表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
tokyo転生者 北区に住んでる光の勇者  作者: 氷川 泪
第一章 勇者降臨
37/202

亜人談義

「こんなこと言っては失礼だけど、まるでアニメの世界の話ね」


 奈緒が感慨深(かんがいぶか)げに言う。


「それはどうだろうなぁ。異世界だとしても、アニメとはちょっと違う気がするぜ?」


 真庭はアニメ好きだった。特に異世界転生系はあますところなくチェックしている。南条の語る異世界は、それなりに魅力的ではあったが、アニメ化は難しいだろうと思った。第一に暗い。以前に聞いた話と総合すると、光の勇者である南条は結局、魔王と相打ちになる。三賢者も死亡しているし、話の展開からして相当な(うつ)アニメとなる可能性が高い。


 女性キャラが少ないのも問題だった。せっかくの異世界なのだから、ハーレム状態で冒険するのが定番だろうと思う。そもそも異人種が多数登場するのだから、女性キャラがもっと登場するべきだ。エルフには美男美女が多いだろうし、亜人は頭の上に犬だの猫だのキツネだのの耳がついているはずだ。


「亜人ってのはどうなんだ?そのう、やっぱりあれかい?頭の上にモフモフの耳とか」


 さりげなく聞こうとしたがダメだった。隣に座っている奈緒の眼が赤黒く輝いたように見えた。30過ぎてモフモフかよ。口出さずとも奈緒がそう思っているのは明らかだった。


「いや、あれだ。CMとかでやってるだろう?うどんのキツネとかさ。あんな感じかなぁってちょっとだけ思ったりして」


 奈緒の全身から青紫のオーラが吹き上がったような気がした。フリーザの最終形態かよと思うほどの戦闘力だ。


「ええと、真庭さんは今、お幾つでらしたかしら?」


 冷ややかな声で奈緒が訊ねてきた。笑顔を浮かべてはいるが、真庭を見る目は笑ってなどいない。


「確かに亜人は可愛いな」


 笑いながら答えた南条に奈緒の目が向いた。汚いものを見る目だと真庭は確信した。奈緒はアニオタを嫌っている。


「亜人って、動物の耳を生やした若い女の子が、ほとんど半裸に近い格好してるあれですよね。その上だいたいが」


「巨乳。ですよね」


 氷で薄まったソーダを飲みながら明奈が答える。奈緒の怒りに火を注ぐ気なのか、明奈は空いている左手を胸の前で動かし、ボインボイィンと呟いている。


「お二人とも結構な趣味をお持ちですね。いえ、わたしは別に構いませんよ。人の好みは十人十色といいますし。ホホホ」


 奈緒の喋り方がますますフリーザに似てきている。


「亜人の子供は本当に可愛いんだ。まだ牙もろくに生えていないしな」


 遠くを見るような目で南条が呟く。


「牙が生えているのか?」


 思わず訊ねてしまった。アニメの亜人は大抵、人間の顔に動物の耳や尻尾がついているだけで、牙など見えない。


「当たり前だろう。亜人なのだから」


「そうだよな。牙くらいあるよな」


「亜人の大半は生肉が主食だからな。牙は必要だ。だが、あの口臭は耐えがたいな」


「口臭?口、臭いのか?」


「当たり前だろう、亜人なのだから。生肉を喰えば臭いも強くなる。だが彼らは歯を磨かない。亜人だからな」


「そうなのか。口が臭いのか」


「口だけではないぞ。基本的に亜人は水が嫌いだからな。風呂に入らないから体臭はきつい」


「体臭もきついのか?」


「そうだ。それとノミやダニが多いな。全身毛に覆われてるからな」


「ノミとダニ?いるのか?」


「そりゃあいるさ。真庭の言葉を借りるなら、毛だらけのモフモフが、森や草原を半裸で駆けまわっているのだからな」


「半裸っていってないよな、おれ。モフモフは言ったけどさ、半裸はおれじゃないよな」


 顔を真っ赤にして抗議する真庭の顔をみて、明奈と奈緒が笑いだす。


「それに」


「まだあるのか?もういいって」


「亜人にはトイレという感覚がない。基本森の動物だからな。だから気が向けば、ところ構わず」


「もういい。そこまでだ。見る目が変わっちまいそうだ。勘弁してくれ」


 腕時計に目を向け、真庭は立ち上がった。


「当直なんでな。そろそろ失礼する。とにかく、履歴書は体裁(ていさい)が整ってればいい。先方は当日、面接で決めるっていってたしよ」


 南条も立ちあがり、真庭に頭を下げる。


「手間をかける。ありがとう、友よ」


「堅苦しいな。ダチだってんなら、礼なんか言うな」


 真庭は笑いながら、テーブルの伝票を手にした。


「ここはおれのおごりだ」


 レジに向かって歩く真庭の背に、明奈がごちそうさまですと声を掛ける。


「ごちそうさま。ノミやダニにはせいぜい気をつけることですね、モフモフ好きの、ええと、失礼、お名前を失念してしまいました」


 自分の名前が奈緒の記憶から抹消(まっしょう)されていることを知って、真庭の全身は雷に打たれたように硬直した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ