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tokyo転生者 北区に住んでる光の勇者  作者: 氷川 泪
第二章 魔王復活
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休憩

「アネモ・プシュケ」


 美穂が呟くと、美穂の前に青く輝く美しい蝶が現れた。羽ばたくたびに青く輝く鱗粉(りんぷん)舞散(まいち)らす蝶の姿に、城山とチャオは視線を奪われた。


 蝶は美穂が差し出す右手の人差し指に止まり、羽を休めるように動きを止めた。


「素敵な手品だけどさ、なんなの、これ?」


 鼻をひくつかせながら、チャオが蝶に顔を近づける。


「ワシの瘴気(しょうき)で作りあげたおもちゃだ。遊び方は今教えてやる」


 美穂の言葉に反応した蝶は指から離れ、チャオが侵入してきた窓から外に向けて飛んでいく。魔法で作られただけあって、強いビル風の影響も受けず、蝶は窓の外で滞留(たいりゅう)を続けている。


「クロトス」


 美穂の言葉に、窓の外の蝶が(はじ)け散った。凄まじい振動がビル全体に広がり、それと同時に室内の照明が消えた。(いた)る所で窓ガラスが割れる音が響き、揺れを感知したビルの被災度判定(ひさいどはんてい)システムがビル全域に警報を鳴動させる。


地鳴りが続き、それに(とも)いビルの揺れも激しくなっていく。


下手(へた)なブラフですね。この程度の魔法でわたしが動じるとでも?」


  城山が苦笑する。


「ミカ」


「死体はお前にくれてやるから、さっさとその女の首を落とせ、チャオ」


 チャオの呼びかけに城山が声を荒げる。


「ミカ、うしろ」


 チャオの声に、城山は背後に目を向けた。


 照明の消えた薄暗い室内は、光り輝く蝶で(あふ)れていた。赤、青、紫色に輝く蝶の群れは、先程、美穂の指先に留まっていた個体よりも一回りは大きく、その数は百を超えていた。


「これは!」


「さっきの蝶より破壊力は数倍上だが、なぁに、お前なら死にはしないだろう」


「ミカ、これって超やばくない?ぼく、ちょっと用事思い出したから帰っていいかな」


 チャオが美穂の首に当てている刃が(かす)かに震えている。


「このビルの中だけでも1万人近くの従業員がいる。くだらない女ひとりの命の為に、無関係な人間まで巻き添えにする気か?」


「そうなるな。別にワシは構わん。貴様同様、いや、貴様以上に、ワシは人間が嫌いなのでな」


 大きな溜息(ためいき)をつくと、城山は半壊(はんかい)したバーキャビネットからウィスキーのボトルを取り上げ、半分程を喉に流し込んだ。。


「失礼。飲まなきゃやってられないのでね。何か飲みますか?」


「あっ、ぼくロングアイランドアイスティー、テキーラ多めで」


 チャオが美穂の喉に当てていた戦鎌の刃が消えた。刃だけでなく、チャオが持つ巨大な戦鎌本体も跡形(あとかた)もなく消えている。アスポートと呼ばれる物質転送能力で、以前は魔王も同様の力を使い、ミスリルソードを操っていた。


「あたなも同じものでいいですか?面倒なカクテルなのでね。どうせなら一度で済ませたい」


 手にした氷をアイスピックで砕きながら、城山が美穂に問いかける。意外にまめな性格なのかもしれない。


「ワシ、ウオッカ・マティーニをシェイクで」


 カクテルを作る城山の手が止まり、鋭い目つきで美穂を睨む。


「シェイクとステアを飲み比べて味の違いが判るのですか?素人が気安く注文していいものではありませんよ」


「すいません。おまかせします」


 城山の剣幕に圧倒され、美穂は思わず頭を下げた。解ればいいと言わんばかりに頷くと、城山は無言で氷を砕き続ける。


 黙々とカクテルを作る城山の傍らで、特にやることも無く美穂は立ち尽くしていた。ソファに座ったチャオは、テレビを点けて昼の情報番組を見ている。

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