3-25 アルテューマの説得
「この者達はいかがしますか?」
スザクに別れを告げ街に帰ろうと階段を降りると、ぐったりしているゼーロ達が目に入りメトドがターロに尋ねた。
「帝国に繋がってるっぽいこと言ってたから締め上げてはかせる?」
といって、軽くヒールをかけると、
「うう、、」
と目を覚ました。
「おい、おっさん」
自分も中身がおっさんである事を棚に上げて、ゼーロをおっさん呼ばわりするターロ。
「帝国が後ろを突く、とか言っていたよな。帝国と連携とっていたのかよ?」
まだ、ぼーっとしているゼーロは何を訊かれているのか分からずポカンとしているが、急に苦しみ始める。
「おおおおごごぉおがぁああ、ぼおっ、ごふっ!」
悶え苦しみ、のた打ち回った挙げ句、血反吐をでかくはいて事切れた。
「うげっ、汚ッ! 、、、なんなんだよ?!」
ターロがスキャンで調べると、
「しまった、、、。中に”蟲”みたいなのがいて、自爆しちゃったっぽいぞ。前にメトドさんが言ってた”嫌な気配”って、これのことだったのかぁ、、、」
ターロがスキャンした結果を皆に知らせると、アウロが気付く。
「先生。そういえば、海の国にいた工作員は、ゴロツキに取り付かせた”蟲”を通して見聞きしていたと言っていました」
「そうだったね。って事は内通者のこいつを監視する為に蟲を使っていたのかもね。 ここでの事もこいつを通して向こうに筒抜けかも知れないな。どのくらいの距離で有効なのか分からないけど、、、」
「”蟲”とは以前話にのぼった死人兵の、、、」
アルテューマも蟲の事を聞いていたので、話が理解できた。
「ならば、封印が解かれた事は知られたと思っておいたほうがよいだろうな。スザク様の事も」
「そうですね」
帝国が、いや天使達がどこからか伺っているような嫌な気分になる。
”蟲”は心臓の横にある魔嚢と呼ばれる臓器の下に付いていたらしく、それが弾けて胃が破けたので吐血したようだった。
勿論、心臓や魔嚢も損傷を受け、即死にちかい形で死んだ。
「味方に引き込んでおいてこんな物を仕込むって、、、。 非道えな」
ますます許せない、という思いを強くしたターロ達だった。
「死んだらみんな〜ホットケサマ〜、ほっとけないのよ〜」
ターロが例のごとく意味のわからない事を歌いながらゼーロの死体と吐いた血を、早速右手の炎を使って浄化した。
「我々は引き続きここに残ってスザク様にお使え致します」
そう言う神官達に見送られ、少し休憩した後、夜が明けないうちに一行は街へと出立した。
日が昇り始めた頃、街へ到着。
ドーラが英雄扱いをうけて困っていた。
「ぬししゃま、、、」
皆にもみくちゃにされたらしく疲れ切っている。
事の顛末をサッカルから聞いて、
「上手くやってくれたようだね。ありがとう」
ターロに頭を撫でられると、
「ん」
ドーラはやっと元気な笑顔を浮かべた。
居間に落ち着くと、アルテューマがサッカルに神殿での出来事を説明する。
「この地を砂漠から緑に戻す機会を、見す見す捨てたのか、、、?」
サッカルは言うが、アルテューマは、
「まあ聞け。急に砂漠が無くなったとして、この家はどうする?」
「どうするとは?」
「砂漠の中で暮らしやすいよう工夫がされている」
「そうだな」
「それが全て要らなくなる。要らないで済めばよいが邪魔になるやもしれんのだぞ。建て替えるか?」
「いや、、、急には無理だろう」
「建物だけではない。着るものもだ」
「、、、ふむ」
だんだんアルテューマの真意が飲み込めてきたサッカル。
「作物だってそうだ。このオアシスの周りで取れるものはもう育たなくなるだろう。そうなると新しい気候にあう作物の種だの苗だのから探さねばならん」
「、、、そうか、、、」
「食事もだ」
「食事も?」
「そうだ。今はこの暑い気候で食材が傷まん様に香辛料を多用しておるが、今後は新しい気候に合った料理法、味付け、全てを変えねばならんのだぞ」
「、、、考えるだけで大変だのぉ、、、」
「何よりな、、、」
アルテューマが、ずいっと身を乗り出す。
「冷えたジーソースが美味いのはどうしてだ?」
「む、、、この暑さ故だ、、、」
その答えを聞いてニヤッと笑うアルテューマ。
そしてそう答えておいて、これは賛同せざるを得ない、と両腕を挙げて首を振るサッカル。
(む、、、冷えたビールに釣られて賛成していいのかい?)
とターロは思ったが、あの飲み方を教えた張本人なのだから意見する権利はない。
だが、別の点を指摘しておく。
「他にも利点はありますよ」
「何かな? ターロ殿」
「今回の件で砂漠管理団は解散でしょう?」
「まあ、当然だな」
「その穴を新しい組織を立ち上げて埋めてもいいけれども、傭兵や冒険者を雇うのはどうでしょう?」
「傭兵?」
「そうです。今まで砂漠管理団の維持費として、隊商には通行税を課していましたよね? それを護衛の報酬を増やしたり、砂漠で狩って来た魔獣の死骸の買い取りに回すのです。そうすれば一攫千金を狙うものがこの国に集まりますよ」
「「なる程」」
「彼らが稼いだお金の一部は、彼らが冷えたジーソースを呑む事でこの国に還元されます。あの喉越しを知ったら、一働きした後に呑まないわけがない」
「「なる程!!」」
「魔獣の死骸の持ち込みだって、特産の革製品の材料を安定して確保する事につながる。こうやって、お金が循環する仕組みをつくってしまえば、あとは放っておいてもこの国はどんどん潤いますよ」
「「おお〜!!」」
砂漠で在り続けることは変わらないのに、未来は薔薇色に染まっている。
「ターロ殿は経済にも明るいのだな」
「え? こんな事、子供でも分かりますよ」
「まさか。ともかくこれで族長会議でも、簡単に事後承諾がとれるっであろう。ありがとう、ターロ殿」
アルテューマは族長会議で、スザクを中心とした新しい国の運営体制を構築し、連邦会議までに対帝国の意志を統一しておくことを約束してくれた。




