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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第三章 砂漠の国 ”オステオン”
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3-17 政権簒奪

「何をしているのか知らんが、もういい。さっさと動け」


ターロにクロスボウを向けそうゼーロが脅す。


アウロを背中にかばいながら、


「やっと本性を出したか」


というターロに、


「ふん、分かっていたような口を利くではないか」


「分かっていたさ」


「強がるな! いいからそこをどけ!」


声を荒らげ、命令するゼーロ。


横にいるテュシアーの頭にクロスボウをぐいと押し当てる。


それを見てターロとアウロはおとなしく横へ移った。


「ふん、最初からそうすればよいのだ!」


ゼーロと団員の一人が、テュシアーとメトドをクロスボウで押しながら封印装置の前まで連れて行き、


「次の十年、いや二人なら二十年か? お前らのお陰で封印は守られるのだ、ありがとう、よッ!」


凹みに二人を押し付ける。


すると、扉のような形の凹みは薄く発光し、二人はそこに吸い込まれていってしまった。


「! ターロ殿!」


アルテューマが叫ぶ。


しかしターロは落ち着いていた。


「大丈夫です。計画通りだ」


それを聞いてゼーロが怒鳴った。


「何が計画通りだ! 負け惜しみも大概にしろ!」


「キサマ! こそこんな事をしてただで済むと思っているのか?」


アルテューマが問い質す。


「ただで済むかだと? お前らを皆殺しにすれば問題なかろう?! もうこの国をお前らなんぞに任せてはおけん。以後は我々が統治する! お前ら氏族長には死んでもらう。神官ももういらん。全て我らが支配するのだ!」


クーデター(政権簒奪)かよ。成功するわけないだろうが」


馬鹿にするようにターロが鼻で笑う。


「成功する! 今頃、ボレアースの街は残った者が制圧しておる! そしてここに合流の後、残りの三都市も情報がいく前に制圧してまわればいい。部族の主だった者を殺してしまえば残りは烏合の衆だ。何とでもなる!」


「オルトロス王が黙っているわけなかろう」


半眼でアルテューマが指摘するも、


「ふはは、愚かな。ケパレーから打って出れば背後を帝国軍に突かれるわ!」


と高笑いするゼーロ。


呆れた様にターロは言い放つ。


「へっ、なんだよ。帝国の工作にノッただけか。結局いいように使われているだけじゃねーか。お前馬鹿だな」


その言葉にゼーロは激昂した。


「ふん。馬鹿はこの国の民だ! 砂漠の平和は我らの日頃の管理のお陰だ! それを金が掛かりすぎるだの、なんだのと煩いことをいいおって。挙げ句の果にはこんな魔術師風情に任せろだと! エルダーを仕留めたくらいで、チヤホヤされていい気になりおって! 我らの地位を毛程も脅かすものは許さん! 殺してやる!」


最後にゼーロの本音が出たのを聞いて、ターロは汚物を見るように言う。


「うわっ嫉妬! おっさんの嫉妬はどこの世界でも見苦しいな」


「ウルサイ! 多勢に無勢だ! 勝てるつもりでいるのか?!」


「はあ? 俺たちが魔術師だって分かってんの?」


「ふん。バシリスクに止めを刺したのは、奴だろう」


と言って祭壇の方を指差す。


「だが、あいつはもうおらん。それにここは魔法無効空間だ。お前らだけではどうにもならんぞ!」


「救いようのない馬鹿だな」


ターロは、もう話すのも面倒だ、とばかりにうんざりとした顔で短く詠唱。



【フィンガーフリップ(指弾)ブレッツ】



バッシュ! バヒュッ! ビシッ!


鋭い音が響いたかと思うとターロから離れた位置にいた砂漠管理団員三人が次々にクロスボウを落として、(うずくま)り呻く。


それぞれ、肩・手の甲・腕に穴が穿たれている。


何がおきたのかと気を取られた近くの団員の鳩尾にアウロが杖で突きを食らわせ昏倒させる。


特訓の成果があり、杖の扱いが上手くなっていた。


ターロも同じ様に木刀で一人を倒し、


「おいマヌケ。後はお前だけだぞ」


と行って、ゼーロのクロスボウに木刀を振り下ろし粉砕した。


「な!」


一瞬の出来事に理解が追いつかないゼーロ。


アルテューマと神官長も凍ったように動けない。


「な! なぜお前はこの空間で魔法が使える!?」


「魔道具で俺たちを嵌めるのに失敗した時、よく考えていればこんな事にはならなかったのにな。はい、残念でしたぁ~」


まともに相手をするのも面倒だと、ターロは嘲笑いながら鳩尾を突き、ゼーロを気絶させた。


「、、、何がおきたんだ?」


やっと立ち直り言葉を出せるようになったアルテューマ。


「あの大通りでやった事と同じですよ。ちょっと工夫しましたが」


とターロは事も無げに応える。


フィンガーフリップ(指弾)ブレット。


あの時、魔法無効空間でも体内で完結する魔法として使った、ストレンクスン(強化)ピンポイントスロー(精密投擲)に、ヒール(治癒)も加えて組み直したターロの独自魔法(オリジナル)だ。


あの日の夜、何故か腕が痛くなった。


この痛みは知ってるぞ、とよく考えたら筋肉痛だ。


思い当たるのは強化の魔法。


思ったより体に負担をかけるようだ。


だったら使った側から治療すればよい、と考えたが流石に三重詠唱は面倒なので、三つを組み合わせて一つにしてみる。


そして、この魔法用に小さな鉄の弾も用意しておいた。


隠し持てて、小さな動きで繰り出せるので便利だし、意外と威力がある。


射程が短いのが欠点だが、この魔法を使うのは大抵屋内になるだろうから何の問題もないだろう。


「ここへ来る時、結界に入ってすぐに体内の魔力を操れるか試したら大丈夫だったんで、あの魔道具の影響下と同じで使えるな、って」


「ああ、あのときの ”こっちも大丈夫” とは、そういう意味だったのか」


と得心するアルテューマ。


「全員の手の甲を狙ったんすけど一人にしか当たらなかったなあ。やっぱメトドさんみたいにはいかないや。もうちょっと練習しよう」


そう言って、ターロはそのメトドが吸い込まれた封印装置に目をやるのだった。

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