞だった。
「秀治さん!!」
雫はまるで餌をもらいに来た子犬のように八舞に駆け寄る。関係性こそ進展していないものの、二人の仲は徐々に、確実に、深くなっていっていた。
「雫さんも来ていましたか。葵さんが居なくなってからどうなったかと思いましたが元気そうで何よりです」
「それで?八舞がここに来たってことは何かあったのだろう?要件は何なんだい??」
カナリアのその質問に八舞は急に嬉しそうな顔になった。
「奏さんの持っていたパイモンについての話です」
八舞はウキウキと資料のデータをモニターに転送してから、説明を始めた。
「現在奏さんの使用しているアイギスはガァプ。感情や智慧を操作する悪魔をもとに作られたそれは、まだ子供である奏さんの制御しきれないメロフォージを一時的に抑えることが可能でした。ですが最近はガァプ使用により、奏さん自身の制御能力が飛躍的の向上。もはやパイモンという圧倒的な力を前にしても精神の制御が失われることはないでしょう」
「つまりは奏がバルバトスに次ぐ序列9位のアイギスを使用できるわけか」
雫はしばし悩んだ。味方が協力になることは非常に良いことだ。だが脳裏に浮かぶのは初めて奏に会った時の、苦しそうな姿。そして何よりもこの話を現在いない葵が聞いたら、まず間違いなく首を横に振るだろう。
「まあいいんじゃないかな?雫も葵も心配なところはあるだろうが、奏の成長のためにはいずれ通らねばならん道だからな」
カナリアたちウイングの戦力が増しているとき、刻一刻とヴァンダルの計画は進行しているのだった……。




