5・5−7 探さないでください
「ようやく、落ち着いてきたな」
オルトロスは、メガロフィイア、メトドと共にお茶を飲みながら休憩している。
こんな休憩もなかなかとれぬ忙しい日々が続いていた。
だがやっと、先が見えてきた。
ペレエダーニェは制限君主制をとり、ターロも協力して作った法律の下、忙しく再建を進めている。
パールカは、目処がつくまで形だけ君主の座に就くが、何れは議会制へと移行させるつもりでいた。
しかしパールカの指導者としての資質に心服した者が絶対君主制に戻そうといい出している。
それはしないとパールカは断言しているが、何れにせよ、カタァプニクのときのような後味の悪い事にならなくてよかったとオルトロス達は思うのだった。
ルシフェルの篩の結界で選り分けられた元帝国兵の優秀な者はメトドの魂力面接により適材適所に配置された。
聖教国内を一巡りして安定を確認したへーオスたちは、同じ面子でペレエダーニェ内を巡回している。
そういった事一つ一つを数え上げれば切がないので詳しくは述べないが、ともかく全てが軌道にのりやっとオルトロス達は忙しさから解放されつつあった。
お茶を味わいながら、
「そういえば、ターロはどうしている?」
オルトロスに尋ねられても、メガロフィイアもメトドもはっきりと答えられない。
ターロはターロで島中を飛び回っていた。
呑みまわっているというのが正確なところかもしれない。
イッヒーのポータルや飛行魔道具、自身の転移魔法を駆使し動き回っているのだからもう誰にも彼の正確な居場所の把握は出来ていない。
だが、彼の立ち寄ったところでは何か新しい事が始められていたり、何かの質が向上したりしていた。
ターロが何かやらかしたとしてもその結果は必ずよいものになるとオルトロスは信じ切っていた。
それというのも、
「そういえば、前に言っていたな。ターロの魂力、"木鐸"は、この人族の社会その物も最高の姿へと導いている、と」
聖教国地下の封印の件でメガロフィイアが出した仮説だ。
その事はオルトロスにも話してあった。
その仮説が正しさが今回の件でも裏付けられたのだ。
もう疑う余地はないとオルトロスは思っている。
いや、オルトロスだけではない。
メガロフィイアもそうだし、メトドは最初からそう信じていた。
「その"木鐸"の力、今後この島をどの様に導いてくれるのか、、、楽しみだな」
ニマリと笑うオルトロスは、
「だが、その"木鐸"の音に気付いてそちらへと歩んでいくためには、自身の努力が必要なようだ。もう一踏ん張りしようではないか」
そう言って席を立つのだった。
(本当に、どの様に導いてくれるのでしょう?)
後に続いたメトドもこの一年にも満たない短い期間におきた目まぐるしい変化を不思議に思い、これからのターロの導きを楽しみにした。
だが、そのメトドの思いは、ある日突然、
叶わぬものとなった。
大賢者が失踪した。
第一王女の姿もない。
捜索命令が出るがこの島のどこを探してもいなかった。
代わりに連名の置き手紙が見つかる。
そこにはこうあった。
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お米探しの旅に出ます。
探さないでください。 ターロ
魔石探しの旅に出ます。
探さないでください。 リトス
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おそらく島の外へと旅立ったのであろう。
連れていってもらえなかった事は口惜しく悲しいが、リトスが彼の愛情を"二人占め"する邪魔は出来ない。
いつかお会いした時、置いていかれた口惜しさをどう分からせようか、と思いを巡らせると、自然と顔が綻ぶメトドだった。
やっと完結しました。
当初はもっと短く、三部構成で、一年もかからずに終わる予定でしたが、その倍になってしまいました。
私の力不足が一番の理由です。
本来サラッと終わらせるべき伏線の回で、興に乗ってしまいどんどん長くしてしまったり、大して重要ではないはずの脇役に焦点を当てて長く書いてしまったり、、、。
ただ、そういう回の方が楽しんで書いているので、自分で読み返しても面白かったりして、まあ、結果よかったかな、とも思います。
これが作者の独りよがりではなく、皆さまにも楽しんでいただけていれば幸いなのですが、、、。
力不足といえば、色々と張り巡らせた伏線で未回収の物も多々あります。
例えばカリズマの魂力発現。
ついに機会を逸してしまいました。
でも遠くない将来、彼ならば強力な魂力を手に入れることでしょう。
それとカルテリコスとエリューの恋の行方。
これは未回収なのではなく、敢えて決着をつけませんでした。
皆さんはどうなると思いますか? 私は、、、
まだまだありますが、完結させてしまった今、書く事も出来ないので見なかったことにします、ゴメンナサイ。
最後に、
登場人物の皆さんお疲れ様でした。
みなさんが好き勝手に動いてくれたお陰で執筆が止まることもなく、楽しく(内容によっては辛いこともありましたが)進められました。
感謝しかありません。
それでは皆様、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
感想等頂けますと次回作への励みになりますので、なにとぞ宜しくお願いします。
”木鐸”に付いて
題名にもなっている、ターロの魂力”木鐸”
作中では論語の中の意味の通りに使っています。
ネットなどで検索すると、木鐸とは新聞記者の事だ、等とありますが、そんな意味はありません。
おそらく辞書等の例文で、「新聞は社会の木鐸」といったものがあってそれが独り歩きした結果だと思われます。
しかし捏造や牽強附会の記事が多い昨今の新聞などには特にその資格はないと私は思ってしまいます。
話を戻して、木鐸とは何かですが、木製の舌がついた金属製の小さな鐘もしくは大きな鈴のことです。
文教の法令などを人民に示す時に振り鳴らした物ということです。
我々の社会で同じ様な役割をしている物を強いて上げればチャイムがそうでしょうか?
ですので、”木鐸”というキーワードをを暗示するために、この物語の冒頭はチャイムの音で始めてみたのです。
二度目の後書き:
推敲作業の後書きは"長編を完結させての所感"に載せますので合わせてご一読いただければ幸いです。




