ルーム・ノヴァスの伝説 その6
タブレットの解読の6日目
講師ウマルが言う
「オグズの攻撃はやむことがなかった。
彼らは、メサス帝国の辺境を襲い、エネルギーを奪い、貢納を強要した。
同時に住民をさらって、自国領内で植物を栽培させた。
メサス帝国は辺境から徐々に弱体化していった。
辺境の住民は、メサスに従うことのメリットを失ったのである。
それでも、メサスは大陸中央で東西貿易のルートを抑えていたためまだ強大な富を蓄えていた。
メサスの戦略は、オグズに対抗する別の部族と同盟しオグズを挟撃することだった。
メルキトやサラカンなどと呼ばれる部族を傭兵として雇い、オグズに対抗させた。
オグズとの抗争は約100年続き、結局オグズは相続争いがもとで分裂した。
そこへ、メルキトの王ガタイが攻撃をかけると、オグズはあっけなく崩壊した。
しかし、そのことはメサス領内へのオグズ遺民の侵入を招いてしまい、メサスの衰退を早める結果となった。
オグズ遺民の侵入は帝国の治安の悪化を招き、その為帝国はオグズを傭兵として雇い、定住民にすることになった。
その為の支出は帝国の財政を悪化させる、という悪循環に陥ったのである。
オグズとの抗争が終結してから50年後、今度はメルキトとサラカンが連合して帝国を攻撃した。
帝国の若き皇帝ティムルタシュ3世は弱冠20歳で血気盛んであった。
帝国北方の大河アムナールの畔で決戦があり、皇帝は自ら先陣を切った。
その時、敵の放った1本の矢が皇帝の馬を貫き、皇帝は無念にも落馬した。
それを見た、オグズの傭兵たちは、一斉に身をひるがえし軍勢は四散した。
敗れた皇帝は、メルキトの幕舎に連れ去られ、身代金を要求されたのである。
メサス帝国では、反乱がおこり、皇帝を救うものはなかった。
要求を拒否されたメルキト、サラカン連合軍はティムルタシュ3世を処刑したのち、一気に帝国内に侵入し帝国は崩壊した。」
このようにして、古代世界は終焉を迎えたのである。
ここで、講師がウマルからオズメクに変わった。
オズメクは言う。
「中世が始まるのですが、中世とはどのような時代かと申しますと、一言でいえば権力の二重性の時代だった、ということです。
どういうことかと申しますと、遊牧民の国家が台頭し、世界の古い文明国家を支配した、武力で制圧した時代です。
かつての古代国家の上に遊牧民の国家がのしかかり、人々は、直接的には古い国家に従属しているのですが、その国家はさらに異民族の支配を受けている状態なのです。
では次回から、そのような遊牧民の時代について詳しく見てゆきたいと思います。」
やっと中世が始まるのだが、明日は進捗状況確認の日である。
私は、できればアラン教授に会いたくない、と思った。