攻撃
部屋の中央に立つ城山が右手を美穂に向けて突き出した。美穂の喉首が締め上げられ、体が絨毯を離れ、宙に浮く。
「同じ術か。ベイダーチョークだったかの。舐められたものよ」
甘王の声で美穂が苦笑する。
「アエーマ・クロス」
美穂が呟くと、部屋の中を疾風が駆け巡った。豊かな美穂の長い髪が風になびき、風船が割れたような破裂音が部屋の中に響く。美穂の首を絞めていた目に見えない圧力が消え、美穂の身体は羽毛が舞うように床に着地した。
「くっ」
城山が再度右手を突き出す。美穂の前の空間に、水紋が広がるような歪みが現れ、すぐに消えた。
「見えない腕などはなから存在しない。こやつは風のエレメントを使って周囲の気圧を変化させ攻撃してきただけだ。風属性の初歩だな」
美穂の口を通じ、甘王が美穂に術の解説をしている。
「アイスランス」
城山が叫ぶと同時に、城山の左肩後方の空間に青く輝く魔法陣が浮かび上がり、その中央から凄まじいスピードで氷の槍が射出された。蒼く輝く鋭い氷の槍は、一直線に美穂の心臓を刺し貫いた。
「はずれ」
甘王の声と同時に、心臓を刺し貫かれた美穂の身体が砕け散る。氷の槍が刺し貫いたのは、美穂の姿を模った氷像だった。
霧氷と化した氷像の影から、いたずらっこのように笑う美穂が現れた。
「氷結魔法で成形した氷に、光の屈折を利用して色付けしただけの人形だ。それにしてもなんだ、アイスランスとは。そのまんまじゃ・・・・・」
話し続ける美穂の喉に氷の槍が突き刺さるが、美穂の身体はまたしても氷塊となって崩れ落ちた。
「拍子抜けじゃ。同じ術に何度もかかるな、愚か者」
背後から伸びた美穂の手が、城山の右肩を掴む。驚いて飛び退った城山の目から放たれた赤い光線が、肩を掴んでいた美穂の顔を直撃する。じゅっという音と共に、美穂の首から上が蒸気と化した。
「残念。それもはずれ」
部屋の中に五人の美穂が立っていた。五人の美穂はそれぞれが異なるポーズを取り、城山を挑発している。
「目からレーザー、口からファイヤーか?」
腰に手を当てた格好の美穂を、城山のアイスランスが叩き割る。
「あと4人。がんばれ。どれかひとつは本物じゃ」
甘王の声に応えず、城山は目を閉じた。
「見えた」
叫ぶと同時に、城山の身体が動いた。ダブルピースをしている美穂に向けて、手にした氷の槍を突き出す。
「大当たりじゃ。やるな」
ダブルピースしていた両手を下げ、美穂が後方へ跳ぶ。横なぎに払った槍の切先が美穂の前髪を切り落とした。
「なるほど。お主、蛇、いや、蛟じゃな?」
城山が繰り出す攻撃を避けながら、納得いったように美穂が頷く。城山は、ピット器官と呼ばれるヘビ特有の赤外線探知器官を駆使し、サーモグラフィで見るように美穂本体の熱を感知したのだろう。ピット器官を有しているのなら、城山はトカゲではなく、ヘビの上位変種である蛟である可能性が高い。
「どちらでもいい。これで終わりだ」
槍を手にした城山の背後に、無数の魔方陣が出現した。壁に追い詰められた美穂に向け、城山はアイスランスを一斉に放つ気だ。




