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其の男、異世界の木鐸となる  作者: 岩佐茂一郎
【第一部】第三章 砂漠の国 ”オステオン”
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3-2 砂漠毒蜥蜴

「バシリスクだって。護衛のお仕事かな?」


というターロに、先程の商人が、


「大丈夫ですよ。芸香(ヘンルーダ)のエキスを撒けば逃げていきます」


聞けばバシリスクは幼生ならまだ石化の邪眼は使えず、苦手とするハーブのエキスで簡単に逃げていくという。


「四氏族が資金を出し合って砂漠管理団にバシリスク狩りをさせています。老砂漠毒蜥蜴(エルダーバシリスク)にまで育つことなんて、めったに、、、」


と商人が説明している途中で、


「エルダーだ!」


前方から、先を争って逃げてくる。


「メトドさん、アウロ、手伝って!」


ターロは逃げてくる人達をかき分けて駱駝を進め、メトド達の駱駝も後に続いた。


バシリスクは四足でのそのそ近づいてくる。


その七、八メートル前を、恰幅の良い男が()けつ(まろ)びつ逃げていた。


駱駝から落ち、砂に手足をとられて思うように動けないらしい。


「助けてくれー!!」


必死に叫ぶ男。


「射程に入るまで俺が囮になる。アウロが浮かして、メトドさん止め、お願い!」


ターロはメトド達に簡潔に指示を出すと、



ビッグリーピング(大跳躍)



詠唱し跳び出すと、男とバシリスクの間に着地した。


急に現れたターロに、バシリスクは立ち上がり、ギッとターロを睨む。


邪眼発動。


だがその瞬刻前、ターロも詠唱を完成させている。



【シャットアウ(魔力)ト マジッ(遮蔽)クパワー】



その隙に少し横へ駱駝で回り込んでいたメトドとアウロ。



コンプレスドエア(圧縮空気)



アウロが唱えると、バシリスクの足元が炸裂。


衝撃で少し浮き上がり動きが止まったところへ、メトドが、



ファイヤーダーツ(火の矢)



杖の先から短い矢が何本も飛び出し、全て命中。


バシリスクの巨体は仰向けにゆっくりと倒れた。


周りに他のバシリスクがいない事を確認したターロは、後ろを振り向き、


「大丈夫ですか?」


と這って逃げていた男に尋ねる。


「は、、は、、た、助かったの、か?」


喘ぎながら、呆然と死なずに済んだ実感を噛みしめる男。


他の護衛達も恐る恐る戻ってきた。


「エ、エルダーをやったのか?」


「、、、済まん。エルダーが出たら逃げていいことになっているんだ、、、。専用の装備も無いのに、退治するとは、、、さすがは樹海の魔術師だな」


ターロは微笑みを返すのみで、ドーラがグーグー眠っている駱駝に乗る。


「本当に死んでるぞ。眉間に一つ、首と心臓に二つづつ、、、こんなに正確に射抜いている」


「他は全く傷がない、持って返って革にしたら値が付くぞ」


護衛達はバシリスクのの死体を見て好き勝手をいっている。


皆は放り出した荷物を拾って駱駝に積み直し、列を再編し始めた。


口々にターロ達の手並みを褒めそやす。


メトドはフードを目深に被って、顔が見えない。


アウロもそれに習っている。


二人共照れているようだ。


「ありがとう。あなた達のおかげで、命拾いをした。礼をさせてくれ」


先程の恰幅の良い男が近づいてきた。


「いいんですよ。護衛として参加しているんだから、当然です」


と、ターロは応えるが、


「いや、それでは儂の気が済まん。何か無いか?」


「あなたは地元の方ですか?」


「そうだ。一応、ボレアースに連なるものだ。本家ではないがな」


「なら丁度いい。向こうに付いたら案内してくれませんか?」


「そんな事はお安い御用だ」


「サッカル様ー!」


駱駝をひいた男がやってきた。


「おまえ! 一人で逃げおって!」


「だって、サッカル様が駱駝から勝手に落ちたんじゃありませんか。気が付いたら乗っていなかったんで焦りましたよ」


どうやら、恰幅のよい男の名はサッカルと言い、この駱駝をひいてきた男がその従者の様だ。


「まったく、おまえというやつは、、、」


いつもの事なのか、サッカルは大して怒るでもなく、呆れて話を終わりにした。


面白い二人だ。


「済まなんだ。儂はサッカルという。テュラーで商談をした帰りでな。クレーネーについたらぜひ礼をさせてくれ」


「俺はターロ。この子はドーラ。あちらの駱駝の子供のほうがアウロで、もう一人はメトド。樹海の里から来ました」


「おお、噂に聞く樹海の魔術師どのか?! 強いわけだ。エルダーをあんな風に倒すなんて、、、」


横にいた護衛のリーダーもそれに続ける。


「本当にな。 できれば先頭集団で護衛を続けてくれないか?」


と頼まれたので、


「構いませんよ」


と応え、ターロたちは先頭に加わった。

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