3-26 テュシアーの決意
「流石に眠いな」
徹夜したので軽い食事をとった後、仮眠を取る。
起きてから出立の準備を始めた。
次の目的地は草原の国、”スケロス”だ。
ここより北に位置する。
出立の前に、ブラキーオーンで手に入れた、帝国工作員スクピディが記したと思われる書類を精査することにした。
アルテューマ、サッカルも同席し、スケロスの現状と書類の内容を突き合わせる。
「なんだか、結構不味い状態なんじゃない? これ、内乱が治まったって言えるのかね?」
と疑問を呈するターロ。
「いいえ、これは当に獅子身中の虫。帝国と呼応されては大打撃です」
メトドも唸る。
アルテューマとサッカルも、隣国の騒動は治まったとばかり思っていたので、書類の内容に色を失った。
「これはいかん。オルトロス様に一刻も早く知らせねば」
アルテューマは自らケパレーに上ろうとするが、ターロに止められる。
「危険です。ゼーロに埋められていた蟲の例もあります。どこから此方の情報が漏れているか分からない。何通かに分けて手紙を送ったほうがよいかと思いますよ」
「そ、そうか、そうだな。族長会議もあることだし、そうしよう」
「勿論、スケロスには我々が行きます。まず反乱者とされている前将軍の遺児を探してみますよ」
そこへ扉が敲かれ、開けるとテュシアーが立っていた。
スケロスへ連れて行ってほしいという。
「どうして?」
ターロに尋ねられてテュシアーは、
「今回のことで、連邦が如何に帝国の脅威に曝されているのか分かりました。私も皆さまに同行してお役に立ちたいのです」
と応え、何故かメトドを一瞥すると顔を赤くして俯いた。
(( はは〜ん ))
色々と察したターロとアウロ、サッカルはニヤリとゲスな笑いを浮かべる。
だが父であるアルテューマは全く気づかず、娘の殊勝な心がけを褒め、
「よく言ったテュシアー。それでこそボレアースの血を引くものだ」
と旅立ちを許可する。
メトドはじっとテュシアーを見るのみだ。
「いけませんでしょうか?」
テュシアーはメトドに訊く。
「旅は、、、」
メトドがおもむろに口を開いた。
「楽なものではない。あなたのようなお嬢様に耐えられるとは思えない」
否定的なことを言われるが、食い下がる。
「耐えてみせます」
「死ぬかもしれない」
「はい!」
「毎日食べ物があるとも限らない」
「はい!」
「服だって何日も同じ物を着なきゃいけない事もある」
「はい!」
「寝ている所を魔獣が襲ってくるかもしれない」
「はい!」
ターロとアウロはこのやり取り、どこかで聞いたな、と思った。
そして今までの旅を振り返り、実際は、
死なないし、
毎日ターロがどっかから食べ物を見つけて来ては美味しく食べられるようにするし、
服を洗える場所はメトドが探すし、
野宿してもターロの結界で魔獣に襲われたりせず熟睡できるし、
、、、なんて事を敢えて言うほど空気の読めない二人ではなかった。
「ではともに参ろう。ターロ様、よろしいですか?」
「お、おう。もちろん。よろしくね」
急に話を振られて一寸動揺するターロ。
こうしてまた一人、旅の仲間が増えたのだった。
これで3章は終わりです。
次回は幕間。
アウロが精霊界に行っていた時の話です。
ご期待ください。




