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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第四章 草原の国 ”スケロス”
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4-6 墳丘

「おはようございます」


村の朝は早い。


日の出と共に農作業が始まる。


ターロ達も早く起きてきて、天馬の生息地を訊いて出立。


「きっと言われた場所には居ないだろうね」


村人たちが前将軍の息子を(かくま)っているのなら、彼の居場所につながるような事を態々(わざわざ)教えないだろう。


この村の北を流れる川の向こうは聖教国。


帝国以外で連邦に加盟していない国だ。


一神教を国教にしており排他的なので、連邦各国とは国交も貿易もない。


ただ、領土的野心はないようなのでお互いに不干渉の関係を保っていた。


その聖教国の南西に連邦の盟主国ケパレー、西には帝国の占領下にあるホーフエーベネが位置していて、ここスケロスは聖教国とケパレーの南に横長に広がっている。


その三国が接する地点の少し南側、草原が終わり山麓の谷や窪地になる辺りのどこかにペガサスの生息地があるらしい。


あまり知られてはいないが、ペガサスは泳げるほどの規模の水場に棲み着く。


翼を水面に広げて休む為だ。


長い首と大きな翼の所為で肩が凝る為だという。


(生き物としてどうなん?)


とターロは思ったが、前世でもサーベルタイガーの様な残念な進化を遂げた種もいたので、そう言う事もあるのかね、と納得した。


ともかく村から西に二、三時間の所に生息地は広がっているらしいので行ってみる。


「どの様に探すのですか?」


テュシアーがターロに訊く。


「話では愛馬と一緒に、父親の遺骸を奪って逃げたって事だったでしょ?」


その問に皆、頷く。


「じゃあ、今もそのペガサスと一緒にいるだろうし、戦後の混乱の中、遺骸と一緒に逃げる所なんて限られてて、ペガサスの生息地近くに潜伏、なんて噂も立ってる」


皆、ふむふむと聞く。


「きっとカルテリコスはそれほど冷静でいられる状況じゃなかっただろうから、ペガサスが本能のまま飛んで、行き着いた所に、親の墓を作って、それを守っていると思うんだ」


「確かにどこかで墓を作っているでしょうね。遺体と二年も移動するわけはないですからね」


メトドが言う。


「でしょ? でも、生活するには色々必要で、全て自給自足ってちょっと辛い。だから村人と最低限の付き合いがある。その村がさっきの村。村の人達に全て正直に話して会わせてもらっても良かったけれど、変に疑われて知らされたら逃げちゃうかも知れないから、やっぱり探しに行った方がいい」


といって、一同を見回す。


「でさ、生活するなら煮炊きはするでしょ? 警戒して目立たないように工夫するにしても、煙を全くなくすことは難しい。村の人は早起きだけど、本来なら今頃が朝食の時間だ。火を使うならこの時間帯のはず。だからこれからそれを見つけに行ってきま〜す」


と宣言すると、



レビテーション(空中浮揚)



詠唱してふわふわの浮かんでいく。


メトドは適当な岩を見つけ腰掛けると本を取り出す。


アウロは杖で素振り。


ドーラは近くを探検。


しかしテュシアーは、フワフワ昇っていくターロを見上げながら、


「あ、ああ、、、空を、、、」


口をパクパクさせて驚いている。


(ああ、これがまともな反応。久しく忘れていた)


メトドが小さく笑って、テュシアーに言った。


「何度も言うがターロ様の事でいちいち驚いていたら身が持たない。慣れなさい」


「な、、、慣れる、、、これにですか?」


テュシアーは納得いかないようだったが、結局は待っているしかない。


ややあってから、鼻笛の音が聴こえるので見上げてみるとターロが一点を指差している。


やはり村人から教えられた方角よりかなり西寄りだった。


メトドがそちらをみて。


「いた」


と言う。


降りてきたターロが、


「メトドさん分かった?」


と訊き、それに頷くメトド。


メトドを先頭に一同は歩き出した。


窪地と言うには深く、谷と言うには浅い様な場所に出る。


灌木が茂り、分け入っていくと小さめの湖に出た。


湖岸に沿って歩いていくと、高木が増えてきて森に入る。


そして半周位した頃少し開けた場所に出た。


明らかに人の手からなる、盛り上がった土。


その前にはまだ瑞々しい花が供えられていた。


木漏れ日がその小さな墳丘に落ち、小鳥の(さえず)りと、風が葉を小さく揺らす音以外何も聞こえない。


聖地の様な雰囲気に包まれている。


「沢山の精霊の気配が、、、、」


アウロが呟いた。


「ここだね」


ターロが静かにその前に(ひざまず)く。


皆もそれに習いターロの後ろで跪いて祈りを捧げた。


しばしの瞑想の後、


「何故そこで祈るのですか?」


不意に後ろから若い声が懸かる。


そこには草臥(くたび)れてはいるが、清潔な鎧下を付けた青年が立っていた。


剣を佩いているが抜刀はしていない。


身長はターロより少し低いくらいだろうか。


涼し気な一重の黒い目と艶のある黒い髪。


どれもこの国の民の特徴だ。


ターロは気付いていたようで振り向かずに言う。


「カルテリコスさんですね?」


「誰だ。何故我が名を知る?」


知らぬ者に名を呼ばれ、警戒した様に語気を強めるカルテリコス。


ここでターロは立ち上がって振り返り、(はか)を背にしてこう言った。


「あなたを迎えに来ました。共にお父上の潔白を証し、無念を晴らしましょう」

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