131話
翌朝、ユートはハガマと今回の任務に同行する人員について相談するため、イナホのメンバーが待機している窓口へと向かった。
窓口の担当者に声をかけ、ハガマとイナホのメンバーの呼び出しを依頼する。
ほどなくして、窓口にハガマと、その隣にスイとハンが姿を現した。
三人の顔には、昨夜の話し合いの余韻が残っているようだった。
「ハガマ、スイ、ハン。来てくれてありがとう」
ユートはそう切り出し、改めて今回の任務の重要性を語り始めた。
「ユート様、昨夜、皆に今回の任務について話をいたしました」
ハガマが口を開いた。
「その結果、私とスイ、ハンの三人が、ユート様たちに同行することになりました」
ハガマの言葉に、スイとハンも深く頷く。
「残りのメンバーは、アルテナとドループ間を、商会とは別のルートで往復し、情報収集や物資の運搬など、後方支援に当たることにしました。残っているメンバーの指揮は、サニッキが行います」
ハガマは、イナホとしての役割分担を明確に説明した。
彼らなりの考えと覚悟が、その言葉には込められていた。
「承知した。ハガマたちも同行してくれるのは心強い」
ユートは、彼らの決断に感謝の意を示した。
「ただし、ドループへ向かう際も、君たちとは別々に移動する。街で拠点を確保するまでは、独自に情報を集めてほしい。そして、無理はしないように。危険を感じたら、すぐに撤退を優先してくれ」
ユートは、ハガマたちの安全を最優先に考え、慎重な行動を促した。
「はい、承知いたしました」
ハガマたちは、ユートの言葉に深く頭を下げた。
その後、ユートは特別調査部のホームに戻り、出発準備の進捗状況を確認した。
物資の積載、馬車の点検、護衛の装備確認など、それぞれの持ち場で準備が進められている。
「準備は順調か?」
ユートがカインに尋ねると、カインは書類の束を抱えながら答えた。
「はい、ユート部長。現在、ドループの街の地図と、現地の商習慣に関する資料を整理しています。馬車の積載も順調に進んでいますが、出発までにはあと二、三日はかかりそうです」
カインの言葉に、ユートは頷いた。
急ぐ必要はない。
万全の準備を整えてから出発するべきだ。
ユートは、準備の状況をダリウス会長に報告するため、商会本部へと足を運んぶ。
ダリウス会長は、ユートの報告に満足げな表情を見せながら
「イナホの者たちも同行するのか。それは心強いな。彼らであれば、ドループでの情報収集もより円滑に進むだろう」
ダリウス会長は、イナホの能力を高く評価しているようだった。
「準備も順調に進んでいるようです。二、三日中には出発できるかと」
ユートが報告すると、ダリウス会長は頷いた。
「うむ、無理はせず、万全を期して出発するように。期待しているぞ、ユート」
ホームに戻ったユートは、特別調査部のメンバーと最終的な打ち合わせを行う。
地図を広げ、移動ルートや緊急時の連絡方法、ドループでの行動計画などを細かく確認していく。
「ドループに着いたら、まずは仮の支店となる場所を探す。その後、街の有力者への挨拶回りや、サドネット商会の動向を探るための情報収集を行う」
ユートは、今後の具体的な行動について指示を出した。
「皆、今回の任務は、ハーネット商会の今後を左右する事になるかもしれない重要なものだ。各自、気を引き締めて、任務に当たってほしい」
ユートの言葉に、メンバーたちは真剣な表情で頷いた。
数日後、全ての準備が整った。
特別調査部のメンバーは、それぞれの役割を再確認し、馬車に乗り込んだ。
朝日がアルテナの街を照らす中、ユートたち特別調査部を乗せた馬車は、ドループの街へと向けて出発した。
馬車の車輪が、石畳の道をゆっくりと進んでいく。




