表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
tokyo転生者 北区に住んでる光の勇者  作者: 氷川 泪
第二章 魔王復活
80/202

再生

 もう少し早く介入するべきだったが、思いのほか美穂の抵抗が強く、美穂の意識を乗っ取ることができなかった。


 甘王の想像以上に、美穂は自分の置かれた状況を理解していた。相手の言いなりにならず、終始相手を翻弄(ほんろう)する言動を取る美穂を、(なか)ば感心し半ば呆れながら見守っていたのだが、さすがに人外の者が相手ではこの辺りが限界だろう。


 全身を締め付けていた圧力が消え、糸の切れた人形のように体が床に落ちる。両手を床に着いて体を起こし、ヒビの入った窓ガラスに寄りかかりながら立ち上がった。


「うわっ、なんか古いホラー映画で見たことあるよ、それ」


 城山が手を叩いて喜ぶ。美穂の視線を動かし、美穂の全身を見て、甘王も城山の言葉の意味を理解した。頸椎の砕け散った美穂の首は()じれ、180度転回していた。美穂は今、背中を向けたまま首だけを城山に向けている。


「大丈夫なのかい、それ。息とかちゃんと吸えてる?手遅れみたいだけど、一応医者に診てもらう?」


 美穂の死を確信した城山は、異形の姿を隠し、人の姿に戻っていた。


「心配には及ばぬ。それより、うちのバカアホ・ストゥーピッドちゃんが随分(ずいぶん)と世話になったようだな」


 敵に対して容赦はしないが、命を奪う相手を愚弄(ぐろう)する趣味は甘王にはない。城山のやり方はどうにも甘王の癇に(さわ)る。


「きみはさっきの子じゃないね。どうやら、求めていた人に会えたのかな」


「そのようじゃの。別に隠れてはおらんので、アポとやらを取ってくれればワシから出向いたのにな」


「だったらこれから別の場所で話しませんか?お嫌いでないなら銀座のクラブに席を設けます」


「銀座のクラブ。そこで何ができる?」


「なんでも思いのままにどうぞ。それだけの力を、わたしは持っています」


「それは凄い。で、この女はどうする?」


「残念ですが、その身体はもう長くは持たないでしょう。死体はこちらで処理しますから、遠隔操作を止めてご自身でいらしてください。場所を教えていただければ、迎えを送ります」


 笑おうと口を開くと、美穂は口から大量の血を吐き出した。破れた内臓からの出血が逆流し、折れた歯と共に口から噴出したのだろう。


「問題がふたつある。まず第一に、ワシは最近、自分の稼ぎで飯を喰うことを覚えた。他人からの施しでものを喰うても、あまりうれしくない」


 両手で美穂の頭を掴み、勢いよく捩じる。骨の砕ける異様な音と共に視線が廻り、窓の外の富士山が目に映る。視線を下に向けると、はだけたブラウスの隙間から美穂の胸の谷間が見えた。体を回転させ、城山と正対する。


「次に、この女は死んでおらん。それどころか、以前より体調がいいようだ」


 美穂の全身を碧色(みどりいろ)の光が包み込む。光は水のように美穂の体表を流れ落ち、床の絨毯に吸い込まれ消滅した。美穂の傷は塞がり、砕けた骨も傷ついた内臓も瞬時に修復されていた。今の甘王にとって、レフェクティオ程度の回復魔法なら呪文詠唱の必要もない。


「素晴らしい」


 城山が感嘆の声を上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ