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tokyo転生者 北区に住んでる光の勇者  作者: 氷川 泪
第一章 勇者降臨
42/202

邪魔者

 「どうしました?」


 路地の入口で声がした。振り向くと逆光(ぎゃっこう)の中に人影が見えた。


「なんでもないんです。すみません。行って下さい」


 チャオの言葉を聞いた柿沼が何か言いたそうに口を開く。声を上げたら口を(ふさ)いでやるつもりでいた。どうせ柿沼は死ぬのだから、高松の為にやったことにすればいい。


「そうはいってもなぁ」


 酔っているのか、足取りも定まらない様子で男が路地に入ってくる。場合によっては、このおせっかい野郎は本日二人目の犠牲者になる。


「血の匂いがする。誰か怪我をしているはずだ」


 どういう嗅覚をしているのだろう。反吐(へど)と小便の臭いが漂う路地裏から漂う血の匂いを、男は嗅ぎ分けたことになる。


 逆光の中から現れたのはスーツ姿のサラリーマン風情(ふぜい)だった。


「何それ。ダサっ」


 男の姿を見た途端(とたん)、チャオは素にになって声を上げてしまった。


 あろうことか男は、ネクタイを頭に巻いて右端から垂らしていた。黒革の安っぽいビジネスバッグを斜めに掛けたその姿は、日曜6時半のアニメでしか見たことがない、昭和の酔っ払いだった。


 チャオの視線に気づき、男は鉢巻(はちま)き替わりに巻いたネクタイに手をやった。


「やはり(だま)されたのか。すれ違う人が笑っていたから、おかしいとは思ったが」


 男は頭に巻いたネクタイを取ると、微笑みながらチャオに近づいてきた。


「日本のサラリーマンは、酒を飲んだらああするんだと教えられた。そうするとみんな、道を開けてくれるんだとね」


 意外にもまだ若い男だった。そしてチャオは、どこかでこの男を見たことがある。

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