3-8 こんな手を使った
「この人、俺の知り合いでさ〜」
「あんたやっぱ凄えな!」
隊商で知り合った護衛や商人も野次馬の中に紛れていたらしく、こんな称賛の相手を一頻りさせられた後、メトドが、
「本当にどんな手を使ったのですか?」
と尋ねた。
「どんな手? ゼーロもそんな事を言っていたが、どう言うことだ?」
アルテューマやサッカルにはメトドの質問の意味が分からなかったが、
「ああ、あいつ等、なかなかひどい連中ですよね。取り巻きの一人が魔法を無効にする魔道具を持っていたんっすよ。それの効果で魔法が使えない所を野次馬に見せて我々を詐欺師に仕立てた上で、自分らの必要性を印象付けよう、って魂胆だったんでしょうよ」
汚いものの事を話すような顔でターロが言った。
「そんな事を! 気付かなかった、、、」
驚くアルテューマとサッカルだが、
「それで、どうやって魔道具を無効にしたのですか?」
ゼーロ達の狡さ等どうでもよく、ターロが何をしたのかにしか興味がないメトドが重ねて尋ねる。
「あの魔道具さ、空間の魔法を打ち消すだけで、体内の魔力には干渉出来ないみたいだったからね、、、」
アルテューマがコインを投げる少し前、皆がアルテューマの手元に注目している隙きをついて、
【ストレンクスン・ピンポイントスロー】
と二重詠唱。
前もって拾っておいた小石を中指で弾き飛ばした。
小石は手杖を持つ男の肘にめり込む。
男は堪らず魔道具を落とした。
魔力の供給が断たれ、魔道具の効果が無くなったところで、硬貨は投げられ、メトドの詠唱、コインを射抜いた、という流れを説明した。
「そんな事があの裏で、、、。 彼奴ら、湯水の様に維持費を使っていると思ったら、自分らのくだらぬ面子を保つ為にそんな貴重な魔道具を買っておるとは、、、捨てては置けぬな」
アルテューマが渋面を作って言う。
「まあ、あんな奴らでも役に立ちましたよ。メトドさんの精密射撃の腕がどれだけ上がったか確認できました。さすが、いい”目”を持っているね。あれは俺にも出来ないよ」
などと暢気に言うターロ。
「タ、ターロ様、、、失敗していたらどうするつもりだったのですか?」
「魔法が使えることが証明できりゃいいんだから、問題なかったでしょ。まあ、俺は失敗するなんて、毛ほども思ってなかったけどね。メトドさんはもっと自分に自信を持ったほうがいいのになあ」
(、、、流石は我が心の師。私をそこまで信頼し、成長を促してくださるとは、、、)
メトドは無言で深々と頭を下げた。
「空中の硬貨を射抜くのなんて、今のメトドさんには朝飯前でしょ? 実際は昼飯後だけどさ、あはは」
また変なことを言っているターロだが、メトドもアウロも薄く笑って流せるくらいには慣れてきた。
「でもさ、さっきはメトドさんが珍しく自分から前に出たから、ちょっと吃驚したよ」
と思い出したように言うターロ。
「あの時は魔道具に気が付きましたので、、、それと、あのゼーロという男からは、とても嫌な気配がしたのです」
「うん、嫌な奴だったね」
「いえ、、、性格がどうの、ということではなく、、、なんと言うか、”蟲”に感じたような嫌な感じです」
ええー気付かなかったなあ、何だろう? と、首を傾げるターロ。
アルテューマが興味を引かれたように訊く。
「蟲とは?」
そこで、ブラキーオーンでの死人兵の一件について簡単に説明した。
「恐ろしい、、、そんな物を連邦全土で使われては、、、」
「そうですね。だから帝国の工作は見つけ次第潰さなくてはならないのですよ。邪魔が入っちゃったけれど、その為にも、中央公館へ急ぎましょう」
と先を促すターロ。
目抜き通りをそのままいくと、立派な採風塔を備えた建物が見えてきた。
「ここが中央公館だ。街の資料室もあるし、私の執務室や儀式の間もある」
そう言ってアルテューマは扉を開けた。




