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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第三章 砂漠の国 ”オステオン”
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3-23 魂力”木鐸”

『解放してくれて、この躰をくれて、ありがとう』


美しい女性的な声だ。


前世で、笙という楽器があった。


その音色は鳳凰の鳴き声に例えられる。


そうかな? これって鳥の声か? と、その時は思った。


しかし今聞こえてくる、距離感の掴めない同時に複数の人が話しているような不思議な響きは、確かにあの楽器の音色を彷彿とさせる。


『新しい躰を得て、まだ制御できぬうちに無意識に飛び出してしまいました。貴方の右手を燃やしてしまったようですね。今直しましょう』


フェニックスから拳大の火球が放たれ、ターロのなくなった右手まで飛んだ。


それは手首に付くと掌の形になって、しだいに炎の勢いが治りそして完全に消えると、そこには元の右手があった。


「欠損再生、、、」


一同が驚く。


欠損再生は伝説の中でしか聞かない”奇跡”に等しい魔法だ。


「ああ、助かった、、、。正直、焦ったよ。ありがとう」


ターロが再生した手を開いたり握ったりして調子を確かめながら礼を言った。


『あなたの魂力に導かれて得た肉体と能力です。礼には及びません』


「俺の魂力に?」


何のことかね? とターロはメトドを見るが、メトドにも分からない。


分からないが思い当たることはあった。


「、、、木鐸、、、」


そうメトドが呟くと、


『そうです。ターロ。あなたの幾つかある魂力の中でも最も強力な物。それは、他者を最善の形へと導く力、、、』


フェニックスの言葉に、


「そんな力だったのですね、、、だからドーラも、、、そして我々の急激な成長も、、、全てはターロ様の魂力のお陰、、、」


今までのことを思い出して、納得のメトド。


しかしターロは、


「まさか、そんなことないっしょ。メトドさんもアウロも自分で考えて努力した結果だよ。俺の力じゃない」


と、否定する。


『ふふふ、、、しかし、わたしにこの素晴らしい躰を授けてくれたのは間違いなく、ターロ、貴方ですよ』


霊獣とも神獣とも崇められるフェニックスを顕現させて、親しく語らっている。


目の前の、あまりにも現実味のない光景に、アルテューマや神官長は口を開けたまま動けない。


テュシアーはまだ幻覚の続きを見せられているのかと疑っていた。


「そうだ。不死鳥さん、聞きたいことが、あ、その前に、なんて呼べばいいのかな?」


ターロが訊くと、


『好きに呼んでください。あなたはわたしにとって親も同然です』


「ええ〜、まだカミさんもいないのに〜」


『うふふ』


「「 ふふふ 」」


メトドとアウロは流石にターロとの付き合いが長いので動じる事なく、この幻獣と笑い合っている。


「じゃあ、名前を付けるか、、、」


ターロが意気込むと、


「いけませんターロ様」「駄目だよ先生」


二人に同時に止められた。


「な、なんでよ?!」


抗議するも、


「ターロ様には、名付けの才能がありません」


と、一刀両断される。


「ぐ、、、」


言葉に詰まるターロを流石に哀れに思ったのか、


「因みにどんな名前を思いついたんですか?」


とテュシアーが助けを出すが、


「、、、フェニ子」


墓穴を掘るターロ。


皆は二人が強硬に反対する理由を理解した。


メトドが宣告する。


「、、、駄目に決まっています、、、よく、何故、と聞き返せましたね」


少し怒っている。


心の師と仰ぐ人の駄目な部分が許せないのだろうか。


(メトドさん、、、心が強くなったのは嬉しいが、俺への当たりまで強くならなくても、、、)


複雑な気分のターロ。


「先生。もっと常識的で素敵な名前考えられないの?」


(アウロの言い草も、けっこうな精神攻撃だぞ、、、)


「じゃあ、、、不死子(ふじこ)、、、」


「どうして最後に”コ”を付けるんですか!」


「どこが常識的なの!」


二人に叱られるターロ。


神話のような厳かな雰囲気が台無しだ、とアルテューマ達は思った。


「あ、、、いや、前世では女の子の名前にはよく”コ”を付けたんだよ」


ターロは独り言のように言い訳をしている。


「、、、異世界の文化ですか、、、でも駄目です」


「じゃあ、、、」


「まだ考える気なんですね、、、」


「む、、、いいじゃないか、、、あ! ”スザク(朱雀)”! どお!? ”スザク”!」


『良い名ですね、、、』


フェニックスからの賛同をもらえて、勝ち誇ったような顔をするターロ。


ちょっとイラッとしたが、アウロはぐっと堪えた。


「じゃあ決定ね。でさ、スザクさん。この手なんだけどさ、なんか魔力感じるんだけれど、、、何?」


先程、訊きそびれた事に戻った。


『それは、私の一部です』


「ああ、そう言うことか」


それだけで納得するターロ。


「、、、どう言うことですか?」


なんだかまたとんでもない話をサラッとしている気配がして、恐る恐るメトドが訊くと、


「こういう事」


ターロが右腕を掲げると、右手が燃えだした。


「この右手を元に戻したんじゃなくって、スザクさんの一部を継いでくれたんだ。こんなふうに普通の手と、炎の手を自在に変えられるみたい。精霊樹の木刀は火を嫌って使えなかったから、こりゃいいや」


『流石ですね。並の人族ならわたしの分体に触れるだけでも燃え尽きてしまうでしょうに、移植できたばかりか、直ぐに同調までするとは』


不死鳥から肉体の一部を譲り受けた人族。


この人と、先程まで弟子二人に叱られていた男とが同一人物である、という事にアルテューマ達はどうしても納得いかないのであった。

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