3-13 手妻の種明
「アルテューマさん、、、」
部屋にはアルテューマ、サッカルと、ターロ達しか残っていない。
見届け人たちも、アルテューマへの言葉が見つからず、無言のまま退室していた。
だがターロの言葉は慰めの言葉ではなく、
「お嬢さん、、、態と選ばれましたね?」
その意味が分からずアルテューマは訊き返す。
「態と?」
「はい」
サッカルも話に入る。
「態と、と言うが、小石の籤で選んだのだ。選ばれようと思って選ばれるようなものでもないだろう?」
「いいえ、違うんっすよ。お嬢さん、石の確認しましたよね? あの時細工をしていました」
「? まさか、、、」
「本当です。赤い小石を戻す時、薬指と小指で握って隠し持っていた白い小石を袋の中で落として音をさせただけで、赤い小石は持ったまま袋から手を引き抜いたのです」
そう言ってコインを取り出したターロは、手品のパームという技術を使ってそのコインを出したり隠したりしてみせた。
「「 おおおっ! 」」
アウロとドーラがそれを見て興奮している。
この世界には本物の魔法があるのに、それでも手品がウケるのはちょっと意外だった。
後で教えろと激しくせがまれるだろう。
前世で塾講師だったターロは、簡単な手品を幾つか覚えている。
入塾したばかりで緊張している子を寛がせたり、学習意欲の低い子の気を引いたりするのに便利だったからだ。
態とらしく、はい今から手品やるよー、というのは駄目で、何の前触れもなく消しゴムを消して意外なところから出してみせたりするのがよい。
子供とは不思議なもので、勉強以外の事で”この人なんかすごい”と思った大人の言う事は素直に聞くようになる。
そのきっかけとして、手品はかなりの効果があった。
もう一回、もう一回、と五月蠅い二人を見て、
(手品は時空を超えて子供に人気があるのな、、)
と、ちょっと前世を懐かしむターロ。
こっちの騒ぎとは対象的に、深刻な面持ちのアルテューマ達。
「そういえば、、、」
とサッカルが口を開く。
「儂が留守の間、商会にテュシアーが訪ねてきてな、高価な小振りのシミターを買っていったそうだ」
「砂漠の民の嗜みだ。特にテュシアーはシミターの腕が立つ。新しいのを一振り求めたところで不思議はないだろう?」
それがどうした? という顔のアルテューマに、そうではない、とサッカルが、
「普通の物を買ったのならなんでもないが、”魔物”にも効き目がある魔力の備わったもの、と言って探しに来たそうだ」
その希望内容と思いつめたような様子が異常だったので、応対した店員は念の為サッカルに報告した。
「まさか、、、」
「ああ、そのまさかだ。あの子は”魔神”と刺し違えるつもりで、生贄を買って出たのではないのか?」
二人の話に、
「その刀は本当に魔神に効果があるような物なのですか?」
メトドが尋ねると、
「いや、肉体強化や防御力上昇の加護がついているだけだそうだ。そもそも魔神殺しの武器など、いくら族長の娘とはいえその小遣い程度で買えるわけがない」
そんなサッカルの返事を上の空で聞いているアルテューマが呟く。
「腕が立つからと言って、、、、本気でそんな事を?」
「本人に真意を聞いてみればいい」
子供二人に散々手品を見せてやって、じゃあ自分でやってみなよ、と硬貨を渡す事で解放されたターロが、扉の方を指した。
「テュシアー!」
そこには父に名を呼ばれた娘の姿があった。




