表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第三章 砂漠の国 ”オステオン”
84/678

3-20 その頃、街では、、、

「夕食までには間があるし、おやつでも食べていくかい?」


ターロ達が見えなくなっても門から離れず、まだべそをかいているドーラ。


その機嫌をとるようにサッカルはドーラをおやつに誘った。


「ん」


短く応えたドーラはサッカルと手をつなぐ。


(孫が出来たらこんな感じじゃろうか?)


可愛くてしょうがない。


「あらサッカルさん。お孫さんいらっしゃいましたっけ?」


すれ違う知り合いにそう訊かれても、まだ孫のいる年じゃない、と言い返す気もおきず、


「いや、今だけ預かってるのだ。本当の孫ならよいのだがな」


と、爺ボケしてみせる。


目指すは門からすぐの所にある小さな店。


そこでは木の実の蜂蜜漬を蕎麦粉の丸い薄焼き菓子(ガレット)に乗せて出す。


外の円卓(テーブル)で食べさせる半分屋台のような店だ。


普段ならこの様な庶民的な店には来ないサッカルだが、ドーラが気に入ったのだから仕方がない。


一昨日、見つけて一緒に入り、気に入ったので昨日も一緒に来た。


「そういえばドーラちゃん、今日は珍しく鞄を持っているな。どうしたのだ?」


サッカルが尋ねた通りドーラは、彼女の体には少し大きすぎる肩掛け鞄を斜め掛けにしている。


「ぬししゃまがもってろ、って」


「ターロ殿が? 何が入っているのか教えてくれぬか?」


ドーラが鞄を開けるとそこには縄が入っていた。


「なんじゃ? 縄?」


「ん」


短く返事をして鞄を閉じるドーラ。


どう言うことだ? とサッカルが首をひねっているうちに店につく。


席に座りお菓子と飲み物を注文。


程なくして、大きな丸皿にのったガレットと果実水が運ばれてきた。


果実水を一口、口にして、


「やっぱり、これは冷えている方がいいな」


とサッカルが言うと、ドーラに訊かれる。


「おじしゃん、まほうは?」


「すまん、ドーラちゃん。おじちゃん魔法の才能ないんだよ」


「じゃあ、どーらといっしょだね」


そのドーラの言葉に、サッカルは、


(なんて思いやりのある子なんだ)


と、泣きそうになった。


確かにドーラは詠唱魔法は使えないが、ドラゴンブレスを放てる事をサッカルは知らない。


そうやって、幸せな時間を過ごしていると、門の方から叫び声が聞こえてきた。


「砂漠管理団の反乱だ!」


街の者が逃げてくる。


「ドーラちゃん!」


サッカルはドーラを逃がそうとするが、彼女は騒ぎを全く意に介さず指に付いた蜂蜜を舐めながらお菓子を食べ終わってしまった事を心底残念そうにしている。


「ド、ドーラちゃん、、、逃げないと」


もう一度サッカルが言うが、


「だいじょーぶよ」


やはりドーラは平気な顔をしている。


こんな小さい子にはこの状況が分からんのも仕方ない、こうなったら担いででも逃げるか、とサッカルが腹を括ったその時、


「サッカルがいたぞ!」


「こんな所で暢気に孫と菓子など食っているとはな。探す手間が省けた」


砂漠管理団に包囲されてしまった。


「! 儂を狙っておったのか?!」


「お前だけではない。族長の親族は皆殺しにしろという命令でな。悪く思うな!」


そう駱駝にのった上官らしき男が応えた。


駱駝の騎兵は全部で四人。


残りは歩兵だ。


全部で六十以上いる。


神殿に向かった者以外の全員で攻めてきたという事になる。


これだけの数だ、衛兵には止められなかったのだろう。


彼らが無事でいればよいが、と、サッカルはもうすぐ自分が殺されるかも知れないのに他人(ひと)の心配をしていた。


その横でピョンと椅子から降りたドーラ。


サッカルが止める間もなくトコトコ前に出て大きく息を吸い込み、


「きゃ〜〜〜〜〜ぁ!!」


サッカルはドーラが恐怖のあまり悲鳴をあげたのかと思い、


(ドーラちゃんだけでも何とかして逃さねば、、)


などと考える前に異変が起きた。


ドン、、、ドン、、ドン、ドンドンドドドドドダダダダダダァ!


地面から拳を握った腕が生えて歩兵を殴り飛ばしていく。


よく見るとその百本ほどの腕は土でできていた。


三回目の悲鳴が響き終わる頃には自分の足で立っている歩兵は一人もいなくなった。


残るは駱駝に乗る騎兵四人のみ。


ドーラが、


「らくだしゃん!」


大きな声でいいながら掌で”伏せ”の合図を出す。


駱駝はビクッとしたかと思うと乗り手の制馭(せいぎょ)を完全に無視して伏せた。


そこへドーラが卓上の皿二枚を手に取り円盤投げの要領で騎兵に向かって投げ付ける。


ビュン、ビュンッ


目で追えないほどの速さで皿は飛んでいき、右と左それぞれの端にいた騎兵を吹き飛ばした。


呆気にとられる真ん中の騎兵に、ドーラの飛び蹴りが炸裂し、もう一人も巻き込んで何メートルも転がっていく。


四人の騎兵は自分たちに何が起きたのかを理解する間もなく、()されてしまった。


ドーラが椅子から降りて一分も経っていないだろう。


こうして砂漠管理団の反乱は部隊を街中で展開させる事もなく終わりを告げた。



我に返った住民から歓声があがる。


「ドーラちゃん、、、こんなに強かったんだね、、、」


腰が抜けそうなサッカル。


「うん。どーら、つおいの」


と言ってから、


「これ」


とサッカルに鞄の中の縄と切断工具、そして、手紙を渡してきた。


(手紙?)


開くと、縄を使って親指を縛る拘束方法と、ドーラに冷たい物・甘い物を食べさせ過ぎないように、と書いてある。


(この事態を予測していたのか?)


サッカルは改めて樹海の魔術師の力を思い知らされたようで空恐ろしくなった。


手紙から顔をあげると、ドーラがへたり込んでいる店の者に、


「おさらわったの、ごめんなさい」


と謝っている。


サッカルはやっぱり、


(なんていい子なんだ、、、)


と、泣きそうになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ドーラ、超かわいい!ハート
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ