3-6 メトド、口を滑らす
「その後継者というのは、此方のターロ様です」
メトドが思わず口を滑らせた。
「なんと!」
アルテューマとサッカルはそれに驚く。
「メトドさん、、、、内密にって事だったじゃん」
「は! そうでした。っも、申し訳ありません!」
平謝りするが、
「まあ、言っちゃったものはしょうがないや。お二人共、色々とあって俺が大賢者の遺産を継承することになりましたが、これも色々あって、連邦会議まで内密ってことになっているんですよ。くれぐれも、他言無用に願いますね」
「あ、ああ、約束しよう」
伝説の大賢者の遺産を継ぐ者が目の前の男だと急に知らされ、どうした良いのかわからないという体の二人。
ターロはそれを流して話を進める。
「で、サッカルさんがテュラーに行っていたのと、大賢者様とは、どんな関係があるのですか?」
「っそ、そう、その事です」
大賢者の後継者と聞きサッカルの口調が改まるが、
「サッカルさん、お願いです。今まで通りで。周りが変に思います」
と、ターロに強く言われ戸惑いつつも承諾し、
「そうか? では、そうさせてもらおう、、、で、儂がテュラーに行っていたのは、儀式に必要な物を揃えるためだったのだ」
「儀式? ではまた宝玉が?」
「そう。赤くなった。五日前のことだ」
アルテューマがいう。
神殿から宝玉が赤くなったとの知らせを受け、すぐにテュラーに赴き儀式に必要な乳香や香木オリーブオイルなどを揃えて戻ってきたのだという。
「え? じゃあ、こんな酒盛りしている場合じゃないんじゃ、、、」
「まだ二十日以上ある。何か問題でも?」
(砂漠文化の時間にのんびり、は、此方の世界も一緒か、、、)
元日本人のターロには馴染ぬが、文化なのだから仕方がない。
「今回の生贄は、我が氏族から選定することになっている。半世紀以上も途絶えていると、本当にやらなくてはならないのか? とも思うが、年寄り共が、口を極めて儀式の意義を説いてくるものでな、、、。 行わねば、本当に世界が滅びるのだろうか?」
少しうんざり、といった感じでアルテューマがターロに尋ねた。
「もし封印が解けて、火の精霊が暴走すれば、世界の滅亡は大げさですが、ここら一帯は消滅するでしょうね。天使が制御できなかったのです。それくらいの力はあると考えておいたほうがよいかと。封印がどういった類の物かは分からないのでなんとも言えませんが、封印されていて尚、この地域一帯が砂漠化するほどの力です。それが解放されれば、、、」
推して知るべし、という訳だ。
「、、、、むうう、、、やはり、生贄は必要か、、、」
と嘆息するアルテューマにターロは言う。
「いや、それとこれとは話が別ですよ。そんな悪習、無くさなきゃ。ただまあ、無用な混乱を避けるために、形だけでも選んでおいた方がよいかも知れませんね」
「そうだな。いくらターロ殿が大賢者様の後継者だと言ったところで、老人共は信じぬだろうし、宝玉が赤くなったことは、神殿の者にも砂漠管理団にも知れておる。取りやめるなどというと、混乱は避けられぬからな。ここだけの話にしておこう。しかし、何か方策はあるのか?」
「済みません。実物を見てみないとなんとも、、、大方の予想は付いているのですが。神殿に行けますか?」
ターロに訊かれてサッカルがこう提案した。
「生贄の護衛、という形で神殿に付き添ってもらうのはどうだろう? 樹海の魔術師殿達の実力は皆知っているから、疑義を抱くものはいないだろう」
アルテューマも同意を表して頷いた。
「分かりました。それはいつになりますか?」
「生贄を選んでから二、三日後だな。生贄を選ぶのにも儀式があってな。丁度、今日の夜だ。立ち会うか?」
「良いんですか?」
「ああ。私の招待だ。誰も文句はいわん」
とアルテューマ。
「では、それまで調べものをしたいのですが、、、」
「うむ。街の歴史などを記したものは、全て、中央公館にある。儀式もそこで行うぞ。今から行くか?」
「お願いします」
といって、酒臭い面々は立ち上がるのだった。




