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tokyo転生者 北区に住んでる光の勇者  作者: 氷川 泪
第一章 勇者降臨
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学習

 明奈がバイト先のコンビニで南条と出会ってから1カ月が経過した。異世界で光の勇者だった南条だが、この世界では幼い子供のようなものだった。


 まず第一に、南条は読み書きができなかった。何の不自由もなく日本語を話すことができるのに、簡単な文字も読めなければ、ひらがなも書けなかった。仕方なく明奈は、バイトが終わると南条の部屋へ行き、南条に読み書きを教えた。未成年が成人男性の部屋にひとりで行くことは奈緒が許さなかったので、隣室に住んでいる四歳の松本慎太と共に南条の部屋へ行き、慎太が持っている練習用のドリルで南条にひらがなを教えた。


 南条の覚えは速く、ひらがなに関してはほぼ2日でクリアした。ときどき「ね」と「わ」を混同(こんどう)するようで、そんなとき南条は「ねはネコ」、「わはワニ」と呟いている。その様子がおかしくて、明奈は笑いを噛み殺しながら、真剣な表情でノートに書きとりをする南条の横顔を見つめてしまう。




 二番目の問題は、この世界の知識を全く持っていないことだった。部屋の中に、真っ二つに切断された小型テレビがあった。テレビをただの黒い板だと思って、聖剣万能包丁の試し切りに使ってしまったと南条は笑って言った。隣の松本家にお邪魔して、テレビのスイッチを入れて見せたとき、南条は文字通り飛び上がって驚いていた。


 暗闇でも見えるようにする魔法はあるが、暗闇を照らし出す電灯は無い。遠くの街まで一瞬で移動する魔法陣はあるのに、鉄道も車も存在しない。そんな世界に住んでいた南条にとって、この世界は正に異世界だった。

 

 三番目の問題は、南条の生活をどうするかということだった。部屋があるのは判明したが、南条にはこの世界で生きていく知識も経験も持ち合わせてはいない。クレジットカードはおろか、紙幣すら知らない南条が、どうやってこの先、日本人南条民人として生きていけるのだろうか?どうにかなると南条は気楽に答えていたが、物がなければ物物交換をすればいいと考えている南条が、このままうまくやっていけるとは思えなかった。


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