3-16 祭壇前にて
「見えてきたな」
砂漠を行くこと三時間弱。
特に何事もなく、進行方向に神殿が見えてくる。
採風塔が四本もある立派な神殿だ。
神殿の周りには、そこで働く神官たちのものであろう住居なども確認できた。
「そろそろかな」
「何がですか?」
ターロのつぶやきにテュシアーが反応する。
「魔法無効の結界に入るのがですよ」
封印装置を弄らせないようにと天使が結界を施したのか、火の精霊の暴走を止める際、副次的な効果としてそのような結界が張られてしまったのか、そこのところは分からない。
ともかく大賢者の情報から、神殿を中心に結界が張られているということは前もって分かっており、迎えの神官にも確認をした。
「結界の内側に入ったようです」
メトドが言う。
「アウロ、精霊は?」
「僕から魔力を伸ばして接触することは出来ませんが、周りにいるのを感じます。向こうからきてくれて、街中より風も多いし特に問題ありません」
手伝う気満々でアウロに絡みついているようだ。
「そりゃ良かった。こっちも大丈夫そうだから、計画通りで」
というターロにメトドとアウロは頷く。
「計画通り?」
アルテューマが訊くが、少し先を行くゼーロ達の方を見てターロは言う。
「今は言わないほうがよいでしょう」
その視線に気付いて、なる程、と納得するアルテューマ。
程なくして神殿の前に到着した。
遠くから見ても立派だったが近くで見ると尚の事、見事である。
立方体の側面が正しく四方に正対しており、その立方体の辺に当たるところに四本の採風塔が配置されている。
二階としてもう一段、一回り小さい立方体がのっていて、大小の骰子が積み重なったような形をしている。
その二段目の更に上に封印装置があるらしいが、正面玄関のすぐ前に立つ一行からは勿論見えない。
駱駝を降りると扉が開き、中から神官服を着た人達が出て来た。
「ようこそお越しくださいました。お待ちしておりました」
皆深々と頭を下げる。
「で、此度魔神の許に行かれるのはどなたでしょう?」
着ているものから高位であることが伺える神官が歩み出て尋ねる。
「私です」
テュシアーも、一歩出て応えた。
「神官長殿、その前に、」
とアルテューマ。
「ここにいる樹海の魔術師殿達に、祭壇を見てもらいたいのだが」
大賢者の例もあるので、承諾され、皆で中にはいる。
神官は十名ほど。
砂漠管理団は、二十名ほど来ている。
管理団全体で八十名位なので、四分の一も参加している事になる。
そしてターロ達三人と、アルテューマに、テュシアー。
全員が入れるほど、神殿は広かった。
入り口を潜ると正面に大きな階段があり、登りきったところに扉がある。
その扉をでると、一段目の上に出る。
二段目をぐるっと回ると丁度出てきた扉の面の裏にまた階段があり、その上に祭壇とされている封印装置があった。
流石に上には全員ではいけないので、神官長、アルテューマとテュシアー、ターロ達三人と、ゼーロ及び砂漠管理団員の五人で上がっていく。
「これが祭壇です」
最上階は十二人が立ってもまだまだ余裕がある。
封印装置は真っ白な円柱形をしていて、何の装飾もない。
直径二m、高さは三mあるかないか、といった所だ。
一箇所だけ人の身の丈ほどの扉のような凹みがあるが、扉ではなく握りも何もない。
そして、その上に人の頭程はあろうかという、大きな赤い宝玉が埋め込まれている。
(これはファインセラミックスみたいなものかな?)
触ってみて、ターロは思った。
明らかにこの世界の人族の技術力を上回っている。
装置には継ぎ目もなく、硬度も高そうだ。
これなら砂漠で何百年と吹曝されても問題ないだろう。
「アウロ。あの宝玉に触ってもらってもいい? ちょっとでも危なそうだったら撤退ね」
ターロはアウロを肩車をしてやる。
肩車されることが嬉しいらしく妙に張り切っているアウロは、宝玉に手を重ね目を瞑って集中。
また魂を持っていかれないかメトドが注意深く見守る。
「大丈夫?」
「はい」
ターロの問いかけにアウロは目を開いて応える。
「でも、上手く接触できません、、、。何か膜のような物に被われているんです。暴力的な言葉にならない意思は感じられるのですが、、、」
そう言って手を離した。
「そうなんだ。やっぱり封印が働いているうちは接触は無理かな〜。 って言うか、自我も崩壊しているのかな?」
「膜に阻まれていなくても会話できない感じでした」
と、アウロ。
「ああ〜、じゃあ、接触しても意味ないって事か。、、、だから大賢者様は封印を解かなかったんだな、、、じゃあどうすりゃいいんだ?」
と言いながら、肩車からアウロを降ろして振り返ると、
「もういいだろう」
ゼーロ達、砂漠管理団の面々が弩をアルテューマ達に突き付けていた。




