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大問二〈中〉・理事長の予想

「気付いちゃってたかなぁ?」

 三人の背中を見送った神家は、ふふっと儚げに微苦笑した。

「そうですね……」鹿野川は笑みを消し、顎に手を当てる。「唄乃は人の言うことを少し鵜呑みにしがちですし、誰に対しても警戒心を余り抱きませんから……。ただ、望はどうでしょう。彼も人を疑うことをする方ではないでしょうが……何しろ、勘がいいのでね。直感とか、運とか、兎に角そういうのに恵まれた奴です。もう既に何かを察しているかもしれません」

「そうだね。あの子みたいな気質の子は、決まって重要なことにとても鋭いからね」神家は手持ち無沙汰になったのか、手元の大判の情報端末を弄り出す。そんな彼に、鹿野川は呆れたように溜息を吐く。

「余計かもしれませんが、それは貴方もです。理事長」

 鹿野川は表情を動かさずに告げる。

 彼は知っていた。他人事のようにああ嘯く彼とて、やはり常人ではないことを。

 神家はその言葉に、照れたように、自らの栗色の猫っ毛を撫ぜた。

「うわぁ、耕平先生に褒めてもらうのはやっぱり嬉しいなぁ。……それじゃあ。鋭いついでに僕も一つ、予想してみようか」

 鹿野川は静かに神家の方を向く。依然、神家の穏やかな表情は変わっていない。ただ、その梨色の瞳だけは怜悧な光を宿していた。

 ――何が、『あの子みたいな気質の子は』だ。カマトトぶりやがって……。

「きっと、寒太君に必要なのは、そんな鋭さじゃない。寧ろ、何にも気付かない鈍感さじゃないのかな」

「……さあ」

 鹿野川は、肯定も否定もせず、瞼をそっと下ろしただけだった。



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