表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
tokyo転生者 北区に住んでる光の勇者  作者: 氷川 泪
第一章 勇者降臨
46/202

敵味方

「きみは、魔族か?」


 耳元で声がした。驚いて肩越しに振り替えると、すぐ目の前に酔っ払い男がいた。きゃっと小さく叫ぶと、チャオは再び跳躍(ちょうやく)した。この世界の人間の走り幅跳びの世界記録は約9メートルだったはずだ。以前面白半分にネットで調べたことがある。チャオはそれより遠くへ跳ぶことができたし、スピードも格段に速い。追いつける人間などいるはずは無かった。


 だが酔っ払い男は追いついてきた。跳躍しながらも、チャオは男の動きを目で追っていた。男は左足で力強く地を蹴ると、三段跳びの要領でチャオの跳躍についてきていた。


「シィッ!」


 魔族かという男の問いには答えず、長く伸ばした爪で男の喉を突いた。素手で人を殺すと体が血で汚れて嫌だったが、この男を生かしておくわけにはいかない。


 必殺の間合いで放ったチャオの貫手(ぬきて)を、男はいとも簡単に(かわ)した。二撃目を放とうとした瞬間、男の右拳に鳩尾(みぞおち)を突き上げられ、チャオの体は宙に浮いた。


 猛烈な苦しみに、チャオは膝をついて腹の中のものを地べたにぶち()けた。柿沼に(おご)らせた高級ブランデーがほとんどだったが、最後に溶けかかった二十日鼠(はつかねずみ)を吐き出した。ミカが怒るから滅多に口にしないのだが、今日の昼にがまんできずに丸飲みしたものだった。


「貴様、殺してやる。絶対殺してやる」


 口を拭いながら男を見上げた。これほどの屈辱は初めてで、目からは涙すら(こぼ)れて来た。


「そうか。殺されるのは嫌だな。仕方ない。きみが死ね」


 驚いて男を見た。男はチャオが投げたスローイングナイフの刃を、チャオの首筋に当てている。


 殺すことには抵抗が無かったが、自分が殺されるのは想定外だった。油断したのだろうか?だとしたら何に油断したのか?自分と同等の力をも持つ人間などいないと高を(くく)ったのがまずかったのかもしれない。


 男に命乞いをしようとした瞬間、男がチャオから飛び退いた。男の立っていた地面から火柱が立ち昇る。


「これを()けるのか」


 路地の先にミカが立っていた。黒いパーカーのフードを被り、丸縁の黒いサングラスを掛けていたが、間違いなくミカだった。


「きみ、赤羽の強盗を捕まえた人ですよね」


 まるで知人だとでもいうような明るい口調で、ミカが男に声をかける。


「あの男の中にいたのは、あなたか」


 男がチャオから離れたのを確認すると、ミカはチャオの傍らに寄り添った。


「どうにも不思議な縁だねぇ、きみとは。どうだろう?お互い名乗りあう気はないかい?」


「ない」


 にべもない男の言葉に、ミカが首を(すく)める。


「冷たいですね。お友達になれるかもしれませんよ」


「人殺しが趣味の、ネズミを喰う女を飼ってる友達など欲しくはないな」


「なるほど。もっともですね」


 ミカの手が、チャオの髪に触れた。優し気な手つきだったが、チャオは恐怖に震えた。


「じゃあ、今日のところはお開きにしませんか?また今度、別の機会に殺しあうってことで」


「二度と会いたくないんだがな。そうはいかないか?」


 男の言葉にミカが思案(しあん)する。


「ダメでしょうねぇ。あなた強すぎる。さっきの攻撃をどうして避けられたのですか?」


「発火魔法は、発動する前に空気の匂いが変わる。慣れてしまえば絶対に喰らわない。知らないのか?」


「そんなことを教えてくれる人はいませんでしたよ。勉強になります」


 チャオを撫でていたミカの手が、激しくチャオの髪の毛を掴んだ。


「帰るぞ。馬鹿をしないよう監視をつけておいて正解だったよ」


 髪を吊り上げられ、チャオはミカの隣に並んだ。ミカはすでに男に背を向けて歩き出している。


「お前、だいっ嫌いだ。べぇー」


 チャオは男に向けて舌を出した。その顔を見て、男は(かす)かに笑った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ