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tokyo転生者 北区に住んでる光の勇者  作者: 氷川 泪
第二章 魔王復活
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帰路

「イ・モウトゥよ」


 荷台から兄の声が聞こえる。


「疲れるから話かけるなよ、兄貴」


「星の位置が違う。ここは本当にワシの知る世界ではない」


「そうなのかよ。それでどうなんだ?そっちの世界とやらに帰りたいのか?」


「わからぬ」


 自転車を漕ぎながら空を見上げた。雲のない夜らしく、月明りにも負けず輝いている星が見える。


「イ・モウトゥよ」


「なんだよ」


「ワシがお前を、この世界の女王にしてやるといったら、どうする?」


「女王?王女様じゃなくって、女王かよ」


「どちらでもよい。とにかく、この世界の頂点じゃ」


「いらねぇな、そんなの」


 考えるまでもなく即答していた。


「なぜじゃ。どんな望みも思い通りじゃ。悪くはないじゃろう?」


「悪くはないね。憧れるよ」


「だったらなぜいらぬ?」


「だってそれって、兄貴から貰うだけだろう?つまんねぇじゃん」


「つまらぬ?」


「そうだよ。人から貰った地位にいて、それで何かしたってつまらねぇだろう?」


「世界の頂点に立つのがつまらんか」


「わたしが自分で掴んだ頂点ならいいけどさ。そうじゃなきゃ別にいらないな。多分、兄貴だってきっとそう思うぞ」


「なるほど。では(たず)ねるが、お前の望みは何だ?どんな願いでもひとつだけ(かな)うとしたら、お前は何を望む?」


 外気は冷たかったが、あかねの額には汗が浮かびはじめている。


「そうだなぁ、ちょっと思い浮かばないな」


 前方の北の空を、星が流れた。


「あっ」


「どうした?」


「流れ星。あっち」


 あかねが指差した先で、再び星が流れた。


「おお、見えたぞ」


 荷台から乗り出し、兄が声を上げる。そうしている間にも、北の夜空を次々と星が流れていく。


「すげぇな。流星群だぜ」


 自転車を漕ぎながら、あかねは流れ落ちる星の軌跡(きせき)を目で追い続けた。兄もまた無言で、同じ光景を見ている。


「お母さんに、元気になってほしい」


 不意に口をついて出た言葉と共に、あかねの瞳から涙が(こぼ)れ落ちた。慌てて目を拭ったが、涙は止まらず、次々と頬を流れ落ちていく。


「それがお前の望みか?」


 風の音に交じり、兄の声が届いた。抑揚(よくよう)のない、低く静かな声だった。

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