表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一章完結】その森には賢者と呼ばれる魔王が住んでいる  作者: にとろ
魔王、転生する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/45

貢ぎ物泥棒に制裁を

「さて、今日も行くかな」


「ルード様! 今日はどんなものがお供えしてありますかね?」


「さあな、でも……」


「でも?」


「行ってみれば分かるさ」


 というわけで本日も日課の賢者様への貢ぎ物を回収に向かうことになった。


「ルード様、本日の返礼品は何にするんですか?」


 貢ぎ物を送ってくれる近隣の人たちには最近お返しを置いておく活動を始めた。多くはエリクサーだったり万能薬だったりと賢者らしいものから、森で採れた魔物の素材などまで様々だ。時々はお礼の手紙などが入っていたりもする、ささやかな楽しみになりつつあった。


「今日はポーション詰め合わせかな。この前酒のセットが供えてあっただろ? アレの空き瓶があるからそれに詰めておこうかと思ってな」


「ルード様、あのお酒は結構な量があったと思うのですがもう全部飲んだんですか?」


「俺は身体が丈夫なんだよ」


 実際魔王から人間に転生しても体力的なものには衰えを感じない。俺を倒した勇者がそこまで人間として到達していたのだから人間も鍛えればそのくらいまでは届くのだろう。試しに森の毒草や毒キノコをわざと食べてみたこともあったが、何ら体調に変化はなかった。あの神でも一応体力には配慮をしてくれたらしい。


 だからもちろん酒を貢がれたらほとんどその日のうちに飲んでしまう、それをシャミアが咎めることもしばしばだ。シャミアも生贄にされていた頃よりは俺にものを言うようになってきている。自由意志というのは人間を構成する重要な要素なので、それが成長しているというのはいいことなのだろう。


「しかしポーションですか、それって不要品を送っているだけなのでは……」


「失礼な! 俺には必要無いものを有効活用してもらうだけだぞ」


 俺にポーションはまったく必要無い、回復魔法も使えるのでいざという事があってもシャミアを回復することも可能だ。もちろんこの森に居座っているかぎり俺には危険なことはない。勇者も人間になった俺を倒すほどヒマではない……と思いたいところだ。


「高品質ポーションも貰ってましたよね、アレも詰め替えるんですか?」


「言い方が悪いぞ、詰め替えじゃなくて検品だ」


「ものは言いようですねえ」


 こうして俺は高品質ポーションを、酒を貢いでくれた親切な人たちにお返しをすることに決めた。


 祠に行くと今日はベーコンが置いてあった。酒を飲むことを制限しているシャミアからすれば美味しい食べ物は大好物のようだ。大喜びで鞄に詰め込んでいる。


「じゃあお礼の手紙を置いて……帰りますかね」


「そうだな……」


「どうかしたんですか?」


 俺に怪訝な目を向けるシャミアに俺は疑問の元を答える。


「ベーコンが一つしかないな……大抵二つ一組で用意してくれているのにな」


 貢ぐ方も俺たちが二人組なことをなんとなく理解したらしく、二人分を用意してくれていることが多い。今日はいつもより量が少ないなと思ったのだ。


「ちょっと呪いをかけておくから表で待っていてくれ」


「物騒ですね。どんな呪いをかけるんですか?」


「貢ぎ物無しにここからものを持ち去ろうとした人間を麻痺させる呪いだよ、シンプルだろ?」


「便利な呪いがあるんですね」


 呆れ顔のシャミアだが、魔王軍時代にはもっと様々な呪いがあった。腹を下して食べたものがろくに消化もされずに出てくる呪いや、クジに必ず当たらなくなる呪い、泥棒に入ろうとしたやつの魔力を全て奪ってしまう呪いなど様々なものがあった。


 もっとも、魔王やってた頃は呪いに頼るより直接殴りに行く方が手っ取り早かったので頼ることは少なかったのだがな。


「じゃあ私は出ていますね」


「ああ、間違えて入らないようにな」


『カースド・パラライズ』


 呪いがきちんと設置されたのを確認して俺は祠を出た。


「もう終わったんですか? 呪いならもっと儀式とかが必要なんじゃないんですか?」


「いつの時代の話だよ、呪いって言っても要はトラップ魔法だからな、初歩的なものだし簡単だよ」


「じゃあ今日はベーコンを焼いてパンに挟んで食べましょうか! 美味しいですよ!」


「そうだな、やることも終わったし帰るか」


 後日、マヌケな犯人が祠の前で餓死寸前で麻痺していたと報告の手紙が置いてあった。大したことはしていないのだが、何故かその手紙からは俺に対する畏怖のようなものを感じ、その時の貢ぎ物が少し豪華なものになっていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ