3-21 皆、残る
「うわ、阿呆面並べてらあ」
ターロとアウロが階下に降りると、地下室に続く鍵のかかった扉の前で立往生している砂漠管理団員達が振り向いた。
「アウロ、風の精霊に頼んで、浮かせちゃえば?」
「はい!」
アウロが近くで待ち構えていた精霊に頼むと、ブワッと四方の採風塔から強風が吹き込んできて管理団員のところでぶつかり、ちょっとした竜巻を起こして彼らを巻き上げた。
「いくよ!」
「はい!」
師弟は駆け寄り、体勢を崩した者たちの急所に各々の武器を打ち込む。
背の低いアウロの捻り上げるような下からの突きは、受けた者には杖が伸びたように見えるだろう。
右手で狙いを定め、左手で絞り込みながら突き出してあたると同時にすばやく引き戻し残心をとる。
基本に忠実な動きでアウロは管理団員を次々と伸してゆく。
ターロは先ず、近寄りながらクロスボウを持った兵をフィンガーフリップブレットで封じておいて、残りを木刀で床に沈めていった。
「いいぞ、アウロ! 足捌きも出来てるよ」
「はい! 足の皮が剥けるまで反復練習しましたから!」
(、、、アウロはちょっとMっ気があるのかな?)
変な根性を見せるアウロにターロは心の中で少し引きつつ、周りを確認。
「あれ? これだけ? もう全部倒しちゃったのかぁ」
「稽古台にもなりませんね」
と一端の口を利くアウロ。
「あはは、そうだね。じゃあ、縛っちゃおっか?」
床で悶ている管理団員を俯せにさせ、後手にして親指を縛っていく。
そうしているうちに地下から神官達が出てきた。
「砂漠管理団が反乱を、、、」
全部聞こえていたので事態は把握しているが、だからといって全てを冷静に受け止められるわけではない。
「ターロ殿! 出てきたぞ! 娘も、メトド殿も! 二人共、、、無事だ!」
アルテューマが叫ぶのが聞こえる。
余程嬉しかったのだろう。
風の精霊の媒なしでも聞こえるくらいの大声だ。
「あはは、風の精霊が、アルテューマさんの声が大きすぎるって怒ってます」
とアウロが笑う。
仕事をとられた風の精霊が臍を曲げたらしい。
「じゃあ、上に戻ろうか? 残りは縛っといてください」
神官達に縄を渡し、ターロ達は階段を駆け上っていった。
祭壇の前に戻ると、無事を喜び合う父娘といつも通りのメトド、色々ありすぎて目を回しそうな神官長がいた。
「メトドさん。無事戻ってこられたね」
ターロの言葉に、
「はい。ターロ様の予想通りの仕掛けでした。内側の出入口脇に魔法陣がいくつかあり、一つを除いてみな停止していました。その動いていた魔法陣を切るとご覧の通り開きっぱなしになりました」
確かに円柱側面の扉型に凹んでいたところが開いている。
「それから、宝玉の真裏には、別の魔法陣がありました。恐らく宝玉と繋がっているのでそのままにしてあります」
「止めると封印が解けるってことかな?」
「そう思います、、、」
「じゃあ、後は俺がやるから、皆避難してください。できるだけ遠くに、、、。いや、この建物の下にも地下用水路がありましたよね?」
神官長の方を見ると、彼は頷いた。
「じゃあ、そこで水の精霊に頼んで守ってもらうのが一番安全かな?」
「いえ、ターロ様。私は残ります」
とメトド。
「何言ってんの。駄目だよ危ないから」
「それはターロ様も同じです」
(む、最近のメトドさんは主張が強くなってきたな、、、。いい傾向なんだけれど、、、)
とターロが困っているところへ、
「僕も残る!」
アウロまで言い出した。
それに同調するように、アルテューマもとテュシアーも、
「儂も残るぞ。族長が逃げ出してどうする」
「私も、残ります」
そして神官長まで、
「私にもここの長として、見届ける義務があります」
と続いた。
困ったターロ。
「み、皆さん、、、分かっていますか? 失敗したら大爆発かも知れないんですよ?」
「何度も言いますが、分かっています」
やはりメトドの主張が強い。
アウロはアウロで、
「大丈夫だよ。先生だから。先生が何とか出来なかった事なんて、今までなかったでしょ?」
と、何の憂いもない顔で言い放つ。
「、、、おいおい、アウロ君、、、」
(信頼が、、、痛い、、、)




