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69話前編

ユートは、部屋の外で待っていた特別調査部のメンバー全員を、再び部屋に集めた。皆がユートの無事を喜び、安堵した表情で彼を見つめている。


ユートは皆の顔を見渡し、深く頭を下げた。


「皆…本当に、すまなかった」


その言葉に、皆がざわめいた。


「俺が、不注意でサキュバスの魅了にかかってしまったせいで、皆に、そしてセーラに、大変な思いをさせてしまった」


ユートはもう一度、深く頭を下げた。そして、セーラの方を向き、改めて謝罪した。


「セーラ…本当に、ありがとう。そして…ごめん」


セーラは首を横に振り、ユートの手を優しく握った。

「ユートさん…もう、大丈夫ですから」


バルカスがユートの肩に手を置いた。

「ユート部長、何を言ってるんですか。無事でよかった。それだけですよ」

ドランも頷く。

「そうです。部長が無事に戻ってきてくれた。それが一番です」

エルザも続いた。

「怪我は? 大丈夫ですか?」


皆が口々にユートを気遣う言葉をかけた。その温かい言葉に、ユートは胸が熱くなった。


その時、リックがニヤニヤしながら口を開いた。

「いやー、でもユート部長が魅了されたって聞いた時は、どうなることかと思いましたよ! 特にユージーンなんて、自分が抱かれに行くとか言い出すし!」


リックの言葉に、皆が笑った。ユージーンは顔を赤くして動揺している。

「り、リック! 余計なことを…!」


ユージーンはセーラの方を向き、深々と頭を下げた。

「セーラさん…本当に、感謝しています。そして…不甲斐ない姿を見せてしまい、申し訳ありませんでした」


セーラは優しく微笑んだ。

「ユージーンさん…大丈夫ですよ。皆、ユートさんのことを心配していたんですから」


皆が笑いながらユージーンを慰める。その様子を見て、ユートも少しだけ心が軽くなった。


落ち着いたところで、バルカスが行方不明者の報告をした。


「助け出した行方不明者の中に、ネトルシップ商会のロベルト重役がおられました」


ユートは目を見開いた。

「ロベルト重役が!?」


「はい。魅了されて意識を失っていましたが、衛兵隊の神官の方に治療していただき、現在は正気を取り戻し、この支店の一室で休んでおられます」


バルカスは続けた。

「やはり、ロベルト重役の一行も、サキュバスに襲われたようです。残念ながら、数名の護衛の方は既に亡くなってしまっていましたが…ロベルト重役が無事で、本当に良かったです」


ユートは安堵の息を漏らした。ロベルト重役の捜索が第一の任務だった。彼が無事に見つかったことは、何よりの成果だ。


「衛兵長のガルシア殿からも報告がありました。我々が討伐したサキュバス以外にも、衛兵隊が別の洞窟で数匹のサキュバスを討伐したそうです。これで、周辺のサキュバスはほぼ駆除できたと思われます。衛兵長が、ユート部長が回復したら、ぜひ顔を出してほしいと仰っていました」


ユートは頷いた。ガルシア衛兵長との協力が、早期解決に繋がったのだろう。


「わかった。ガルシア衛兵長には、回復次第、必ず挨拶に行こう」


ユートは、今後のことを考えた。自分もまだ完全に回復したわけではないし、ロベルト重役も休養が必要だ。それに、セーラも心身ともに疲れているだろう。


「皆、今回の任務、本当にご苦労だった。そして、ありがとう。俺もロベルト重役も、まだ万全の状態ではない。それに、セーラも休ませてやりたい」


ユートは皆を見回した。

「この先数日は、このミストヴェイルで過ごそうと思う。俺とロベルト重役が回復するまで、ここで休養する」


「はい、ユート部長」


「セーラには、俺の補助をお願いしたい。他のメンバーは、交代でしっかりと休憩を取ってくれ。そして、ミストヴェイル支店の手伝いをしてほしい。デッタ支店長にも、今回の件で色々と世話になったからな」


「承知いたしました」


「衛兵隊との連携も引き続き行う。街の安全が完全に確保されるまで、気を抜かないように」


ユートは、セーラの手を握り直した。

「セーラ、無理はするなよ。疲れたら、すぐに休むんだ」


「はい、ユートさん」


その日から数日間、特別調査部のメンバーはミストヴェイルに滞在することになった。

ユートはセーラの看護を受けながら、少しずつ体力を回復させていった。

セーラは傍を離れず、彼の身の回りの世話を焼いた。ユートは、セーラの優しさと強さに触れるたび、彼女への愛情と感謝の念を深めていった。


他のメンバーは、交代で休息を取りながら、ミストヴェイル支店の業務を手伝った。

カインは衛兵隊と協力して失踪事件の記録整理を行い、エマは支店の事務作業をサポートした。

バルカスやドラン、エルザたちは、街の巡回や衛兵隊の訓練に協力し、ミアは馬車の整備や輸送の手伝いをした。

レナータとユージーンは、街の情報収集を続け、サキュバス以外の不審な点がないか探った。


各々が、今、自分に出来ることをしながら時間が流れた。

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