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tokyo転生者 北区に住んでる光の勇者  作者: 氷川 泪
第一章 勇者降臨
27/202

釈放

釈放(しゃくほう)の日、南条を迎えに来たのは明奈だった。南条が勾留(こうりゅう)されてから、明奈は毎日、署へ顔を出した。この娘もまた、光の勇者南条民人の信者だと思うと眩暈(めまい)がした。アル中の妄想(もうそう)が解けたとき、南条はこの愛らしい少女にどう接するのだろうか?


「明奈、迎えにきてくれたのか。すまない」


 強烈な日差しの中、大きく伸びをする南条に明奈が近づく。


「お(つと)めご苦労様です」


「ありがとう。でも別にここに勤めるわけじゃないんだ」


 明奈のギャグを完全に素通りして、南条が答える。


衛兵(えいへい)は性に合わない。堅苦しいのは苦手だ」


 さわやかな笑顔を奈緒に向ける。


「川窪さんにも世話になった。また、会えるだろうか?」


 それは難しいと奈緒は思う。事件が無ければ、奈緒と南条の接点は無い。


「あなたが悪いことをしない限り無理ね」


「そうか。それは残念だな。衛兵に友人が二人いる。そういうわけにはいかないのか」


 奈緒と真庭を友人だといいたいのだろうが、それは無理だ。キャリアとSATの指揮官。二人とも普通の警察官ですらない。


「まあいい。生きていれば必ず会える。元気で」


 あっさりと別れを告げて立ち去ろうとする南条に、奈緒は怒りを感じた。


「家まで帰れるの?」


「大丈夫だ。太陽の位置で、だいたいの場所はわかる」


 真夏の太陽の下を、半纏(はんてん)に半ズボン、踏みつけてボロボロになった革靴を履いた男と、膝上の短いスカートを履いた女子高生のコンビはなかなかに人目を引く。


「明奈、走れるか?」


 走ってくんかい!思わず突っ込みを入れそうになる。


「え、無理かな。今日暑いし」


「そうか。なら背につかまれ」


 南条が明奈の前に膝をつき、背中を差し出す。


「ええっと、それもちょっと。子供みたいではずかしいかな」


 真っ昼間に、半纏男に背負われて歩くのは罰ゲームに等しい。


「仕方ないな」


 南条の(たくま)しい両腕が伸び、明奈の体を抱き上げた。


「きゃっ」


 明奈が上げた叫びには、半分くらいうれしさが混じっているように聞こえた。南条は軽々と明奈を両腕に抱きかかえていた。いわゆるお姫様抱っこだ。


「これでどうだ?」


「ど、どうかな」


 頬を赤らめ、明奈が(うつ)く。奈緒はちょっとだけ明奈がうらやましかったが、それ以上に怒りの感情が強かった。


「犯罪よそれ。逮捕します」


「えっ、いけないのか?」


 40キロに近いはずの明奈の体を、羽毛布団のように軽々と扱っている。筋力もさることながら、体幹(たいかん)のバランスが驚異的にいいようだ。


「犯罪行為では仕方ない。明奈、降ろすよ」


 壊れ物を扱うようにゆっくりと、南条は明奈を歩道に降ろした。


「時間はかかるが、歩いていくか」


 小さな妹の手を握るように、南条の手が明奈の手を握る。


「ちょっと待ちなさい」


 大人気ないとは思いながら、南条と明奈の間に割り込むと、ポケットから車のカギを取り出した。


「わたしが送ってあげる。未成年と成人男性を二人きりにするわけにはいかないもんね」


 奈緒は横眼で明奈の顔色を(うかが)った。邪魔をされて怒っているかもしれない。


「車で送ってくれるんですか?ラッキー。すっごい助かります」


 満面の笑顔で、奈緒の腕にすがって明奈が飛び跳ねる。明奈に嫉妬を感じた自分が恥ずかしくなって、奈緒は少しの間(うつむ)いた。

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