神薬、身体悪し。
大分遅れ馳せながら今年初投稿になりますので、宜しくお願いします。
「戦闘力と魔法力と超能力のいずれかの力を貴方に授けますので、どれかお好きなものをお選び下さい」
急に脳内から、突拍子もない事を言い出す若い女性の声が聞こえて来た。
何だ、これは?夢か!?
そうだ、これは夢に違いない!
こんなおかしな事を言う女性が居る訳が…いや、そもそも耳からではなく脳内から聞こえた訳だから、その時点で現実でない事は明らかだ。
どうせ夢なら、その問いに答えても問題はない。
「その3つの中から1つを選ぶなら、僕は野蛮な暴力は嫌いだし、魔法は詠唱するのが面倒だから、そうなると自ずと超能力が残る訳だけど、僕はよく空気が読めないと言われるから、相手の心を読めると便利なので超能力かな」
「畏まりました。それではご希望された超能力を授けますので、用法、用量をよく守って正しくお使い下さい」
「薬か!?」
と思った瞬間に目が覚めた。
やはり夢だったか。
そりゃそうだよな。
ここは現実世界なんだから、そんな異世界みたいな話が…あれ?
枕元に名無しの薬袋が置いてあった。
さっき聞いた声は現実だったのか!?
まさか、妹の仕業か!?
2次元の女の子にしか興味のない俺への嫌がらせで、寝ている俺の耳元で囁いて薬袋を置いて行きやがったな!
「おい、妹!おーい、妹ー!」
俺は2階の隣の部屋で寝てる妹を大声で呼んだ。
すると、妹が眠そうな顔をして俺の部屋に来た。
「何よ、こんな朝っぱらから大声で。まだ5時半よ」
「こんな朝っぱらからはどっちだよ!俺にこんな悪戯しといて!」
「悪戯?こんな朝っぱらからバカ兄に構う程バカじゃないわよ!」
「確かに、改めて聞いたら全然声が違うな。こんな幼い声じゃなくて、もっと大人な綺麗なお姉さんの声だったもんな」
「幼い声って何よ!こんな朝っぱらから大声で呼んだと思ったら、人を悪者扱いして幼い声だってバカにして、ホント信じらんない!死ね、クズ兄!」
怒った妹は、勢いよくドアを閉めて自分の部屋へと戻って行った。
妹の霜乃は俺より3つ下の14歳の中学2年生で、俺、真盛太陽は17歳の高校2年生だが、妹とはお互いの価値観の違いから昔から仲が悪かった。
俺は異性は2次元にしか興味がないのに対し、妹は芸能人やアイドルが大好きだから、お互い推しへの愛が強過ぎて相容れない訳だ。
俺は物心ついた時から異性を名前で呼ぶのが苦手で、それは家族でも例外ではなかったから、霜乃の事はずっと妹呼びだ。
それにしても妹じゃないとすると、母さんがそんな下らない事をする訳がないし。
取り敢えず俺は、薬袋を開けてみた。
中には赤と白のカプセル剤10錠と、おくすり説明書が入っていた。
おくすり説明書を見てみると、まず最初に『エスパードラッグ』と言う文字が目に飛び込んで来た。
エスパードラッグって、いかにも子供が考えそうな安直なネーミングだな。
やっぱり、妹の仕業なんじゃ?
おくすり説明書に目を通してみた。
おくすり説明書
【エスパードラッグ】
この薬を飲むと、超能力を得る事が出来ます。
だがしかし、この薬はまだ試作品の為、1日1錠しか飲む事が出来ません。
未完成の薬を与えるとか、治験ボランティアかよ!
現在エスパードラッグで使用出来る超能力は、テレパシー、テレポーテーション、レビテーション、テレキネシス、サイコキネシス・エレクトロキネシス、パイロキネシス、アースキネシス、エアロキネシス、リモート・ビューイングです。
カッコつけて全部英語で書きやがって!
それにしても、随分と戦闘系に偏ってるな。
他の選択肢が戦闘力と魔法力だったから、戦闘に特化した能力にしてるのか?
この薬は1錠飲むと1日効果が持続しますが、能力を使う度に体力を消耗しますので、十分お気を付けてお使い下さい。
2錠目を飲む時は、きちんと24時間以上間隔を空けてからお飲み下さい。
24時間以内に飲まれると生命の保証は出来ませんので、用法、用量をよく守って正しくお使い下さい。
怖!
そりゃまあ人智を超えた力が得られる訳だし、このくらいのリスクは当然然りだよな。
って、何鵜呑みにしてんだ俺は!
そんな俺が怖いわ!
それにしても、おくすり説明書は手書きで書いてある訳だから、やっぱり妹の奴が…って、妹ってこんなに字綺麗だったっけか?
それに妹は、物語は俳優が演じるドラマや映画しか観ないからこんな設定のドラマがあったのか知らないけど、今は漫画原作のドラマや映画も結構やってるしな。
って、何でも犯人を妹に結び付けちゃうわ!
この赤と白のカプセル剤だって、例の毒薬のつもりでこの配色をチョイスしたのかも知れないしな。
「その薬は、私女神が創造した神薬です」
また、脳内から声が!
「まだ試作段階の為、健康で順応し易い身体の未成年に絞って配布して効果を検証中ですので、ご使用された際の効果や副作用をこれから観察していきたいと思いますので宜しくお願いします」
何だ、俺はまだ夢を見ているのか。
どうせ夢なら、飲んで試してみるか。
よく見ると、カプセルに黒字で小さく能力名が書かれてるな。
テレポーテーションにそそられた俺は、1錠取り出してそのまま飲み込んだ。
これで、テレポーテーションが使えるようになったのか?
取り敢えず、隣の妹の部屋に行ってみるか。
どうやるのか分からないけど、行きたい場所を思い浮かべればいいのか?
すると、目の前には口を開けて寝てる妹が居た。
本当にテレポートしたわ!
って、何本気で驚いてんだ、俺は。
夢なんだから、別にこれくらい出来てもおかしくないじゃないか。
一応夢かどうかを確かめる為に、お約束のあれをやってみるか。
俺は寝てる妹の左頬をつねった。
痛くない、これは夢だ!って、ちょっとベタ過ぎたか。
て言うか、妹の頬はマシュマロのように柔らかいな。
柔らかいと言う事は、伸びるのか?
左頬を掴んで横に引っ張った。
ビンゴ!凄い伸びるな、まるで餅みたいに!
右頬も掴んで横に引っ張った。
20センチくらい伸びてるんじゃないか!
例の実を食べたのかってくらい伸びて、逆に気持ち悪いわ!
でも、これは触り心地が良くて気持ちいいし、よく伸びるから面白いな。
俺は夢中になって、左右の頬を縦横斜めに引っ張った。
普段澄まし妹の顔が、こんなにも表情豊かで面白い顔に!
夢だから出来るものの、リアルだったら触れる事すら出来ないからな。
それにしても、さっき起きて来たのにもう寝てるなんて、ホント寝付きがいいよな。
見た目は可愛いのに口は悪いから、ホント可愛くない奴だよ。
将来、口裂け女になるかもな。
そう思いながら、妹の開いた口に両手の親指を入れて左右に引っ張った。
「ははは、口裂け女も悪くないわ!」
俺は左右に口が伸びてだらしない顔で寝てる妹を見て、思わず声に出して笑った。
「ひゃ!はひひへんほ!」バチン!
「いって!」
妹が目覚めて大声で叫んだと思ったら、左頬に激しい痛みが走った。
思いっ切り引っ叩かれた痛みに反応して、思わず俺も大声で叫んだ。
こんなにリアルな痛みを感じるなんて、これはもしかして現実なのか!?
気付くと、無意識の内に自分の部屋にテレポートしていた。
「き、消えた!私は寝惚けてるの!?2回もクソ兄に振り回されるなんて、ホンット最悪だわ!」
隣から妹の大きな独り言が聞こえて来たと思ったら、また静かになった。
妹はホント寝付きが早いななんて思う余裕はなく、これは夢ではなく現実に起きた事だと思うと、色んな感情が湧き上がって興奮した。
これはどうやら、現実に起きた事だと認めざるを得ないようだな。
マジかよ!?
これはガチでリアルで起きてる事なのかよ!?
今度は学校にテレポートしてみるか!
学校を思い浮かべて、あれ?
何だか急に眩暈が…
「100人目の正直で当たって砕けろの精神で当たってみたが、100人目も儚く砕け散ったか。やはり、生身の人間にこの薬は毒でしかなかったか。同じ種族同士で傷付け殺し合う愚かな人間共に神の力を与えたら、一体どう使うのか観察して楽しもうと思ってたのに残念だな。今度は強靭な肉体を持つ獣人界に行くか。戦争の勝利の女神である私の辞書に失敗で終わる、つまり敗北と言う文字はないからな。失敗は成功の元。今度こそ私を楽しませてくれよ!」
いかがだったでしょうか?
次に書こうとしてる異世界転生物語のきっかけとして書きましたので、またいつの日か此処で、たまたま運悪く見掛けちゃった人のお目に留まればと思ってますので、宜しくお願いします。




