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【一章完結】その森には賢者と呼ばれる魔王が住んでいる  作者: にとろ
魔王、転生する

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12/45

旅の武闘家が森に入ってきた

「シャミア、またお客さんがここに向かっているみたいだぞ」


 俺は先日、結界をアップデートして結界内なら映像を映して、具体的な状況を見ることが出来るように変更していた。


 シャミアはひどくそれに興味を引かれたようで、こうして人が入ってくると映像を見せてくれと頼み込んでくるようになった。まあこの家は平和で退屈だからな、無理もないことだ。


「ルード様! 映像を早く!」


「ちょっと待てよ、ここをこの角度から映せば……」


 そこには徒手空拳でダークファングと戦う男の映像が流れた。ソロで向かってきているようで仲間は見当たらない。この前ポーションの販売機が設置されていた方向の入り口から入ってきたようだ。


「何処まで行けると思いますか?」


 シャミアにそう訊かれたので素直に答える。


「俺が手間をかけない程度の状況で出て行って欲しいな」


 人間を訪ねるのは煩わしいのだ。この武闘家もそれほどの達人というわけでもないように見えるし、適当なところで帰って欲しい。この前なんぞ国軍の一部隊が入ってきて全滅寸前だったところを助けたのだが、その後『賢者様バンザイ』とやかましく言われ、この家に帰ろうとするのを引き留められて迷惑だった、そう言うことは無い方が良いのだ。


 国軍なんぞ自分から入ってきた連中を助ける気はないのだが、あのクソ神からの『タスケロ』という言葉が頭に流し込まれる感覚には耐えられない。


「ルード様! ピンチみたいですよ!」


 映像ではオオトカゲが武闘家に襲いかかっているようだ、不意を突かれたのか多少の傷を腕に負っている。しょうがないな……助けてやるか。


「まったく……助けにいくぞ」


「待ってください!」


 言われて映像を見ると、ポーションをゴクゴク飲んでいた。あの販売機で購入したのだろう。怪我はあっという間に回復してオオトカゲの喉を殴って倒していた。


「助けは不要みたいですね」


「そうだな……」


 こんなその辺にいる人間でさえ危険に対処できるというのにこの前の軍隊は集団だからと慢心したのか回復薬さえもっていなかった。おかげで俺が回復魔法をかけたのだが、軍隊の部隊のくせに一個人より準備が悪いというのは恥ずかしくないのだろうか?


「ここまで来ますかね?」


「無理だろ、あの程度無傷で倒せないと奥の方のジャイアントベアとかに勝てるわけもないしな」


 俺の言葉に多少はがっかりしているシャミア。実際武闘家はポーションゴリ押しで多少は進んでいったものの、限界が来たところで退却を選んだ。賢明な判断と言える。


「ルード様、なんでそんなに入ってくる人の実力が分かるんですか?」


「経験だ……」


 実際魔王をやっていた時でも部下の囲いを破ってきた勇者候補は大抵深手を負っていた。その状態で勝てるとでも思っているのだろうか? 俺に向かってきてそれを返り討ちにすることはよくあることだった。


 そんなことを繰り返していると部下の壁を突破できるだけの実力があるものを見分けることが出来るようになった。結局俺を倒せたのは神が差し向けたのであろう奴だけだったがな。


 そして武闘家は森の入り口まで退却してきて販売機でポーションを購入していた。それを飲んでまたやってくるんじゃないかと思ったが、流石に実力差を感じたらしくそのまま結界範囲から出て行った。


「出て行っちゃいました……」


「助ける手間が省けたよ」


 そうして貢ぎ物の茶を入れて二杯をカップに注いで二人で森の様子を見て暇を潰したのだった。

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