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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第三章 砂漠の国 ”オステオン”
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3-4 禁呪? 解禁

「儂は先ず、仕事を片付けてくる。それから街を案内しよう。いや、宿をとるなどと言わずに我が所で羽を伸ばしてほしい」


そうサッカルが強く言うので、ターロたちはお世話になることに。


町の中心から少し離れるが、おそらく富裕層の住宅街なのだろう。


立ち並ぶ立派な屋敷の中でも一際(ひときわ)大きい屋敷に案内された。


夜一夜(よっぴて)の移動だったので、水で体を綺麗にしてから、仮眠。


あれだけ寝ても、ドーラは寝られるようだ。


昼頃になってサッカルの従者が起こしにきた。


そのままサッカル邸で昼をご馳走になる。


「町の食堂より美味いものを出すぞ」


との事だ。


床に座り大皿を皆で囲んで好きなものを取って食べる。


香辛料の効いた肉料理など、少し癖はあるもののどれも美味い。


「さあ、皆さん、いくらでも作らせよう。好きなだけ食べてくれ」


満面の笑みで勧めるサッカル。


アウロはすっかり、異国の食事を楽しむ心構えが身に付いたと見え、給仕の人等にあれこれ質問しながらなんでも口にした。


ただ、ドーラには皆驚いた。


とにかく沢山食べる。


「ドーラって、草食寄りの雑食じゃなかったけ?」


とターロがメトドに確認するほど、肉も食べた。


サッカルは自分の国の料理を美味しそうに頬張る樹海の魔術師達の食べっぷりに、嬉しそうにしている。


そして酒。


前世の砂漠地帯は宗教上の理由で酒がないところが多かったが、この世界、少なくとも連邦内には酒を禁止する宗教はないらしい。


出てきた物はビールに似た、発泡が強く、酒精はそれほど強くない酒。


ジーソースと呼ばれているらしい。


味も香りもとても良いが、ターロには不満があった。


(ひ、、、冷えてない、、、)


冷蔵庫の存在しないこの世界では冷えたビールなど望むべくもない事は分かっている。


分かってはいるが今は、キュ〜ッ とやりたい。


(どうしよう、、、。 イッヒーさんの手記にも本を広める活版印刷は、世界のバランスを崩すから、だめ、とか書いてあったしな。あんまり文明を進めるような真似はしないほうがいいって事は分かってるよ。自分の欲望のために、冷えたビールをこの世界の人に教えてしまうのだってそりゃ駄目さ。 、、、こっそり自分のだけ冷やす? いやいやいや、そんな事は出来ん。そんな人間にはなりたくない! 呑むなら皆と、、、どうする? どうする俺?)


人知れず葛藤するターロ。


「如何なさいました?」


給仕が、不思議そうに尋ねる。


料理が口にあわないとでも思われたらしい。


「あ゛〜〜!! もういい! 教えちゃう! 教えちゃうよ、俺! 解禁! カイキ〜ンッ!!」


急に叫びだすターロに皆はあっけにとられる。


「っど、どうされた?」


サッカルが恐る恐る尋ねる。


もしや樹海の魔道士をなにかの理由で怒らせたのか? と焦りが伺える。


だが、ターロの応えは、


「済みません。(たらい)に水を張ったものを用意してもらえませんか?」


急な予想外の要望。


すぐに希望のものが揃えられた。


「ジーソースの容器ごと、ここに入れてください」


何だかわからないが言われたとおりにすると、ターロは水の中へ手を入れて、



リフリジエイション(冷却)



と詠唱。


みるみるうちに盥に薄氷が張った。


「おお〜!」


サッカルや、従者達は、目の前で見る珍しい魔法に声を上げる。


「これらはしばらく置いといて、、、」


と言って、陶器の一つにターロは直接魔法をかけた。


「ああやってじっくり冷やした方が美味いんですが、待てないのでこれを今すぐ呑める様に直に冷やしました。さあ、サッカルさん。呑み(やり)ましょう」


そう言いながら陶器からサッカルとメトドの持つ杯に注ぎ入れるターロ。


注がれたそれを一口のんだサッカルは、


「こ、これは!!」


目を見張った。


メトドも余りの喉越しの変わりように驚いている。


「この酒は、こうあるべきです! カンパーイ!」


と言ってターロは飲み干すと、


「ぷは〜っ!  、、、これこれ!」


満足そうだ。


「タ、ターロ殿、儂の親類を呼んでこれを呑ませても構わぬか?」


「ええ、じゃんじゃん呼んでください。いっくらでも冷やしますよ! 大勢で呑む酒は楽しいですからね!」


それを聞いてサッカルは慌てて従者に色々と言い付ける。


「さあ、アウロ、ドーラ、君らも飲んでいる物出して」


ターロは彼らの西瓜の絞り汁に魔法をかけた。


「はううう! お〜いしい〜っ!!」


ドーラが飲み干してから叫んだ。


アウロはアウロでターロと同じ様に豪快に飲み干して、


「ぷは〜あ!」


とやって、


「この暑い中で、冷えた果実水は格別ですね!」


等と言っている。


「お、アウロ。分かってるね〜。その飲みっぷり。君は将来、優秀な呑兵衛になれると保証しよう。っていうか、アウロ君! 自分で冷やしなさい。出来るでしょ! 魔力制御のいい練習になるよ。ドーラのぶんもお願いね。俺はこれを呑むので忙しいんだから!」


そう言うと、盥の方に行ってしまう。


ドーラは、


「ん」


と、自分の杯をアウロに突き出した。


ターロが、


「他にも来るなら、もっと冷やしておこう」


と盥を幾つも用意させどんどん氷水に変えていく。


少ししてから、


「ああ〜、先生! 全部氷ってしまいました!」


というアウロの声。


「ほぉ〜ら〜ぁ。制御の練習って言ったでしょ。いきなり高出力でやらないで、どのくらいで凍るかよく観察しながら、少しずつ魔力を加えていきなよ」


それを聞いて、


「わ、私もやります」


「お、メトドさん。じゃあ、盥の水お願いね、俺、呑んでるから」


メトドに任せたターロは、サッカルの隣に座り自分の杯に新たに注いで呑み始めた。


圧倒されるサッカル。


「こ、これが、、、樹海の魔術師、、、」

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