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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第三章 砂漠の国 ”オステオン”
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3-24 新たな砂漠の守り神

「あと、もう一つ聞きたいんだけれどさ」


右手の炎をおさめたターロが続けて尋ねたのは、


「スザクさんは封印されていて周りに影響を与えられなかったはずなのに、何でこの地は砂漠なんだろ?」


急に国の根幹に関わる大事が話題に上がり、聞き逃すまいとするアルテューマとテュシアー。


『確かに封印中のわたしは何も出来ませんでした。砂漠化したのは封印前の事なのです。召喚された炎の大精霊(イフリート)だったわたしが帰還の道を閉ざされ暴走した時にこの地の精霊達の調和が乱れた、、、と言うと足りませんね。”破壊”、といいましょう』


「え! スザクさん、イフリートだったの!?」


ターロとメトドが驚く。


何に驚いているのか? というアルテューマ達に、


「イフリートは最上級の火の大精霊、まさに魔神です。そういう意味では天使は嘘をついていなかった事になリますね、、、」


精霊に関しての知識は一般には広まっていないのでメトドが説明した。


『まあそこはどうでもよいのです』


衝撃の事実を強引に些末な事としてスザクは話を進める。


『乱された程度なら、時間はかかっても大概また元に戻ります。しかし、あのときのように完全に破壊されてしまうと、数百・数千年の時を経ないと戻ることはありません』


(ああ、環境破壊みたいな物か)


ターロは前世を思い出した。


『尤も、もう三百年経ちましたし、この封印装置による魔法無効結界もなくなりました。精霊魔法で皆に頼めば、調和を取り戻せるでしょう。 、、、わたしがいなければ、の話ですが』


「え? スザクさんがいると駄目なの?」


『はい。わたしはもう純粋な精霊ではありません。ターロに躰を貰った生命体。あなた達と同じこの物質界の生き物になりました。魔力を使い果たすと躰が無くなって精霊界に帰る、という存在ではないのです』


スザクは続ける。


『しかし、未だ大きな力を宿しています。もともとの大精霊(イフリート)の力に加え、暴走のきっかけとなった太陽の力も。それはわたしがいくら抑え込んでいてもこの地の精霊に影響を与えてしまうのです』


ですから、と更に続けた。


『わたしがいる限り、この地が精霊の力の調和を取り戻すのは無理でしょう。なので、わたしはこの地を去りましょう。これ以上この地を砂漠のままにして、皆さんに迷惑をかけるわけにはいきませんからね』


そういうスザクに、


「待ってください」


アルテューマが決然たる口調できりだした。


「私はこの地の有力氏族の長、アルテューマと申します」


名告りをあげ、続ける。


「スザク様。確かに砂漠は過酷な環境、住むのに不便も沢山ある。しかし我々は砂漠とともに生き、砂漠を愛しています。迷惑だなどとは思っていない」


スザクは真剣に訴えるアルテューマをじっと見つめる。


「それよりも急に砂漠が無くなってしまうほうが我々には困ったことになるのです。三百年かけて築き上げてきた文化、伝統が根底から崩れてしまうからです」


ターロ達も成程と頷く。


そしてアルテューマは神の如き霊獣に願った。


「スザク様、この砂漠とここに住まう者の守り神として、この地に御留まり頂く訳にはゆかぬものでしょうや?」


隣で聞いているテュシアーや神官長も、階段の下にいて固唾を飲んで成り行きを見守っている神官達も、同じ気持ちだ、というようにスザクを見つめる。


『そうですか、、、。わたしはあなた達のことをちっとも分かっていませんでしたね。ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいです』


ホッとする一同。


『ではこの鋼玉(コランダム)を私の住処としましょう。三百年も閉じ込められてはいましたが、なかなか居心地はいいのですよ』


霊獣(スザク)は悪戯っぽく笑った。


(この人間臭さは、ターロ殿より肉体を与えられたからか?)


とアルテューマはターロの方を見るが、見られた本人は、はい? というとぼけた顔を返す。


その顔を見たアルテューマは、きっとそうだ、と結論づけるのだった。

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