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tokyo転生者 北区に住んでる光の勇者  作者: 氷川 泪
プロローグ
9/202

黎明

強靭(きょうじん)な筋力から放たれる多角的な斬撃(ざんげき)を、勇者は軽々と(かわ)していった。魔装(ましょう)の内側で蠕動(ぜんどう)する筋肉は肥大化(ひだいか)を続け、魔王の体は(さら)に大きさを増していく。不意打ちに近い素手の一撃で、魔王の体にダメージを与えることはできたが、それももう通用しそうになかった。

 魔王の()りを腹に受け、勇者の体は(まり)のように転がった。倒れた先に、魔刀玉鋼(まとうたまはがね)眉月(まゆづき)が落ちていた。右腕を伸ばし魔刀を(つか)むと、突進してくる魔王目掛(めが)けて投げつけたが、魔王は首を(ひね)るだけで、その一投を躱した。

「無駄なことを。貴様に待つのは死あるのみよ」

 (いびつ)な形状に変化した魔王の口から()れる声は、(ひど)く聞き取り(づら)かった。

 勇者は立ち上がり、魔王と対峙(たいじ)した。やれることはやった。後はただ待つだけだった。

「首だけは残す。後は火竜(サラマンダー)共の(えさ)となれ」

 魔王の振るう聖剣が、疾風(しっぷう)を伴って勇者の首へ向かう。

「円月輪十六夜、戻れ!」

 ()(えが)(ちゅう)を飛んだ円月輪十六夜が聖剣と激突(げきとつ)した。激しい火花と金属音が鳴響(なりひび)き、剣と刀は互いを(はじ)き飛ばした。

 勇者の右手に、金色に輝く十六夜が握られていた。

「眉月を投げた先に、有明が待っていたとはな。抜かったわ」

 耳まで()けた口蓋(こうがい)(ふる)わせ、魔王が笑う。

「つくづく悪運の強い男よ。感心する。だが」

 聖剣が次々と勇者に叩き付けれられる。魔王の攻撃は繰り返すたびに角度を変え、速度を増しながら、勇者を襲った。

「終わりだ、勇者よ」

 魔王の攻撃が止んだ。聖剣を中段(ちゅうだん)に構え、可視化(かしか)できるほどの魔力を聖剣に注ぎ込み始めた。聖剣に宿る炎の煌めきが一段と強くなる。

「ディメンションリッパー!」

 魔王が上段から剣を叩きつけた。勇者は避けもせず、魔王の攻撃に正面から立ち向かった。

 空間が裂け、全てを切裂(きりさ)閃光(せんこう)が勇者を襲った。閃光に向けて、勇者は十六夜を(たた)きつけた。

 十六夜は閃光を弾き、再び二本に分裂(ぶんれつ)した。勇者は眉月を右手に持ち、宙に浮いた有明を口に(くわ)えた。体を回転させながら、再び二刀の(ふいご)(かさ)ね合わせる。

 合体した二刀が強い光を放つ。だが魔刀から放たれたのは、金色の光ではなく、赤に近い橙色(とうしょく)だった。朝日を思わせる橙色に変化した十六夜は、形状もまたS字型に変化していた。

玉鋼(たまはがね)緋緋色(ひひいろ)円月輪(えんげつりん)終の型(ついのかた)黎明(れいめい)

 橙色に輝く(やいば)は、聖剣を(から)めとるように(くぐ)()け、勇者を魔王の懐へ(みちび)いた。勇者が刃を返すと、刀はいとも簡単に魔王の両手首を切り落とした。

 魔王の顔が苦痛に歪み、聖剣が地に落ちる。(すべ)るように魔王の背後に回った勇者が黎明を一閃(いっせん)させると、魔王の首は胴から離れ、赤茶(あかちゃ)けた伽藍(がらん)の床に転がった。

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